本文へ移動

介護保険の住宅改修は20万円まで|申請は工事前、家族が先にやる3つ

約12分で読めます2026-10-11 更新制度お金
この記事の要点

介護保険の住宅改修は、工事費20万円が上限です。1割負担の人なら、手元から出るのは2万円で済みます。ただし落とし穴が1つあります。工事の前に市区町村へ申請していない工事は、1円も戻りません。「もう業者に頼んで、先週つけてもらいました」という相談は、よくあると聞きます。この記事では、20万円で何ができるか、申請の7手順、家族が業者に電話する前にやる3つを、2026年10月11日時点の制度でまとめます。

この記事の内容

20万円は「工事費の上限」で、戻るのは9割分#

支給限度基準額は20万円です。要支援1でも要介護5でも、金額は同じ。要介護度が重くなっても増えません(厚生労働省 老企第42号)。

戻る割合は、本人の所得に応じた1割〜3割の自己負担を引いた分です。20万円の工事をして1割負担なら、保険から出るのは18万円になります。

工事費負担割合自己負担保険から出る額
20万円1割2万円18万円
20万円2割4万円16万円
20万円3割6万円14万円
30万円1割12万円18万円
20万円は「工事費の上限」で、戻るのは9割分
結論

結論。20万円を超えた分は、超えた部分が全額自己負担になります。30万円の工事なら、オーバーした10万円はまるごと家計から出ます。

20万円の工事費と自己負担・保険給付の内訳

枠は一度に使い切らなくてよい#

20万円は「1回の工事の上限」ではなく「その人に割り当てられた総額」です。合計が20万円を超えない範囲なら、何回かに分けて使えます(厚生労働省 老企第42号)。

玄関に手すりを8万円でつけて、半年後に浴室の段差解消を10万円で行い、残りの2万円を先に残しておく。こういう使い方ができます。私は、最初から全部やらずに残す側を勧めます。体の状態は半年で変わり、本当に困る場所が後から出てくるためです。

着工前に申請していない工事は、全額自己負担になる#

ここが一番の関門です。工事に取りかかる前に市区町村へ申請し、支給決定の確認を受けることが条件になっています。着工後の申請は対象外として扱われます(八王子市の案内)。

なぜ市区町村は「工事の前」にこだわるのか#

理由を知っておくと、業者の言葉に流されなくなります。事前申請で市区町村が見ているのは、金額ではなく「その人の体の状態に対して、この工事が必要か」です。

判定の材料は3つあります。ケアマネジャー等が書く「住宅改修が必要な理由書」、工事費の見積書、そして改修前の写真と図面です。工事が終わってから出された書類では、改修前の状態をもう誰も確認できません。順番が逆になった時点で、判定の土台が消えます。

この理屈が分かっていれば、「先に工事して後から申請できますよ」と言われた時に、その場で止められます。

申請から入金までの7手順#

  1. ケアマネジャー、または地域包括支援センターに電話する。要介護・要支援の認定を受けていることが前提です。認定がまだなら、認定申請が先になります。
  2. 住宅改修を扱う事業者に自宅を見てもらい、見積書を出してもらう。複数社から取るよう、ケアマネジャーから説明されることになっています(後述)。
  3. 工事の前に市区町村へ事前申請する。申請書、住宅改修が必要な理由書、工事費見積書、改修前の写真(撮影日が分かるもの)、図面を出します。本人が住宅の所有者でない場合は、所有者の承諾書も必要です。
  4. 支給決定通知が届くのを待つ。ここで着工してよいかが決まります。
  5. 工事をする。完成後の写真を、改修前と同じ場所から撮ってもらいます。
  6. 工事後に支給申請する。領収証、工事費内訳書、完成後の状態が分かる書類を提出します。
  7. 保険給付分が振り込まれる。いったん全額を払い、後から戻る方式(償還払い)が原則です。
ここは間違えやすい

注意。必要書類の名前や様式、提出先の窓口は市区町村ごとに違います。手順2で見積もりを頼む前に、市区町村の介護保険担当課へ「住宅改修の手引きはありますか」と一度聞いてください。PDFで配っている自治体があります。

事前申請から入金までの流れと着工してよい時点

立て替えが苦しい時は「受領委任払い」を聞く#

償還払いだと、20万円の工事なら一度は20万円を用意する必要があります。これがきつい場合、自己負担の1〜3割だけを事業者に払い、残りは市区町村が事業者へ直接払う「受領委任払い」を用意している自治体があります(千葉県南房総市など)。

ただし、この方式を使うには事業者が市区町村に事前登録している必要があります。制度の有無も登録事業者も自治体で違うので、見積もりを頼む段階で「受領委任払いは使えますか」と、業者と市区町村の両方に確認してください。

家族が業者に電話する前にやる3つ#

リフォーム会社のチラシが先に目に入るので、業者から入る人がいます。順番を変えるだけで、出戻りが減ります。

1. ケアマネジャーか地域包括支援センターに連絡する#

事前申請の必須書類である「住宅改修が必要な理由書」は、家族や業者では書けません。介護支援専門員(ケアマネジャー)などが作成します。福祉住環境コーディネーター2級以上の資格を持つ人が書ける自治体もあります。

担当のケアマネジャーがいない人、要支援の人は、地域包括支援センターが入口です。市区町村の高齢者福祉の窓口で住所を言えば、担当のセンターを教えてもらえます。

2. 本人がつまずく場所を3日分メモする#

手すりは「つけたい場所」ではなく「体が止まる場所」につけます。ここを家族の想像で決めると、使われない手すりが残ります。

見るのは時間帯もセットです。朝6時のトイレまでの廊下、夕方の入浴、夜中の2回目のトイレ。同じ家でも、暗い時間と明るい時間で危ない場所が入れ替わります。3日分書き出すと、場所が絞れることが多いと聞きます。

工事をしないで済む場合もあります。置き型の手すりや浴槽内のいすといった福祉用具は、工事をせずに貸与や購入で対応できます。福祉用具の枠は住宅改修の20万円とは別です。先にこちらで足りるかを、ケアマネジャーと一緒に見てください。関連記事: 夜中のトイレで親が転ばないように|ライトより先にやること・センサーライトの選び方・介護保険で買える排泄の用具

3. 見積もりは複数社から取る#

事業者によって価格や施工の水準に差が出るため、厚生労働省は2018年7月の通知で、理由書の作成を頼まれたケアマネジャーに、複数の住宅改修事業者から見積もりを取るよう利用者へ説明することを求めました(介護保険最新情報Vol.664)。

説明を受けたうえで1社だけにした場合でも、支給が受けられなくなるわけではありません。ただ、事業者によって見積りの金額に差が出ることがあるので、2社は取った方が得です。

家族が業者に電話する前にやる3つ0 / 10

チェックはこの端末に保存されます。印刷して現場に貼る場合はそのまま印刷してください。

電話で何と言えばいいか迷ったら、下の文をそのまま読んでください。

家族が業者に電話する前にやる3つ4本
  1. 地域包括支援センターへ(担当ケアマネジャーがいない場合)「同居している父が、家の中の段差で転びそうになることが増えました。介護保険の住宅改修を考えています。住宅改修が必要な理由書を書いていただける方につないでいただけますか。父は要支援2です。」
  2. 担当ケアマネジャーへ(要介護の場合)「母の浴室の出入りが難しくなってきました。住宅改修を検討したいので、住宅改修が必要な理由書をお願いできますか。見積もりは2社から取るつもりです。」
  3. 市区町村の介護保険担当課へ「住宅改修費の事前申請について伺います。申請に必要な書類の一覧と、住宅改修の手引きをいただけますか。受領委任払いが使えるかも知りたいです。」
  4. 住宅改修の事業者へ「介護保険の住宅改修で、事前申請に使う見積書をお願いします。他社にも見積もりを頼んでいます。介護保険の対象になる工事と、対象外で自費になる工事を、見積書の中で分けて書いてください。」

20万円で何ができるか、対象はこの6種類だけ#

対象になる工事は6種類に限られています。壁紙の張り替えや、使いやすいキッチンへの交換は入りません。

種類正式な区分現場での例
手すり手すりの取付け廊下、階段、トイレ、浴室、玄関
段差段差の解消敷居を低くする、スロープ、浴室床のかさ上げ
床材床又は通路面の材料の変更滑りにくい床材へ、畳から板材へ
扉引き戸等への扉の取替え開き戸を引き戸に、扉の撤去、ドアノブの交換
便器洋式便器等への便器の取替え和式から洋式へ、便器の向きや位置の変更
付帯工事上記に付帯して必要な工事手すりのための壁の下地補強、給排水設備工事
20万円で何ができるか、対象はこの6種類だけ

(厚生労働省 老企第42号、八王子市の案内より)

介護保険の住宅改修で対象になる6種類の工事
ここは間違えやすい

注意。見積書に入っていても対象から外れやすい工事があります。新築・増築、老朽化による修繕、家具やインテリアの要素が強い改修、洋式便器への暖房便座やウォシュレットの追加などです。便器の取替えに伴う給排水設備工事は対象になりますが、くみ取り式から水洗・簡易水洗にする水洗化の部分は対象外です。

だから、見積書は「保険対象の工事」と「自費の工事」が分かれているものをもらってください。合計額だけ書かれた見積書を出すと、市区町村から出し直しを求められることがあります。

使い切っても、もう一度20万円が使える場合が2つある#

20万円は原則1人1回ですが、例外が2つあります。

1. 介護の必要の程度が3段階以上上がった#

最初に住宅改修費を受けた工事の着工時点と比べて、下の段階が3段階以上上がった場合、改めて20万円まで使えます。これは1回限りです(厚生労働省 老企第42号)。

段階要介護状態区分
第1段階要支援1
第2段階要支援2、要介護1
第3段階要介護2
第4段階要介護3
第5段階要介護4
第6段階要介護5
使い切っても、もう一度20万円が使える場合が2つある

(八王子市の案内より)

要介護1(第2段階)で工事をした人が要介護4(第5段階)になれば、3段階上がるので対象です。要支援2(第2段階)から要介護3(第4段階)は2段階なので、対象になりません。「要介護度の数字が3つ上がったら」ではなく「この表で3段階」と覚えてください。

2. 引っ越した#

転居した場合も、改めて20万円まで使えます(厚生労働省 老企第42号)。子どもの家に呼び寄せる、同じ市内で住み替えるといった場合が当てはまります。

3段階リセットの考え方と対象になる例・ならない例

入院中・入所中は改修できない#

住宅改修は、自宅で暮らす人のための給付です。病院に入院中、施設に入所中の人は原則として改修できません。ただし、退院・退所を前提にした改修は認められます(八王子市の案内)。

退院の日が決まったら、その日に向けて動き出すのではなく、決まった日の午後に電話1本です。理由書の作成、見積もり、市区町村の審査に日数がかかります。ケアマネか窓口で目安の日数を聞いてください。関連記事: 退院前カンファレンス 家族が聞くこと5分類|質問文例12本と準備手順

「もう工事しました」と言われた時、職員はどう答えるか#

工事の後に相談が来る場面は、職員側にも起こります。ここで言い方を間違えると、家族は「役所が冷たい」と受け取ります。

ビフォー

申請前の工事は対象外なので、介護保険は使えません。残念ですが。

アフター

終わっている工事の分は、保険の対象から外れてしまいます。ただ、確認したいことが2つあります。工事はどこまで終わっていますか。もし残っている工事があれば、その分は申請できる場合があるので、窓口に確かめます。それから、お住まいの市区町村に高齢者向けの住宅改修の助成があるかを調べます。別の制度で使えるものが残っているかもしれません。

家族が知りたいのは「使えません」の先です。残りの工事に枠が使えるか、市区町村独自の助成があるか、福祉用具で代わりになるか。この3つを一緒に示すと、話が前に進みます。

市区町村によっては、介護保険とは別に高齢者向けの住宅改修の助成を持っているところがあると聞きます。あるかどうかは自治体ごとに違うので、介護保険担当課か高齢者福祉の窓口で確かめてください。

よくある質問#

賃貸アパートでも使えますか。

使えます。ただし事前申請の書類に、住宅の所有者(大家や管理会社)の承諾書が必要です。手すりの取付けは認めるが扉の交換は認めない、といった条件がつく場合もあるので、見積もりの前に一度相談しておくと手戻りが減ります。

要支援1でも20万円もらえますか。

金額は要介護度で変わりません。要支援1でも要介護5でも、支給限度基準額は20万円です(厚生労働省 老企第42号)。要支援の人は介護予防住宅改修費という名前になりますが、金額と対象工事は同じです。

親の家と自分の家、両方を改修できますか。

住宅改修費の対象は、介護保険の被保険者証に書かれた住所の住宅です。本人が住んでいない家の改修には使えません。被保険者証の住所で、本人が実際に暮らしている家かどうかで決まります。

支給決定の通知が来る前に工事を始めてしまったらどうなりますか。

その工事分は対象から外れる可能性が高くなります。気づいた時点で工事を止めて、市区町村の介護保険担当課に事実を伝えてください。まだ着工していない部分があれば、そこは申請できる場合があります。自治体の判断になるので、自分で結論を出さずに窓口へ確認してください。

業者はどこに頼めばいいですか。指定業者はありますか。

福祉用具の貸与・販売と違い、住宅改修に指定事業者の制度はありません。地元の工務店にも頼めます。ただし介護保険の書類に慣れていない業者だと、見積書の書き方で差し戻しが起きます。ケアマネジャーや地域包括支援センターに、申請に慣れた事業者を聞くのが早いです。

手すりの高さや位置は誰が決めるのですか。

業者の標準寸法で決めてしまうと、本人の身長や麻痺の状態に合わないことがあります。歩き方や体の状態をふまえた判断が必要な場面では、主治医・かかりつけ医やリハビリの担当者に確認してください。退院前であれば、病院の理学療法士に自宅の写真を見てもらえることがあります。

まとめ|順番さえ間違えなければ、20万円は使える#

  • 工事費の上限は20万円。1割負担なら自己負担2万円、保険から18万円(2026年10月11日時点)
  • 着工前の申請が条件。工事が先だと、その分は全額自己負担になる
  • 必須書類の「住宅改修が必要な理由書」はケアマネジャー等が書く。だから最初の連絡先は業者ではない
  • 対象は手すり・段差・床材・扉・便器・付帯工事の6種類だけ
  • 見積もりは2社以上。保険対象分と自費分を分けて書いてもらう
  • 段階が3段階以上上がった時と、転居した時は、改めて20万円まで使える

次の一歩は、業者探しではありません。担当のケアマネジャー、いなければ地域包括支援センターに1本電話して、「住宅改修が必要な理由書をお願いしたい」と伝えるところからです。要介護認定をまだ受けていない人は、その申請が先になります。関連記事: 要介護認定は申請から原則30日|働く家族が平日に休む日は2日

出典#

出典・参考


この記事を書いた人:ミミ介護支援専門員(ケアマネジャー)

介護施設で生活相談員・ケアマネジャーとして勤務。現場の職員研修と介護現場でのAI活用の推進に携わっています。記事の数字・制度は一次資料の原文を開いて確認してから書いています。誤りに気づいた方はお問い合わせから教えてください。 運営者情報

この記事の「型」を、現場でそのまま使う。

noteでは、記事で扱ったテーマの文例・チェックリスト・早見表を、印刷して申し送りや研修に使える形で配布しています。看取り・ACPの入門記事は無料です。

noteを見る