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利用者や家族からのカスハラ、2026年10月から職場に対策の義務。介護士が自分の職場で確かめる3つと相談先

約9分で読めます2026-10-29 更新働き方
この記事の要点

同じ利用者さんから、毎日のように「あんたは使えない」と言われる。家族の面会のたびに、30分つかまって同じ要求を繰り返される。どこまでが「仕事のうち」で、どこからが我慢しなくていいことなのか、線が見えないまま続けている人は多いと思います。

先に結論です。2026年10月1日から、カスタマーハラスメント(以下、カスハラ)を防ぐための措置が、全ての事業主の義務になりました。厚生労働省のリーフレットでは、カスハラをする側の「顧客等」の例に、施設・サービスの利用者とその家族がはっきり書かれています。介護の職場も対象です。

この記事では、改正後の法律の条文と厚生労働省の資料を開いて確かめた範囲で、次の3つを順に見ます。

この記事の内容
  • どこからがカスハラに当たるのか(3つの要素)
  • 職場が決めておかなければならないこと
  • 職場で動いてもらえないときの、社外の相談先

2026年10月1日から、カスハラ対策は全ての事業主の義務になった#

厚生労働省の「職場におけるハラスメントの防止のために」のページには、「令和8年10月1日から、カスタマーハラスメント及び求職者等に対するセクシュアルハラスメント対策が全ての事業主の義務となりました」と書かれています。

根っこにあるのは、労働施策総合推進法の第33条です。事業主は、顧客等の言動で働く人の就業環境が害されないよう、相談に応じて適切に対応する体制の整備などの措置を講じなければならない、と定めています。

介護の職場では、これまでも一部の対策が求められていました。厚生労働省の「介護現場におけるハラスメント対策」のページによると、令和3年度の介護報酬改定で、パワーハラスメントとセクシュアルハラスメントの対策は全ての介護サービス事業者に義務づけられました。一方、カスハラについては「必要な措置を講じることを推奨しています」という書き方でした。2026年10月からは、法律で全ての事業主に義務がかかっています。

「推奨」から「義務」へ。職場の規程やマニュアルが10月の前と同じままなら、一度見直す時期に来ているということです。

どこからがカスハラか。3つの要素が全部そろったとき#

リーフレット(詳細版)では、職場におけるカスハラを、次の3つの要素を全て満たすものとしています。

要素中身
①だれの言動か顧客等の言動
②どんな言動か業務の性質などに照らして、社会通念上許される範囲を超えたもの
③何が起きたか働く人の就業環境が害される
どこからがカスハラか。3つの要素が全部そろったとき

①の「顧客等」の例として、リーフレットには「施設・サービスの利用者及びその家族」が挙がっています。電話やSNSなど、インターネット上のものも含まれます。

「許される範囲を超える」の典型例#

②は、言動の中身が行き過ぎている場合と、手段や態度が行き過ぎている場合に分けて、典型例が示されています。

分け方典型例
要求の中身理由がない要求、契約で想定するサービスを著しく超える要求、対応が著しく困難または不可能な要求、不当な損害賠償要求
手段や態度暴行や傷害、脅迫や侮辱や暴言や土下座の強要、威圧的な言動、継続的でしつこい言動、居座りなどの拘束的な言動
どこからがカスハラか。3つの要素が全部そろったとき

どちらか一方だけが行き過ぎている場合でも、当たりうるとされています。

苦情の全部がカスハラではない#

ここは介護の職場で特に気をつけたいところです。リーフレットには、顧客等からの苦情の全てがカスハラに当たるわけではない、と書かれています。障害のある人が不当な差別的取扱いをしないよう求めることや、社会的障壁の除去が必要だと伝えること自体は、カスハラには当たりません。

判断には、言動の目的、そこに至った経緯や状況、言動の頻度や継続性、働く人の心身の状況などをあわせて見て判断する、ともあります。

介護では、認知症の症状として出ている言動もあります。その言動が許されるかどうかを現場の一人が決める必要はない、というのが私の考えです。3つの要素を一人で当てはめるより、「何が、いつ、何回あったか」を職場に渡して、職場が決めた手順で判断してもらう。法律は、その手順を事業主の側に作らせています。

なぜ「一人で判断しない」なのか。職場が決めておくこと10項目#

リーフレットには、事業主が必ず講じなければならない措置として、10項目が並んでいます。

番号事業主がすること
①毅然とした態度で対応し、働く人を守る方針をはっきりさせて周知する
②カスハラの内容と、あらかじめ定めた対処の内容を周知する
③相談窓口を決めて周知する
④窓口の担当者が適切に対応できるようにする
⑤事実関係を早く正確に確かめる
⑥被害を受けた人への配慮の措置を行う
⑦再発防止の措置を講じる
⑧特に悪質なカスハラへの対処方針を決め、対処できる体制を整える
⑨相談した人などのプライバシーを守る措置を講じて周知する
⑩相談したことなどを理由に不利益な扱いをされない旨を定めて周知する
なぜ「一人で判断しない」なのか。職場が決めておくこと10項目

②の「あらかじめ定めた対処の内容」の例として、リーフレットには次のものが挙がっています。

  • 管理監督者にその場の対応の方針について指示を仰ぐ
  • 可能な限り働く人を一人で対応させない
  • 犯罪に当たりうる言動は警察へ通報する
  • 本社・本部などへ情報共有して指示を仰ぐ

この並びを見ると、法律が想定しているのは「現場の一人がうまくかわす」ことではなく、「一人で抱えさせない仕組みを職場が先に作る」ことだと読めます。上手に受け流せないのは、あなたの対応力の問題として片づけていい話ではありません。

相談したことで不利益な扱いをしてはいけない#

労働施策総合推進法の第33条第2項は、働く人が相談をしたことや、事業主の対応に協力して事実を述べたことを理由として、解雇その他不利益な取扱いをしてはならない、と定めています。

「相談したら、扱いにくい職員だと思われそう」。そう感じて黙っている人にとって、この1項は覚えておいていい条文です。

働く側にも努力義務がある#

同じ法律の第34条第4項では、働く人にも、カスハラの問題への関心と理解を深め、事業主が講じる措置に協力するよう努めること、が求められています。職場が決めた報告の手順があるなら、それに乗せることが、この「協力」に当たります。

自分の職場で確かめる3つ#

10項目を全部覚える必要はありません。働く側がまず確かめたいのは、次の3つだと私は考えています。

自分の職場で確かめる3つ0 / 3

チェックはこの端末に保存されます。印刷して現場に貼る場合はそのまま印刷してください。

分からなければ、管理者に「10月から義務になったカスハラ対策の、うちの相談窓口はどこですか」と一言聞くのが早いと思います。聞く理由が法律の側にあるので、角が立ちにくいかもしれません。

厚生労働省の「介護現場におけるハラスメント対策」のページには、介護現場向けのマニュアルや研修の手引きのほか、職員向けチェックシートと相談シートが無料で置かれています。職場にまだ何もないなら、このページを管理者に見せるのも1つの手です。

起きたときに残すメモ#

職場が事実を確かめるには材料が要ります。起きた日のうちに、次の形で残しておくと渡しやすくなるかもしれません。下は書き方の例です。

自分の職場で確かめる3つ

1. 10月28日 15:10 ○○さんの家族(長男) 面会時 居室前の廊下
「担当を替えろ。替えないなら毎日来る」と大声で約20分。同じ要求は今月3回目。
その場にいた職員: 自分ともう1人。15:30 主任に報告。

日時、だれが、どこで、何を言われたか(できるだけ言われたままの言葉)、何回目か、その場にいた人、だれに報告したか。この7つがあれば、職場が「事実関係を迅速かつ正確に確認する」ときの材料として渡せると私は考えています。

職場で動いてもらえないときの社外の相談先#

厚生労働省のページは、まず会社の相談窓口に相談するよう案内しています。そのうえで、会社で対応してもらえない場合や社外で相談したいときは、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)か、総合労働相談コーナーへ、とあります。「匿名でも大丈夫」「プライバシーは厳守します」「相談は無料です」と書かれています。

リーフレットに載っている雇用環境・均等部(室)の受付時間は、8時30分から17時15分(土日・祝日・年末年始を除く)です。電話番号は、都道府県ごとにリーフレットの最後の表に載っています。

関連記事: 介護職員の悩みを聞いてくれる窓口はある? 都道府県の相談窓口の探し方と使い方(愛知県の窓口を例に)

「利用者さんを断るなんて」と迷うとき#

介護の職場には、正当な理由なくサービスの提供を拒んではならない、という基準省令の決まりがあります。厚生労働省のページでも、利用者や家族からのハラスメントがあった場合が「すべからく『正当な理由』に当たるわけではない」としつつ、事案によってはサービス提供を拒否することも考えられる、と書かれています。その場合は、別の事業所を紹介するなどの措置を速やかに講じることも求められています。

つまり、断るかどうかは事業所が判断することで、現場の一人が背負うことではありません。訪問介護では、利用者や家族の同意があり、暴力行為や著しい迷惑行為などが認められる場合に、2人の訪問介護員で訪問する仕組みもあります。

よくある質問#

認知症の症状で出ている暴言も、カスハラになりますか。

3つの要素や、言動の目的・経緯・心身の状況などをあわせて見て判断する、とされています。症状かどうかを現場の一人が決めるより、記録を職場に渡して、職場の手順で判断してもらうのが筋だと考えます。

パートや派遣でも相談できますか。

法律は「その雇用する労働者」の就業環境を守る措置を事業主に求めています。派遣の場合の細かい扱いはこの記事では確かめていないので、雇用環境・均等部(室)に聞くのが確実です。

職場に相談窓口がありません。

10月1日からは、相談窓口をあらかじめ定めて周知することが事業主の義務です。管理者に聞いても決まっていないなら、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)に相談できます。

相談したら、職場に名前が伝わりますか。

厚生労働省のページには、社外の相談先について「匿名でも大丈夫」「プライバシーは厳守します」とあります。職場の窓口については、相談した人のプライバシーを守る措置を講じることが、事業主の義務になっています。

家族からの暴言を上司に言ったら「それくらい我慢して」と言われました。

法律は、働く人の就業環境が害されないよう措置を講じることを事業主に義務づけています。職場で動いてもらえないときは、社外の相談先に今の状況をそのまま話してみてください。

この記事の情報は、2026年10月29日に厚生労働省の資料と法律の条文を開いて確かめた時点のものです。手続きの前に、公式の資料で確かめてください。

今日やる1つ#

明日の出勤のとき、職場の掲示板か休憩室の書類棚で「ハラスメント」と書かれた紙を探してみてください。見つかれば、相談窓口の名前に印をつける。見つからなければ、それを管理者に聞くきっかけにできます。

出典#

出典・参考
  • 厚生労働省「職場におけるハラスメントの防止のために」(令和8年10月1日からのカスハラ対策の義務化、ハラスメントを受けたときの相談先。2026年10月29日閲覧) https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/seisaku06/index.html
  • 厚生労働省 リーフレット(詳細版)「2026年(令和8年)10月1日から、カスタマーハラスメント対策、求職者等に対するセクシュアルハラスメント対策が義務化されます!」(定義、典型例、講ずべき措置、雇用環境・均等部(室)の連絡先。2026年10月29日閲覧) https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/001662580.pdf
  • 労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律 第33条、第34条(令和7年法律第63号による改正、2026年10月1日施行。e-Gov法令検索。2026年10月29日閲覧) https://laws.e-gov.go.jp/law/341AC0000000132
  • 厚生労働省「介護現場におけるハラスメント対策」(令和3年度介護報酬改定での義務づけ、マニュアルと研修の手引き、サービス提供困難事例への対応、訪問介護の2人訪問。2026年10月29日閲覧) https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_05120.html
  • この記事の面会の場面と記録の例は、説明のために一般化したもので、実在の人や職場の話ではありません。


この記事を書いた人:ミミ介護支援専門員(ケアマネジャー)

介護施設で生活相談員・ケアマネジャーとして勤務。現場の職員研修と介護現場でのAI活用の推進に携わっています。記事の数字・制度は一次資料の原文を開いて確認してから書いています。誤りに気づいた方はお問い合わせから教えてください。 運営者情報

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