ニュースで「介護職の月収が増えました」と見て、「で、うちの職場は?」と思ったことはありませんか。
国の調査は、見出しの一行だけが目に入りがちです。月収が増えた、辞めた理由の1位は人間関係だった、といった一行です。でも、その数字と自分の職場のあいだには橋がありません。だから、次の勤務が始まると忘れてしまいます。
この記事では、介護労働安定センターが2026年7月29日に公表した令和7年度「介護労働実態調査」の結果の概要を、現場で働く人の目線で読みます。数字はすべて、資料の原文を開いて確かめた値です。
読み終えると、手元に次の3つが残ります。
この記事の内容
- 辞めた理由・悩み・月収・満足度の数字と、それぞれの「誰が答えたか」
- 数字が言っていないこと
- 自分の職場で確かめる6つ
先に結論#
- 前の仕事が介護の仕事だった人が辞めた理由の1位は「職場の人間関係に問題があったため」で27.3%。そのうち45.8%が、上司や先輩の指導や言動がきつかった、パワーハラスメントがあった、を挙げています
- 今の働き方についての悩みの1位は「人手が足りない」で52.3%。2位は「仕事内容のわりに賃金が低い」の38.1%です
- 月給で働く人の通常月の平均月収は254,951円で、前年度より2.4%増えました。介護職員に限ると239,855円で、3.1%増です。賞与(ボーナス)と残業代は入っていません
- 満足度D.I.(満足している人と不満な人の差を表す数字)は、職場の人間関係が+38.2と高く、人員配置体制が▲18.5、休憩室などの付帯設備が▲12.5、賃金水準が▲12.3でした
- どれも全国の平均です。自分の職場がどうかは、この調査からは分かりません。確かめるのは、自分の明細と職場です

調査の概要。誰が、いつ答えたか#
数字を読むときに一番大事なのは、「誰が答えた数字か」です。ここを飛ばすと、読み間違えます。
介護労働実態調査は、介護労働安定センターが毎年行っている調査です。事業所(職場の側)に聞く「事業所調査」と、そこで働く人に聞く「労働者調査」の2つがあります。
令和7年度の調査期間は、令和7年(2025年)10月1日から10月31日まで。回収は次のとおりでした。
- 事業所調査 8,955事業所(回収率53.1%)
- 労働者調査 2万675人(回収率40.9%)
この記事の数字の多くは、労働者調査の2万675人の答えです。ただし質問によっては、答えた人が絞られています。月収は「月給で働く人」、辞めた理由は「前の仕事を辞めて今の仕事に就いた人」です。それぞれの段で、誰の数字かを書きます。
調査をしたのは2025年10月、公表は2026年7月です。今の職場の空気とは、1年近いずれがあります。
辞めた理由の1位は、職場の人間関係#
前の仕事が介護の仕事だった人(6,163人)に、その仕事を辞めた理由を聞いています。当てはまるものをいくつでも選べる質問(複数回答)です。
- 1位 職場の人間関係に問題があったため 27.3%
- 2位 勤務先の事業理念や運営のあり方に不満があったため 21.0%
- 3位 他に良い仕事・職場があったため 17.2%
だいたい4人に1人が、1位を選んだことになります。
人間関係を理由に辞めた人には、その中身もさらに聞いています。下の割合は、人間関係で辞めた人だけを100%にしたものです。
- 上司や先輩からの指導や言動がきつかったり、パワーハラスメントがあった 45.8%
- 仕事の進め方に関する上司や同僚との意思疎通がうまくいかなかった 38.0%
- 上司の業務指示が不明確、リーダーシップがなかった 37.4%
この3つは、どれも「誰か」との間のことです。きつい言い方、話が通じない、指示が見えない。介護の技術や体力の話は、この3つには入っていません。
この数字が言っていないこと#
- 答えているのは、前の介護の仕事を辞めて、今も介護の仕事をしている人です。介護の仕事そのものから離れた人の理由は、ここには入っていません
- 前の職場の話です。今の職場の人間関係がどうかは別の質問です(下の満足度の段で見ます)
悩みの1位は「人手が足りない」#
今の労働条件や仕事の負担について、悩みや不安、不満を聞いた質問です。2万675人全員への複数回答です。
- 人手が足りない 52.3%
- 仕事内容のわりに賃金が低い 38.1%
- 昇給がない、少ない 29.9%
- 身体的負担が大きい 23.9%
半分を超えたのは「人手が足りない」だけでした。「人が足りないな」と感じたことがあるなら、あなただけではありません。答えた介護職の2人に1人が、同じ悩みを挙げています。
事業所に聞いた数字もあります。訪問介護員と介護職員を合わせた2つの職種の離職率(1年で辞めた人の割合)は12.4%で、前の年度と同じ水準でした。採用率は14.6%で、前の年度より0.3ポイント上がっています(小幅な上昇です)。離職率を年齢で分けたとき、29歳以下は17.3%でした。
月収は254,951円。ただし「月給の人の、通常月の」#
月給で働く人(1万2,758人)の、通常月の平均月収は254,951円でした。前年度より2.4%増えています。
職種別の数字も出ています。
- 介護職員 239,855円(4,233人・前年度より3.1%増)
- 訪問介護員 239,756円(1,721人・前年度より4.1%増)
この金額には条件があります。資料の注によると、平均月収は、賞与・残業代・休日出勤手当を除き、交通費など毎月決まって支給される各種手当を含む賃金額(税込み)です。
つまり、「手取りの額」でも「ボーナス込みの年収を12で割った額」でもありません。自分の給料と比べるなら、まず自分の明細を同じ形にそろえる必要があります。そろえ方は3つです。

- 給与明細の「支給額」(税金などを引く前の額)の欄を見る
- 残業代と休日出勤手当の行を引く。賞与が明細に載っている月は、その分も引く
- 残った額が、基本給と毎月決まって出る手当(交通費など)の合計になっているかを見る
夜勤手当のように月によって額が変わる手当をどう扱うかは、資料の注からは読み切れません。比べるのは目安までにして、1,000円単位の差で一喜一憂しないくらいがちょうどいいと私は思います。
時間給で働く人の平均時間給は1,321円で、前年度より4.7%増えました。1週間の残業は、「残業時間なし」と答えた人が56.3%です。
満足度と、働きやすさ#
今の仕事の満足度は、満足度D.I.という数字で出ています。計算はシンプルです。「満足」と「やや満足」を選んだ人の割合を足し、そこから「不満足」と「やや不満足」を選んだ人の割合を引きます。割合(%)ではありません。
- プラスが大きいほど、満足している人のほうが多い
- マイナスが大きいほど、不満な人のほうが多い
結果は次のとおりです。
- 職場の人間関係 +38.2
- 仕事の内容 +34.2
- 人員配置体制 ▲18.5
- 休憩室などの付帯設備 ▲12.5
- 賃金水準 ▲12.3
おや、と思った人もいるはずです。辞めた理由の1位は人間関係だったのに、今の職場の人間関係の満足度は高いプラスです。ただ、辞めた理由は「前の職場」の話で、満足度は「今の職場」の話です。質問が別で、答えた人の範囲も違うので、つなげて読むことはできません。
休憩室などの付帯設備が▲12.5で、賃金水準の▲12.3とほぼ同じ値なのも、目にとまりました。休憩室のような設備のことも、国の調査で満足度を聞く項目の1つになっているわけです。
働きやすさも聞いています。今の仕事や職場を「働きやすい」と思うかに、「そう思う」「ややそう思う」と答えた人は67.5%、「働きがいがある」は63.2%でした。介護職員に限ると63.3%と56.8%、そのうち施設系(入所型)の介護職員では54.9%と48.4%で、ほかより少し低くなっています。
自分の職場で確かめる6つ#
全国の数字は、自分の職場の答えではありません。数字を自分の職場につなげるために、確かめられることを6つ置きます。全部やる必要はありません。気になった1つからで十分です。

- 給与明細を、調査の月収の形にそろえる(上の3つの手順)
- 「人手が足りない」と感じる時間帯を、1つだけ書いてみる(朝の食事、夕方の入浴、夜勤の巡視など)
- 人員配置(1つの時間帯に何人で見ているか)について、職場の基準と実際の人数を、聞ける人に聞いてみる
- 休憩をとる場所を見てみる。利用者さんの声やコールが聞こえて、気持ちが休まりにくいと感じる場所かどうか、自分の感覚で確かめる
- 判断に迷ったときに相談できる人を、職場の中に1人書き出してみる
- 今の職場を「働きやすい」と思うかを、そう思う・ややそう思う・どちらともいえない・あまりそう思わない・そう思わない、の5つから自分で選んでみる
6つ目は、調査と同じ物差しで自分に聞く方法です。答えがどれでも、正解も不正解もありません。ただ、半年後や1年後の自分と比べる物差しにはなると思います。
よくある質問#
D.I.の数字は、何%と読めばいいですか。
%ではありません。満足の側の割合から不満の側の割合を引いた値です。+38.2なら満足の側が38.2ポイント多い、▲12.5なら不満の側が12.5ポイント多い、という意味です。
自分の月収が平均より低いのは、職場が悪いということですか。
この調査からは言えません。254,951円は全国・全職種・全年齢をまとめた値で、資料にも職種別・年齢別で違う数字が並んでいます。比べるなら、まず定義(賞与と残業代を除く税込み)をそろえて、目安として見るところまでにしてください。
調査の全文はどこで読めますか。
介護労働安定センターのホームページに、結果の概要と、事業所調査・労働者調査の報告書が載っています。この記事で使ったのは結果の概要です(下の出典)。
この記事の数字は、2026年10月24日に介護労働安定センターの資料を開いて確かめた時点のものです。
次に読む#
満足度の数字をもう少し詳しく見たい人には、同じ調査から、介護で働く2万675人が「いい」と答えたことと「足りない」と答えたことを並べた無料のノートがあります。
他の介護士さんって、どんな感じ? 全国2万675人の答えを並べました【みんなの声 第1回】https://note.com/logical_kaigo/n/n9efbd6772f66
次の給料日に、明細の支給額から賞与・残業代・休日出勤手当の行を除いた額を、上の3つの手順で出してみてください。全国の254,951円と並べる目安になります。夜勤手当のように月で変わる手当があると、ぴったりは比べられないので、比べるのは目安までにしておきましょう。
出典#
- 公益財団法人介護労働安定センター「令和7年度「介護労働実態調査」結果の概要について」(令和8年7月29日。調査の概要、採用率と離職率、直前の仕事を辞めた理由、通常月の平均月収と注、時間給、残業時間、働きやすさと働きがい、満足度D.I.、労働条件・仕事の負担についての悩み・不安・不満等。2026年10月24日閲覧) https://www.kaigo-center.or.jp/content/files/report/R7_jittai_chousa_press.pdf
- 公益財団法人介護労働安定センター「介護労働実態調査」(結果の概要と報告書の掲載ページ。2026年10月24日閲覧) https://www.kaigo-center.or.jp/report/jittai/