VITA Boardは筆者が運営するアプリです。
「1日2リットル」を目標にして、ペットボトルを持ち歩く。夕方になっても半分以上残っていて、夜に慌てて飲む。それでトイレが近くなって、翌日はもう続かない。そういう日が続いて、自分は水が飲めない人間なのかと思った人に向けて書く。
先に言うと、「2リットルを全員が飲むべき」という数字を支える測定は、今回読んだ資料の中には見つからなかった。むしろ、26か国5,604人の水の出入りを実際に測った2022年の研究は、1日8杯(約2リットル)の目安について、客観的な証拠に裏づけられていないと書いている。
材料は3つ。水の出入りを測った研究(2022年)、欧州食品安全機関(EFSA)の総水分量の目安(2010年)、13種類の飲み物を飲んだあとの尿の量を比べた実験(2016年)。最後に、自分の量を考える手順と、アプリでの記録のしかたを置いた。
この記事の内容
30秒で読める答え#
| 知りたいこと | わかったこと |
|---|---|
| 2リットルは全員に必要か | 水の出入りを測った研究の著者は、1日8杯(約2リットル)の目安は客観的な証拠で裏づけられていない、と書いている |
| 人によってどれくらい違うか | 1日の水の出入りは、少ない人で1〜1.5リットル、多い人で約6リットル。10リットル近い人もいる(図の説明文) |
| 欧州の目安は | 総水分で成人女性2.0リットル、男性2.5リットル。ただし飲み物だけの量ではない。食べ物の水分も含む |
| コーヒーや紅茶は水に数えないのか | 男性72人が1リットルずつ飲んだ4時間の実験では、尿の量は水と差がなかった |
| 注意点 | 研究が測ったのは、体が1日に使う水の量。「何リットル飲めば健康か」までは測っていない |
「2リットル」を支える測定は、見つからなかった#
2022年に科学誌Scienceに載った研究(Yamadaら)は、水の出入りを、本人の申告ではなく、実際に測っている。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | 生後8日から96歳までの5,604人(女性3,729人、男性1,875人)、26か国 |
| 方法 | 重水(水素の重い仲間が入った水)を少量飲み、体の中から薄まっていく速さを測る。普段どおりの生活のまま測れる |
| 測ったもの | 1日の水の出入り(体が1日に使う水の量)。飲み物と食べ物の水に加え、体の中で作られる水なども含む |
著者は、水の出入りの結果をふまえて、次のように書いている。この研究は、飲み水のガイドラインは「誰にも同じ」では合わないことを示している。1日8杯(約2リットル)という一般的な提案には、客観的な証拠の裏づけがない。
ここで1つ、読み違えやすい点がある。水の出入りは、飲んだ量そのものではない。体の中で作られる水が約10%あり、呼吸や皮膚から入る水もある。著者は、飲み物と食べ物から入る水は、水の出入りのおよそ85%にあたると書いている。
食べ物から入る水の割合は、世界の自己申告の調査では20〜50%とされている。ただ著者は、自己申告の調査では、エネルギー、たんぱく質、塩分の摂取量が少なく申告されやすいことが分かっているので、この見積もりも疑わしい、と書いている。つまり、飲み物で何リットル必要かは、この研究からは決められない。
人によって、日によって、どれくらい違うのか#
研究の図の説明文に、次の数字がある。
- 水の出入りは、男性(4.3リットル/日)のほうが女性(3.4リットル/日)より多い(説明文は、何歳の値かを書いていない。30歳ごろまで増える、という流れの中の数字)。70歳を超えると、男性3.1リットル、女性2.8リットルの平均になる。
- ばらつきは大きい。少ない側が1〜1.5リットル、多い側が約6リットルで、10リットル近い人もいる。
本文には、年代と条件による差も書かれている。
- 水の出入りが最大なのは、男性は20〜30歳、女性は20〜55歳。男性は40歳を超えると、女性は65歳を超えると少なくなる。
- アスリートは、ほかの条件が同じなら、非アスリートより約1リットル多い。
- 気温30℃のときは、0〜10℃のときより約1リットル多い。
- 80歳は、30歳より約0.7リットル少ない。
- 同じ72人を春と夏で測り直すと、夏(平均29℃)のほうが春(平均18℃)より多かった(P<0.001)。
著者の計算式で、条件を決めて予測した例が次の表だ。
| 条件(高い開発水準の国) | 予測された水の出入り |
|---|---|
| 20歳男性・70kg・アスリートではない(身体活動レベル1.75)・気温10℃・湿度50%・標高0m | 3.2リットル/日 |
| 20歳女性・60kg・同じ条件 | 2.7リットル/日 |
| 20歳男性・70kg・アスリート(身体活動レベル2.5)・気温30℃・湿度90%・標高2,000m | 7.3リットル/日 |
| 20歳女性・60kg・アスリート・同じ条件 | 6.8リットル/日 |
同じ年齢でも、体格、運動、気温と湿度で、2倍以上の差が出る。なお、この研究は、水分が足りていたかどうかの指標は測っていない。水の出入りが多い人が、飲み足りているか不足しているかは、この研究からは言えない。著者も、この平均値がすべての人や条件に当てはまるとは限らない、と書いている。
欧州の目安(EFSA)は、何を数えているのか#
EFSA(欧州食品安全機関)は2010年に、水の食事基準値を出している。成人(妊娠中・授乳中を除く)の「適正摂取量」は、女性2.0リットル/日、男性2.5リットル/日。この値は、飲み水、あらゆる種類の飲み物、そして食べ物に含まれる水分を合わせた総水分量で、適度な気温と適度な身体活動(PAL 1.6)の条件にだけ当てはまる、と書かれている。
つまり、「2リットル」を飲み物だけで飲む、という数字ではない。
食べ物の割合に、先ほどの20〜50%を当てはめてみる(筆者の計算。その割合が疑わしいと著者が書いているので、目安の1つとして見てほしい)。
| EFSAの総水分量 | 食べ物が20〜50%なら、飲み物の量 |
|---|---|
| 女性 2.0リットル | 1.0〜1.6リットル |
| 男性 2.5リットル | 1.25〜2.0リットル |
飲み物だけで2リットルをめざすと、食事の水分ぶんを上乗せしている可能性がある。ただし、この表は「これだけ飲めば足りる」という推奨量ではない。2.0や2.5という数字の中身を分けて見る計算だ。暑い日、たくさん動いた日、高齢の人、妊娠中や授乳中の人(EFSAは別に上乗せの量を定めている)には、そのまま当てはまらない。
コーヒーやお茶は「水分」に数えていいのか#
2016年にAmerican Journal of Clinical Nutritionに載った実験(Maughanら)は、13種類の飲み物を比べている。対象は、水分が足りた状態で絶食していた男性72人。1リットルの飲み物を30分で飲み、その後4時間の尿を集めた。
| 飲み物 | 4時間の尿の量(平均) | 水との比較 |
|---|---|---|
| 水(基準) | 1,337g | 基準 |
| 経口補水液 | 1,038g | 少ない(P<0.001) |
| 全脂肪乳 | 1,052g | 少ない(P<0.001) |
| 脱脂乳 | 1,049g | 少ない(P<0.001) |
| コーラ、ダイエットコーラ、温かい紅茶、アイスティー、コーヒー、ラガービール、オレンジジュース、炭酸水、スポーツドリンク | 水と差がなかった | 差なし |
尿が少ないほど、体に水が残ったことを意味する。牛乳と経口補水液は、水より多く残った(飲んで2時間たった時点で、水を1とした指標が約1.5)。コーヒーや紅茶は、水と差がなかった。水分が足りた男性72人が1リットルを飲んだこの実験では、利尿作用があるから水分にならない、という話に合う結果は出なかった。
ただし、この実験が見たのは、1回1リットルを飲んだあとの、4時間の尿の量だけだ。対象は男性だけで、普段の飲み方や、毎日の積み重ねは見ていない。ビールが水と差がなかったことは、アルコールを水分補給に使ってよい、という意味にはならない。それと、夕方以降のコーヒーは、水分とは別に、カフェインが眠りに響く可能性がある。こちらは別の記事で書いている。
今日からできる3つの行動#
- 自分の飲み物の量を、3日だけ測る。 ペットボトルやマグカップの容量を一度確かめて、飲んだぶんを書く。2リットルに届かなくても、それがそのまま不足を意味するとは、今回の資料からは言えない。食べ物の水分があり、水の出入りの幅も1〜1.5リットルから約6リットルと大きいからだ。
- 暑い日と、たくさん動いた日は、少し多めに飲む。 研究では、気温30℃のときは0〜10℃のときより約1リットル、アスリートは非アスリートより約1リットル多かった。アスリートでない人が運動した日にどれだけ増えるかは、この資料からは言えない。条件が変わった日は、のどの渇きに合わせて、いつもより足してみる。
- 渇きの感覚が弱くなりやすい人は、時間で決める。 著者は、高齢の人は渇きの反応が弱くなり、脱水のリスクが高いと書いている。家族に高齢の人がいる場合は、朝、昼、夕に1杯ずつなど、回数で決めておくと、渇きに頼らずに済む。
心臓や腎臓の病気などで、医師から水分の量を指示されている人は、その指示を優先してほしい。下痢や発熱が続くときも、水分の出入りが変わるので、自己判断で量を決めず、医療機関に相談してほしい。
アプリで続ける#
VITA Boardでは、ホームの「おみず」ボタンから、+150、+200、+350、+500mlのボタンか、自由入力で飲んだ量を足せる。入れすぎたときは「減らす」で戻せる。
画面には、今日の目標が「0 / 2,250 ml」のように出る。この目標は、体格や活動量から自動で出した目安で、飲み物だけの量だ(食事の水分は含まない)。この記事で読んだ研究の数字から導いたものではない。この記事で見たとおり、水の出入りの幅は人によって大きいので、目標を達成することより、記録を通して自分の普段の量を知るために使ってほしい。→ VITA Boardを試す
誤解の墓場#
| 誤解 | 実際は |
|---|---|
| 1日2リットル飲まないと、体に悪い | 5,604人の測定をした研究の著者は、1日8杯(約2リットル)の目安は客観的な証拠で裏づけられていないと書いている。水の出入りは、1〜1.5リットルから約6リットルまで大きく違う |
| コーヒーや紅茶は、利尿作用があるから水分に数えない | 男性72人が1リットルずつ飲んだ実験で、コーヒーや紅茶を飲んだあとの4時間の尿の量は、水と差がなかった。ただし、牛乳や経口補水液は水より体に残った |
この記事について#
- 更新日:2026年10月21日
- 本記事はAI(Claude)が一次情報を確認しながら執筆し、運営者が公開しています。
- 読んだ範囲:Yamadaら(2022年)は、著者原稿(PubMed Central掲載)の本文と図の説明文を読みました。補足資料の表は読めていないため、表の数値は使っていません。EFSA(2010年)は、出版社サイトの要旨を確認しました。本文の詳細は読めていません。Maughanら(2016年)は、PubMedの要旨を確認しました。本文と表は読めていません。
- 利益相反:Yamadaらの論文には、筆頭著者が、この論文に一部関連する特許を出願中であると書かれています。
- 研究の対象:水の出入りの研究は、全年齢の5,604人ですが、水分が足りていたかどうかは測っていません。13種類の飲み物の実験は、男性72人だけで、1回1リットル、4時間の短い観察です。EFSAの値は、適度な気温と適度な身体活動の条件に限られます。
- 本記事は一般的な情報提供を目的としており、診断や治療の代わりにはなりません。心臓や腎臓の病気などで水分の量を指示されている人、下痢や発熱が続く人は、飲む量を決める前に医療機関に相談してください。
- 記事末尾に自社アプリの紹介があります。第三者の広告・アフィリエイトは含みません。
出典・参考
- Yamada Y, Zhang X, Henderson MET, et al. Variation in human water turnover associated with environmental and lifestyle factors. Science. 2022;378(6622):909-915. https://doi.org/10.1126/science.abm8668
- EFSA Panel on Dietetic Products, Nutrition and Allergies (NDA). Scientific Opinion on Dietary Reference Values for water. EFSA Journal. 2010;8(3):1459. https://doi.org/10.2903/j.efsa.2010.1459
- Maughan RJ, Watson P, Cordery PA, et al. A randomized trial to assess the potential of different beverages to affect hydration status: development of a beverage hydration index. American Journal of Clinical Nutrition. 2016;103(3):717-723. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/26702122/