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「夜に運動すると眠れなくなる」は本当か。23本と15本の研究のまとめ、厚労省の睡眠ガイドで、寝る何時間前なら大丈夫かを検証する

約9分で読めます 更新腸活睡眠
この記事の要点

VITA Boardは筆者が運営するアプリです。

平日に運動できるのは、仕事から帰った21時すぎだけ。でも「夜に運動すると体が興奮して眠れなくなる」と聞いて、結局その時間はソファで過ごしてしまう。週末にまとめて動こうと決めて、雨が降って流れる。

この俗説は、一次情報で確かめると半分だけ当たっている。眠りを妨げる可能性がはっきり示されているのは「激しい運動を、寝る1時間以内に終えた場合」で、寝る2〜4時間前に終えた激しい運動では、眠りを妨げる結果は出ていない。この記事では、その線がどこに引かれているのかを、研究の数字で確かめる。

この記事の内容

先に結論#

運動を終えた時刻研究と国のガイドで言えること
寝る2〜4時間前激しい運動でも、健康な若い〜中年の人では夜の眠りを妨げなかった(2021年の分析)。厚労省の睡眠ガイドも「就寝の約2〜4時間前まで」の夕方・夜の運動は睡眠改善に有効という報告を紹介している
寝る1〜2時間前激しい運動を寝る0.5〜4時間前に終えた研究を集めて分析すると、変わったのはレム睡眠がわずかに減ったことだけだった(2021年の分析)。ただ、論文の著者が「妨げない」と結論した範囲は2〜4時間前で、この時間帯は言い切れない
寝る1時間以内激しい運動では、寝つき・睡眠時間・睡眠効率が悪くなる可能性がある(2019年の分析)。厚労省のガイドのQ&Aも、仕事帰りのジムについて同じ注意をしている
先に結論

「夜の運動」とひとまとめに考えるのはやめて、何時に終えたかとどれくらい激しかったかの2つで分けて考える。この2つを分けないと、21時に30分歩くことまで我慢することになる。

この俗説はどこから来たのか#

研究の側から見ても、この説には出どころがある。2019年に23本の研究をまとめたスイスのグループ(Stutzら)は、論文の冒頭で、当時の推奨は眠りへの悪影響を理由に夜の運動を勧めていなかった、と書いている。

理屈としても分かりやすい。運動をすると心拍数が上がり、体の中心の温度(深部体温)が上がる。人は深部体温が下がっていくときに眠くなるので、寝る直前に体温を上げれば寝つきが遅れそうだ。憶測ですが、この「理屈で考えるとそうなりそう」という部分が、確かめられる前に広まったのだと思う。

では実際に、夜に運動した日と運動しなかった日で、眠りを測って比べるとどうなるのか。

研究1:23本の研究をまとめた分析(2019年)#

調べたこと内容
論文Stutzら、Sports Medicine、2019年
対象健康な成人。1回だけ夜に運動した日と、運動しなかった日の眠りを比べた研究
集めた件数11,717件の文献から、条件に合う23本
運動した夜の変化深い眠り(徐波睡眠)が1.3ポイント増えた。浅い眠り(ステージ1)が0.9ポイント減った。夢を見るレム睡眠が始まるまでの時間が7.7分のびた
著者のまとめ全体として、夜の運動が眠りを悪くするという仮説は支持されず、むしろ逆だった
例外寝る1時間以内に終わる激しい運動のあとは、寝つき・睡眠時間・睡眠効率が損なわれる可能性がある
研究1:23本の研究をまとめた分析(2019年)

深い眠りが1.3ポイント増えた、という数字は大きくない。でも少なくとも「夜に動いたら眠りが浅くなる」という向きの結果ではなかった。

この分析にはもう1つ、読み落とされやすい結果がある。ふだんの運動量に比べてきつすぎる運動をした場合ほど、睡眠効率(布団にいた時間のうち眠っていた割合)が下がり、夜中に目が覚めている時間が増えていた。寝る時点で体温が高いままだった研究でも、同じ傾向があった。

ただし著者自身が、こうした「どんな条件で変わるか」の分析の結果は、研究を1本外すと統計的に確かめられなくなったと書いている。きつさや体温の影響は、はっきり言い切れる段階ではない。

研究2:激しい運動だけに絞った分析(2021年)#

「軽い運動ならともかく、激しい運動は別だろう」という疑問には、カナダのグループ(Frimpongら)が2021年に答えている。

調べたこと内容
論文Frimpongら、Sleep Medicine Reviews、2021年
対象眠りに問題のない18〜50歳の健康な成人。運動習慣のない人と鍛えている人の両方を含む
集めた件数1回だけ運動した研究15本、合計194人
寝る0.5〜4時間前に終えた場合(1回の運動)運動しなかった夜より、レム睡眠が2.34%減った(要旨の表記)。それ以外の眠りの指標には、統計的に確かめられる変化はなかった
習慣として夜に激しい運動を続けた場合夜の眠りの乱れは見られなかった
著者のまとめ寝る2〜4時間前に行う1回の激しい運動は、健康な若い〜中年の成人の夜の眠りを妨げない
研究2:激しい運動だけに絞った分析(2021年)

寝つきの時間や睡眠時間は、寝る0.5〜4時間前の激しい運動でも、運動しなかった夜と比べて統計的に確かめられる差がなかった。それでも著者らが結論の範囲を「2〜4時間前」にとどめている点は、そのまま受け取っておきたい。2時間を切る時間帯について、要旨の中で個別の数字は示されておらず、この記事でもそこは「分からない」として扱う。

194人というのは、15本を合わせても多い人数ではない。平均すると1本あたり約13人の研究を集めた結果だという点は、差し引いて読んでほしい。

国のガイドは何と言っているか#

厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」は、運動と睡眠の項で次のように書いている(要約)。

  • 日中に運動すると、体を動かす量を確保しやすく、寝る直前まで興奮が続くことも避けられる
  • 夕方や夜の運動でも、目安として就寝の約2〜4時間前までなら、睡眠改善に有効だと報告されている
  • 過剰に強い運動は、かえって睡眠を妨げ、けがにもつながる可能性がある
  • Q&Aの「夜仕事帰りにジムに行って運動しても眠りに影響はないか」という問いには、就寝前1時間以内の激しい運動は夜の眠りを妨げる可能性があるとして、ジムでの運動はできる限り就寝の約2〜4時間前までに終え、床に入るまでにリラックスする時間を設けるとよい、と答えている
  • こどもの項でも、就寝前1時間以内の激しい運動は睡眠の質を下げる可能性があるので、寝る直前の運動は控えた方がよいとしている

ガイドの参考文献には、上の2つの分析がどちらも挙がっている。国の目安と研究の数字は、同じ線の上にある。

この研究が言っていないこと#

ここまでの数字には、はっきりした限界がある。

限界何が分からないか
対象は健康な人不眠症や睡眠時無呼吸などがある人に、同じことが言えるかは分からない
多くは1回だけの運動「その夜」の眠りを測った研究が中心。何か月も夜に運動を続けたときの話は、2021年の分析の「習慣的に夜に激しい運動をしている人」の結果くらいしかない
人数が少ない2021年の分析は平均すると1本あたり約13人
測り方脳波や腕時計型の機器で測った眠りと、本人の感じ方の両方が混ざっている。研究ごとに運動の種類や時間も違う
年齢2021年の分析は18〜50歳が対象。それより上の年代は含まれていない
この研究が言っていないこと

だから「夜の運動はむしろ眠りに良い」と言い切るのも、言いすぎになる。言えるのは「寝る2時間以上前に終えれば、夜の運動を眠りのために我慢する理由は、研究からはあまり見当たらない」というところまでだ。

自分の場合はどうなるか(就寝時刻から逆算する)#

線は、運動を始めた時刻より、終えた時刻で引かれている。寝る時刻から引き算すると、自分の線が出る。

ふだん寝る時刻激しい運動を終えたい時刻(2時間前)1時間以内に入る時間帯
23:0021:0022:00〜23:00
0:0022:0023:00〜0:00
1:0023:000:00〜1:00
自分の場合はどうなるか(就寝時刻から逆算する)

ここでいう「激しい」は、息が上がって会話が続かない程度の運動(ランニングの追い込み、インターバル走など)を指す。筋トレがどこに入るかは、今回読んだ要旨からは分からなかった。厚労省のガイドが「中強度」と呼ぶのは「息が弾み汗をかく程度」で、ウォーキングや軽い筋トレが入る。

21時に帰宅して0時に寝る人なら、21〜22時の30分のウォーキングは、研究の上では眠りを妨げにくい時間帯に入る。

今日からできる3つの行動#

  1. ふだん寝る時刻から2時間引いて、「激しい運動はここまでに終える」時刻を1つ決める。 上の表で自分の行を探すだけでいい。決めるのは終える時刻のほうだ。
  2. その時刻を過ぎたら、運動を「中くらい以下」に切り替える。 寝る1時間以内の激しい運動は、研究でも国のガイドでも避ける側に入っている。やめるか続けるかで迷うより、ランニングを早歩きに、追い込みの筋トレを軽めのストレッチに替える。ふだん運動していない人は、いきなりきつい運動を夜に入れない(2019年の分析で、ふだんよりきつい運動ほど睡眠効率が下がる傾向があった。研究を1本外すと確かめられなくなる弱い結果だが、念のため)。
  3. 夜に運動した日としなかった日で、寝つきと眠りの感じを2週間メモする。 研究は十数人規模の実験の平均で、人によって違う可能性がある。自分にとってどうかは、自分の記録でしか分からない。

アプリで続ける#

VITA Boardでは、ランニングやウォーキングなどの有酸素運動を「種目・分数」で、筋トレをメニューごとに記録できる。睡眠は、ホームの歩数欄から睡眠時間と「ぐっすり/まあまあ/浅い/悪い」の4段階の眠りの質を記録できる(Huawei Healthから取り込むこともできる)。運動を何時に終えたかを記録する専用の欄はないので、行動3の「夜に運動した日」は、メモ帳に日付と終えた時刻を書いておき、アプリの睡眠時間・眠りの質と見比べてほしい。1日記録を忘れても、連続記録が2日以上続いていて券が残っていれば、毎週配られる「おやすみ券」が自動で使われて連続記録は途切れない(券は最大2枚まで持てる)。→ VITA Boardを試す

記事同士の会話:以前の記事「『お風呂は寝る90分前』は本当か」では、入浴で上がった体温が下がるときに寝つきやすくなる、という研究を紹介した。今回の厚労省のガイドも、運動で上がった深部体温が下がる仕組みを睡眠改善のコツとして説明している。入浴と運動は、どちらも「体温を上げて、下がる時間を寝る前に取る」点で同じ方向の話になる。

誤解の墓場#

誤解実際は
夜に運動すると眠れなくなる23本の研究をまとめた分析では、全体として夜の運動が眠りを悪くするという結果は出ず、深い眠りはわずかに増えていた。悪くなる可能性が示されたのは、寝る1時間以内に終わる激しい運動
激しい運動は夜にやってはいけない激しい運動に絞った15本・194人の分析では、寝る0.5〜4時間前に終えてもレム睡眠がわずかに減った以外に変化はなく、著者は「寝る2〜4時間前なら妨げない」と結論した。夜の激しい運動を習慣的に続けた場合も乱れは見られなかった(眠りに問題のない18〜50歳の結果)
誤解の墓場

この記事について#

  • 更新日:2026年10月9日
  • 本記事はAI(Claude)が一次情報を確認しながら執筆し、運営者が公開しています。
  • 読んだ範囲:Stutzら(2019年)とFrimpongら(2021年)は、どちらも論文の要旨(Europe PMC掲載)で数値を確認しました。論文本文は読めていないため、各研究の運動の種類や人数の内訳は扱っていません。厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」は公開PDFの本文で、運動と睡眠の項(26〜27ページ)、同じ項のQ&A(28ページ)、こどもの項(16ページ)を確認しました。「激しい」「中くらい」の説明は、ガイドの中強度の説明をもとに筆者が言い換えたものです。
  • 本記事は一般的な情報提供を目的としており、診断や治療の代わりにはなりません。心臓などの持病で運動を制限されている人、不眠や睡眠時無呼吸などで治療中の人は、運動の時間や強さを変える前に主治医に相談してください。
  • 記事末尾に自社アプリの紹介があります。第三者の広告・アフィリエイトは含みません。

出典・参考


この記事を書いた人:ミミVITA Board 開発者

健康管理アプリ「VITA Board」の開発者。記事の数字は論文・厚生労働省等の公開情報を確認してから書いています。誤りに気づいた方はお問い合わせから教えてください。 運営者情報

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