VITA Boardは筆者が運営するアプリです。
夕方の4時から5時、ちょうど眠くなる時間にコーヒーを一杯飲む。夜は布団に入れば普通に眠れるし、朝もそれなりに起きられる。だから、カフェインのせいで眠りが浅くなっている、という話にはピンとこない。そういう人は多いと思う。
この記事は、その「眠れているから大丈夫」という感覚が、どこまで当てになるのかを確かめる記事だ。材料は2つ。就寝の0・3・6時間前にカフェイン400mgを飲んだ12人の実験(2013年)と、厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」。最後に、就寝時刻から逆算した早見表を置いた。
この記事の内容
30秒で読める答え#
| 知りたいこと | わかったこと |
|---|---|
| 就寝6時間前でも影響が出るのか | 12人の実験では、400mgを就寝6時間前にとっても、偽薬より総睡眠時間が短くなった(測定器での測定)。0・3・6時間前の3条件とも、1.1〜1.2時間短くなったと本文に書かれている |
| 本人は気づけるのか | 6時間前の条件では、睡眠日誌(本人の自己申告)でも41分短かったが、12人では統計の線引きに届かなかった(p=0.08)。著者は「客観的な測定だけが6時間前の差を検出した」と書いている |
| 国の目安は | 1日400mgを超えると夜眠りにくくなる可能性がある。夕方以降は控えめに(睡眠ガイド2023) |
| 注意点 | 実験の400mgは、コーヒー4杯ぶんを錠剤で一度にとったもの。1杯だけなら同じ結果になる、とは言えない |
まず、400mgとはどれくらいか#
睡眠ガイド2023は、400mgの目安を「ドリップコーヒーでコーヒーカップ4杯分(700cc)、市販のペットボトルコーヒーで1.5本分(750cc)」と書いている。単純に割ると、コーヒー1杯がおよそ100mgになる。
これは、後で出てくる実験の数字を読むときに効いてくる。実験で使われたのは、錠剤で一度にとる400mg。普段の1杯の4倍だ。
12人の実験で、何が測られたのか#
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 研究 | Drake ら、2013年、Journal of Clinical Sleep Medicine(睡眠医学の専門誌) |
| 対象 | 睡眠に問題のない健康な成人12人(女性6人・男性6人、19〜48歳、平均29.3歳) |
| 方法 | 全員が4回の夜を経験する、ランダム化・二重盲検の試験。カフェイン400mg(錠剤)を就寝の0時間前・3時間前・6時間前にとる夜と、偽薬(中身のない錠剤)の夜。自宅で実施 |
| 測り方 | 睡眠日誌(本人の自己申告)と、携帯型の頭部バンド式の脳波測定器(客観的な測定。研究室の本格的な検査そのものではない)の両方 |
| 参加者の普段の摂取量 | 平均で1日115mg(個人差が大きく、ばらつきは±169mg) |
12人という人数は少なく(16人を選び、手順の違反があった4人は除外されている)、著者自身も限界として書いている。血中のカフェイン濃度は測っていない。睡眠の段階の指標は、測定器の確認が新しく暫定的なものだと著者は書いている。結果が高齢者や、普段カフェインをとらない人にも当てはまるかは、この実験からは言えない。対象は若い〜中年の成人だ。
結果:いつ飲んでも、眠りは短くなった#
論文の本文と要旨から、読み取れる数字を書き写す。
- 携帯型の測定器で測った総睡眠時間は、3つの条件すべてで偽薬の夜より短く、短縮は1.1〜1.2時間だった。本文の測定結果では、3つの条件とも偽薬との差は有意とされ、要旨にも、就寝時・3時間前・6時間前のどれも睡眠の乱れに有意な影響があった(p<0.05)と書かれている
- 寝つくまでの時間は、3時間前の条件で17.2分長くなった(有意)。0時間前は22.4分、6時間前は24.1分長かったが、統計の線引きには届かなかった
- 夜中に起きていた時間は、6時間前で8分、3時間前で27.6分増え、どちらも有意だった
ここで目を止めたいのは、日誌のほうだ。就寝6時間前の条件で、本人が書いた総睡眠時間は41分短かった。ただ、12人では、その差が統計の線引きに届かなかった(p=0.08)。寝つきの時間も同じだった(p=0.06)。
つまり、6時間前の夜には、測定器では眠りが短くなっていて、本人の記録には41分の短縮が出ていたものの、人数が少なく、はっきりした差とは言えなかった。「夕方のコーヒーを飲んでも、普通に眠れている」という感覚では、気づきにくい可能性がある、という結果だ。
睡眠ガイド2023のQ&Aにも、同じ内容の答えがある。「夜にコーヒーを飲んでいても問題なく眠れるのですが、本当にカフェインは睡眠に影響するのですか?」という質問に対して、「カフェインの代謝能力には個人差が大きく、微量でも睡眠に影響する人から、多量でもあまり影響がない人まで様々です。また、入眠に問題がない場合でも、睡眠時間の短縮や深睡眠の減少は多くの人にみられるため、注意が必要です」と書かれている。
注意:この実験をそのまま「コーヒー1杯」に当てはめない#
先ほどの400mgは、普段の1杯の4倍だ。参加者の普段の摂取量(1日115mg)からすると、大きな量を一度にとったことになる。実験の結果は、「夕方に4杯分を一度に飲むと、眠りが1時間ほど短くなる」という話であって、「夕方の1杯で1時間短くなる」という話ではない。
では、1杯なら大丈夫なのか。ここは睡眠ガイド2023が答えている。ガイドは、18〜65歳の成人を対象にした系統的レビュー(Gardiner ら、2023年)を紹介して、次のように書いている。
- カフェインの量が107mgを超えると、就寝の約9時間前にとっても、夜の睡眠に影響する
- 217.5mgを超えると、約13時間前にとっても、夜の睡眠に影響する
107mgは、コーヒーのおよそ1杯分にあたる。なお、この系統的レビューそのものは筆者は読めていない。ガイドの引用を通して書いている。ガイドの文章のとおり、読んだ内容は「影響する量と時刻の目安」であって、「誰でも必ずこうなる」という保証ではない。
就寝時刻から逆算した早見表#
2つの資料の数字を、就寝23時の人にあてはめて逆算してみた。時刻の計算は筆者のもので、資料にある数字は「何時間前」と「何mg」の部分だ。
| 飲む時刻 | 就寝まで | 根拠になる数字 |
|---|---|---|
| 23時 | 0時間前 | 実験:400mgで総睡眠時間が1.1〜1.2時間短縮 |
| 20時 | 3時間前 | 実験:400mgで寝つきが17.2分長くなり、夜中に起きている時間が27.6分増えた |
| 17時 | 6時間前 | 実験:400mgで総睡眠時間が短縮。日誌では本人に差が出なかった。著者は、午後のカフェインは17時より前に、と提案 |
| 14時 | 9時間前 | ガイド(系統的レビューの引用):約107mg超で夜の睡眠に影響 |
| 10時 | 13時間前 | ガイド(同上):約217.5mg超で夜の睡眠に影響 |
量が少なければ影響が出にくい、と考えられるが、影響が出始める量と時刻は、人によってかなり違う。ガイドは、日本人のカフェインの血中半減期(体内の量が半分になるまでの時間)を3〜7時間とばらつきがあるとしていて、半減期が5時間なら、19時に100mg飲むと、24時になっても50mg分が体に残る、という計算例を挙げている。
影響の出方は、量と人でかなり違う。1杯のコーヒーは107mgの境目と近く、14時の1杯が影響するかどうかは、この表からは決められない。そして、6時間前の影響が本人の記録でははっきりしなかったのは、人数が少なかったためかもしれないし、本人に自覚しにくいからかもしれない。どちらなのかは、この実験からは言えない。
今日からできる3つの行動#
- 1日分のカフェインを数えて、400mgを超えていないか見る。 コーヒー1杯をおよそ100mgとして、ペットボトルコーヒーは1本で約270mgになる(ガイドの「1.5本で400mg」から割った値)。紅茶、緑茶、ウーロン茶、コーラ、エナジードリンクにも入っている。エナジードリンクは、コーヒーの5倍近い製品もある(ガイド)。
- 最後の1杯の時刻を、就寝の6〜9時間前に動かしてみる。 23時に寝る人なら、14時から17時前までが目安だ。夕方以降は、茶葉を使わない麦茶、そば茶、黒豆茶、とうもろこし茶などに置き換えられる(ガイドの提案)。1週間試して、寝つきや夜中の目覚めが変わるかを見る。
- 眠りの変化は、感覚より、書いた記録で見る。 実験の日誌には41分の短縮が出ていたのに、人数が少なく、はっきりした差とは言えなかった。自分の感覚だけでは気づきにくいかもしれない。最後のカフェインの時刻と、寝た時刻、起きた時刻を同じメモに書いておくと、あとで見比べられる。
こどもや高齢者、妊娠中の人は、カフェインの影響を受けやすいと睡眠ガイドが書いていて、量をさらに減らすよう求めている。眠れない日が続くときは、飲み物の見直しより先に、医師に相談してほしい。
アプリで続ける#
VITA Boardでは、ホームの歩数欄から睡眠時間と「ぐっすり/まあまあ/浅い/悪い」の4段階の眠りの質を記録できる(Huawei Healthから取り込むこともできる)。カフェインの量を記録する専用の欄はないので、最後のカフェインの時刻は、メモ帳に日付と一緒に書いておき、1〜2週間後にアプリの睡眠時間・眠りの質と見比べてほしい。
なお、アプリの睡眠のヒントには「カフェインは15時まで」と表示される。この記事で読んだ資料にあるのは「夕方以降は控えめに」と「就寝6時間前(17時より前)」で、15時という数字そのものの根拠は、ここでは確認できていない。早めの安全側の目安として、参考程度に見てほしい。→ VITA Boardを試す
誤解の墓場#
| 誤解 | 実際は |
|---|---|
| 夜に眠れているなら、カフェインは眠りに影響していない | 12人の実験では、就寝6時間前でも測定器で総睡眠時間が短くなった。本人の日誌でも41分短かったが、12人では統計上の差とは言えなかった(睡眠ガイド2023も、眠れている人でも睡眠時間の短縮や深睡眠の減少は多くみられると書いている) |
| カフェインの影響は、飲んだ量が同じなら誰でも同じ | 代謝の個人差は大きい。日本人の血中半減期は3〜7時間とばらつきがあり、微量でも影響が出る人と、多量でもあまり影響が出ない人がいる(睡眠ガイド2023) |
この記事について#
- 更新日:2026年10月19日
- 本記事はAI(Claude)が一次情報を確認しながら執筆し、運営者が公開しています。
- 読んだ範囲:Drake ら(2013年)は、PubMedの要旨と、PubMed Central掲載の本文の文章部分を確認しました。表1〜3は画像で読めていないため、表の数値は使っていません。厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」(令和6年2月)はPDFの全文から、「睡眠と嗜好品について」の記述を書き写しました。Gardiner ら(2023年)の系統的レビューは、本体を読めておらず、ガイドの引用を通した内容です。
- 実験の対象は、睡眠に問題のない健康な成人12人です。高齢者、こども、妊娠中の人、普段カフェインをとらない人に当てはまるかは、この実験からは言えません。
- 本記事は一般的な情報提供を目的としており、診断や治療の代わりにはなりません。眠れない日が続く人、日中の強い眠気がある人、睡眠薬などで治療中の人は、飲み物を見直す前に医療機関に相談してください。
- 記事末尾に自社アプリの紹介があります。第三者の広告・アフィリエイトは含みません。
出典・参考
- Drake C, Roehrs T, Shambroom J, Roth T. Caffeine effects on sleep taken 0, 3, or 6 hours before going to bed. Journal of Clinical Sleep Medicine. 2013;9(11):1195-1200. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC3805807/
- 厚生労働省 健康づくりのための睡眠指針の改訂に関する検討会「健康づくりのための睡眠ガイド2023」令和6年2月 https://www.mhlw.go.jp/content/001305530.pdf
- Gardiner C ら. The effect of caffeine on subsequent sleep: A systematic review and meta-analysis. Sleep Medicine Reviews. 2023;69:101764(睡眠ガイド2023に引用された内容のみ。本体は未読)