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ポイントやランキングで、運動は本当に続くのか。ゲームの仕組みの効果を、2,407人のまとめと602人の試験で答える5つのQ&A

約13分で読めます 更新継続心理
この記事の要点

VITA Boardは筆者が運営するアプリです。

この記事には、書き手にとって都合の悪い話が入っています。VITA Boardは、クエストやポイント、相棒の育成などの「ゲームの仕組み」で記録を続けてもらう設計のアプリです。だからこそ、ゲームの仕組みに本当に効果があるのかを、論文の数字で確かめておきたかった。

結果を先に書くと、効果はあった。ただし思っていたより小さく、仕組みをやめると多くは薄れていた。

「ポイントがもらえるなら歩く」は、大人には子どもだましに聞こえるかもしれない。記録アプリを何度もやめてきた人ほど、「どうせ最初だけ」と思うはずだ。その感覚がどこまで正しいかを、5つの質問に分けて答える。

この記事の内容

30秒で読める答え#

質問研究で言えたこと
ゲームの仕組みで、歩く量は増えるのか16試験・2,407人のまとめでは、効果の大きさは「小〜中程度」。歩数を報告した試験では1日あたり約1,400〜1,600歩の差。ただし対象は9〜73歳で子どもも含み、試験ごとのばらつきがとても大きい
ゲームのない普通のアプリと比べても上乗せはあるのか成人の試験のまとめ(歩数を調べた34試験)では、上乗せは1日489歩。著者はこれを「ごくわずか」と評価している
競争・協力・支え合いのどれがよかったか米国の成人602人の試験では、3つとも歩数が増えた。いちばん大きかったのは競争(1日920歩の差)
やめたら元に戻るのか群の平均で見た上乗せは、多くが薄れた。602人の試験で、終了後12週間も対照群との差が残ったのは競争だけ(1日569歩)。協力は終了後に差がほぼ消えた
結局、使う意味はあるのか「小さいが、ゼロではない」。仕組みを選ぶこと、終わった後の形を先に決めておくことが、研究から読み取れる使い方
30秒で読める答え

Q1. ゲームの仕組みで、歩く量は本当に増えるのか?#

増えた、という結果が出ている。ただし数字の読み方に注意がいる。

フランスの研究チームが2022年にまとめた統合解析(複数の試験の結果を集めて計算し直す研究)では、くじ引きで群を分けて比べた16の試験、合計2,407人を対象に、ポイント・バッジ・ランキング・レベルなどを使った運動の取り組みの効果を調べている。

項目内容
研究Mazeas ら、2022年、Journal of Medical Internet Research
対象16試験・2,407人。年齢は9〜73歳(平均35.7歳)。成人の試験が12、9歳からの子ども・10代の試験が6(18試験中)。肥満・2型糖尿病・心臓病の人を対象にした試験も4つ含む
取り組みの期間1〜24週間(平均11.8週間)
全体の効果効果の大きさは「小〜中程度」(効果量0.42)
何もしない群と比べると効果量0.58
ゲームなしの運動の取り組みと比べると効果量0.23(小さくなる)
歩数1日あたり約1,421歩の差。偏りが大きく結果を強く左右していた2試験を除いて計算し直すと約1,610歩(7試験・1,235人)。どちらも試験ごとのばらつきがとても大きい
息が弾む強さの運動はっきりした差は出なかった
Q1. ゲームの仕組みで、歩く量は本当に増えるのか?

この表で見てほしいのは、比べる相手によって効果の大きさが変わる点だ。何もしない群と比べたときは0.58、ゲームなしの運動プログラムと比べたときは0.23になる。後者の数字のほうが、「ゲームの仕組みそのものがどれだけ上乗せしたか」に近い。

さらに、同じ論文の中で、効果が揺らぐ計算も報告されている。

  • 偏りが少ないと判断された試験だけで計算し直すと、はっきりした差は出なかった(効果量0.33)
  • 結果の出なかった試験が論文になっていない可能性を補正すると、はっきりした差は出なかった(効果量0.24)
  • 取り組みが12週間以上の試験だけでは、はっきりした差は出なかった

著者自身も、試験の数が少ないこと、小規模な試験が多いこと、そして「効果がゲームの仕組みそのものによるものだと示すのは難しい」ことを限界に挙げている。なお、筆頭著者は運動のゲーム化サービスを提供する会社から研究の支援を受けている(論文上の利益相反の申告は「なし」)。

Q1の答え: 9〜73歳の参加者を集めたまとめで、ゲームの仕組みは歩く量を増やしていた。ただし、効き方が強いのは「何もしない場合」と比べたときで、増えたのは歩数であり、息が弾む強さの運動でははっきりした差が出ていない。

Q2. ゲームのない普通の健康アプリと比べても、上乗せはあるのか?#

ある。ただし小さい。

2024年に発表された別の統合解析は、成人(18歳以上)を対象に、8週間以上続けた試験だけを集め、「ゲームの仕組みがあるアプリ」と「ゲームの仕組みがない取り組み」を比べている。

項目内容
研究Nishi ら、2024年、eClinicalMedicine
対象成人。36試験・10,079人。多くは持病のない人だが、肥満・心臓病・2型糖尿病の人を含む試験もある
歩数の上乗せ1日489歩(34試験・5,119人。95%信頼区間は64〜914歩)
著者の評価「ごくわずか(trivial)」
息が弾む強さの運動はっきりした差は出なかった
Q2. ゲームのない普通の健康アプリと比べても、上乗せはあるのか?

この研究では、方法の中で「1日2,000歩」を意味のある差の目安にしていた。489歩はその4分の1にも届かない。

Q1の「約1,400〜1,600歩」と比べると、だいぶ小さく見えるはずだ。Q1の歩数は、「何もしない」群と比べた試験と「ゲームなしの取り組み」と比べた試験が混ざった結果で、子どもを含む試験や期間の違いもある。比べる相手をゲームのないアプリにそろえると、489歩まで小さくなった。

Q2の答え: 成人を対象にした試験のまとめ(歩数を調べた34試験)では、ゲームの仕組みの上乗せは1日489歩。あるにはあるが、これだけで生活が変わるほどの量ではない。

Q3. 競争・協力・支え合い。どの仕組みがよかったのか?#

この質問に正面から答えた試験がある。米国で602人を対象に行われたSTEP UP試験だ。

項目内容
研究Patel ら、2019年、JAMA Internal Medicine
対象米国40州の成人602人。大手コンサルティング会社の社員で、自己申告のBMIが25以上。平均39歳、男性が71%
期間ゲームの期間が24週間、そのあと何もしない追跡期間が12週間
対照群活動量計で自分の歩数を見られ、目標歩数も決める。ポイントや仲間の仕組みはない
ゲームの中身毎週月曜に70ポイントを受け取り、前日に目標歩数に届かないと10ポイント減る。ポイントでレベルが上下する
3つの群支え合い(本人が選んだ家族か友人1人に、毎週ポイントとレベルの報告がメールで届く)/協力(3人1組。毎日1人がくじで選ばれ、その人が前日の目標に届かなければチーム全員が10ポイント失う)/競争(3人1組。毎週、ポイント順のランキングがメールで届く)。3人組の相手は、ほとんどが試験で初めて知り合った人どうし
謝礼参加と各回の調査に対して、合計で最大125ドル
Q3. 競争・協力・支え合い。どの仕組みがよかったのか?

この試験のポイントは「最初にもらって、届かなければ減る」設計だった。論文には、得をする形より失う形で示したほうが行動を後押ししやすい、という行動経済学の知見を使ったと書かれている。ほかにも、始める前に「目標を目指す」と誓約する、週の初めにポイントがまた70に戻る、といった工夫が重ねてある。

ゲームの期間(目標に慣らす最初の4週間を除いた5〜24週目)の結果はこうなった。

群対照群と比べた1日の歩数の差
競争920歩
支え合い689歩
協力637歩
Q3. 競争・協力・支え合い。どの仕組みがよかったのか?

3つとも対照群より歩数が増えた。いちばん大きかったのは競争だった。

もう一つ、表にない結果も書いておく。この試験では、もともと歩数が少なかった人(1日5,000歩未満、または5,001〜7,500歩)のほうが、増え方が大きかった。

似た仕組みの試験は、ほかにもある。米国の家族単位の研究(BE FIT試験、成人200人・94家族、平均55.4歳)では、家族で70ポイントを持ち、誰かが目標に届かないと減る仕組みで、12週間の取り組み中に対照群より1日953歩多く歩いた。

一方で、同じ研究グループが退役軍人180人に行った試験(Agarwal ら、2021年)では、お金の報酬がない「ゲームと支え合いだけ」の群では、歩数にはっきりした差が出なかった。ここだけは論文の要旨しか読めていない。

Q3の答え: 米国の成人602人の試験では、競争・支え合い・協力のどれでも歩数が増え、競争が最も大きかった。ただし、どの試験も「届かなければ減るポイント」や謝礼を組み合わせており、ゲームの仕組みだけを切り出した効果ではない。

Q4. ゲームをやめたら、元に戻るのか?#

多くは薄れる。この記事でいちばん伝えたい結果がここだ。

STEP UP試験では、24週間のゲームが終わったあと、12週間はゲームなしで歩数だけを測り続けた。

群1か月目6か月目(ゲーム最後の月)9か月目(ゲーム終了から2〜3か月後)
競争1,166歩1,022歩609歩
支え合い771歩760歩476歩
協力979歩460歩95歩
Q4. ゲームをやめたら、元に戻るのか?

数字はどれも、対照群と比べた1日の歩数の差(調整前)だ。

協力の群は、ゲームの最中から差が縮み始め、9か月目にはほぼ消えている。12週間の追跡期間全体で、対照群との差がはっきり残ったのは競争の群だけだった(1日569歩)。支え合いの群は428歩多かったが、この試験は偶然の差を見誤らないよう判定の基準を厳しく決めていたため、「はっきりした差」とは判定されていない。

16試験のまとめ(Q1)でも、取り組みの終了後に測った6試験では、主な計算ではっきりした効果は残っていなかった(効果量0.09)。偏りの大きい試験を外した計算(感度分析)では小さな効果(0.15)が残ったが、著者は「一度きりの取り組みでは足りない」と書いている。

家族単位のBE FIT試験でも、終了後12週間の差は1日494歩に縮み、20週目以降は下がり方が速くなった。退役軍人の試験では、お金の報酬つきの群でも、終了後は対照群との差がはっきりしなくなった。

Q4の答え: 成人を対象にした試験では、ゲームの仕組みを外すと、群の平均で見た歩数の上乗せは小さくなった。602人の試験で終了後も差がはっきり残ったのは競争の群だけで、9か月目の差(609歩)は1か月目(1,166歩)の約半分だった。

Q5. 結局、ゲーム型の健康アプリを使う意味はあるのか?#

あると思う。ただし、期待の置き方を変えたほうがいい。

研究から読み取れることを並べると、こうなる。

  • 効果は「小さいが、ゼロではない」。上乗せは成人の試験のまとめで1日489歩
  • 仕組みがある間は効きやすく、外すと薄れやすい
  • 誰かと一緒にやる仕組み、とくに競争は、終了後まで差が残った試験がある
  • もともと歩数が少ない人ほど、増え方が大きかった試験がある

記録アプリを途中でやめた経験がある人にとって、二つ目の結果はむしろ気が楽になる話かもしれない。やめた後に元に戻ったのは、その人の意志が弱かったからとは限らない。研究でも、仕組みが外れると、群の平均で見た上乗せは小さくなっていた(競争の群は差が残った)。

だから、ゲームの仕組みは「性格を変えるもの」と考えるより、「続けている間だけ効く道具」と考えたほうが現実に近い。その道具をどれだけ長く手元に置けるか、置けなくなったときに何を残すかを、始める前に考えておく。

Q5の答え: ゲームの仕組みは、効果が小さく、外すと薄れやすい道具だ。それでも、使っている間に歩数が増えたことは複数の試験で示されている。使う意味は「ずっと続けられる仕組みを選ぶ」ことにある、と筆者は考えている(24週間を超えて使い続けた場合の効果は、どの試験も調べていない)。

今日からできる3つの行動#

  1. 1週間の平均歩数を見てから、目標を決める。 スマートフォンや活動量計の記録を1週間分さかのぼり、平均を出す。STEP UP試験では、目標を「自分の普段の歩数より33%、40%、50%多い」から選ぶか、「普段より1,500歩以上多い」数字にして、最初の4週間で少しずつ目標まで上げていた。これは試験の設定で、誰にでも勧められる目標値ではないが、「他人の1万歩」ではなく「自分の普段」から決めるという考え方は使える。膝や腰に痛みがある人、持病がある人は、歩く量を増やす前に医師に相談してほしい。
  2. 仕組みを1つだけ選ぶ。 競う相手がいると燃える人、誰かに見られていると続く人、一人で数字を眺めたい人がいる。602人の試験で終了後まで差が残ったのは競争だったが、それはあくまで米国の会社員の結果だ。合わない仕組みを無理に選ぶより、続けられそうなものを1つ選んだほうがいい。
  3. 「ゲームが終わった後の形」を先に決めておく。 アプリのイベントやキャンペーンには終わりがある。終わった日から何を残すか(たとえば、毎日の歩数を見ることだけは続ける)を、始める日にメモしておく。研究では、仕組みを外した後に歩数が下がっていた。

アプリで続ける#

VITA Boardでは、記録やクエストを達成するとポイントがたまり、相棒が育つ。誰かと一緒にやりたい人向けには、ニックネームで参加する週間の「みんなでランキング」(対象は継続日数・7日間のクエスト達成率・7日間の歩数の合計で、体重は対象外)と、2人1組で「相手が今日記録したか」だけが見えるペア機能がある。

ただ、この記事で紹介した試験は、VITA Boardの仕組みを試したものではない。STEP UP試験のような「届かなければポイントが減る」仕組みも、VITA Boardにはない。食べすぎた日ほど記録をやめたくなるのを避けるため、減点は2026年9月に廃止している。研究の数字を、そのままVITA Boardの効果として読まないでほしい。

それでも、Q4の結果を見て「ゲームの仕組みは、使い続けられる形で置いておくのが大事だ」とは考えている。1日記録を忘れても、連続記録が2日以上続いていれば、手元の「おやすみ券」(毎週1枚、最大2枚まで)が次に開いたときに自動で使われ、連続記録は途切れない。→ VITA Boardを試す

誤解の墓場#

誤解実際は
ゲーム感覚のアプリなら、誰でも運動が習慣になる成人の試験のまとめ(歩数を調べた34試験)で、ゲームなしアプリに対する上乗せは1日489歩(著者は「ごくわずか」と評価)。602人の試験でも、終了後に差がはっきり残ったのは競争の群だけだった
ゲームの仕組みは子どもだましで、大人には効かない米国の成人602人(平均39歳)の試験で、競争・支え合い・協力のどれでも、ゲームの期間中は対照群より1日637〜920歩多かった
誤解の墓場

この記事について#

  • 更新日:2026年10月13日
  • 本記事はAI(Claude)が一次情報を確認しながら執筆し、運営者が公開しています。
  • 読んだ範囲:Mazeas ら(2022年)、Patel ら(2019年・STEP UP)、Patel ら(2017年・BE FIT)は、PubMed Central掲載の論文本文を読み、数字は原文から書き写しました。Nishi ら(2024年)は本文の主要部分を読みました(補足資料は未読)。Agarwal ら(2021年)は要旨のみを読んでいます。各試験の補足資料(eTable)は読んでいません。
  • 対象者:Mazeas らのまとめには9歳からの子ども・10代を含む試験が含まれます。それ以外の試験とまとめは成人が対象です。STEP UP試験は米国の大手企業の社員、BE FIT試験は米国の特定の地域研究に参加している家族で、日本の一般の人にそのまま当てはまるとは限りません。
  • 本記事は一般的な情報提供を目的としており、診断や治療の代わりにはなりません。運動を増やす前に、持病や痛みがある人は医師に相談してください。
  • 記事中に自社アプリの紹介があります。第三者の広告・アフィリエイトは含みません。

出典・参考

  • Mazeas A, Duclos M, Pereira B, Chalabaev A. Evaluating the Effectiveness of Gamification on Physical Activity: Systematic Review and Meta-analysis of Randomized Controlled Trials. Journal of Medical Internet Research. 2022;24(1):e26779. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8767479/
  • Nishi SK, et al. Effect of digital health applications with or without gamification on physical activity and cardiometabolic risk factors: a systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials. eClinicalMedicine. 2024;76:102798. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11701442/
  • Patel MS, et al. Effectiveness of Behaviorally Designed Gamification Interventions With Social Incentives for Increasing Physical Activity Among Overweight and Obese Adults Across the United States: The STEP UP Randomized Clinical Trial. JAMA Internal Medicine. 2019;179(12):1624-1632. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6735420/
  • Patel MS, et al. Effect of a Game-Based Intervention Designed to Enhance Social Incentives to Increase Physical Activity Among Families: The BE FIT Randomized Clinical Trial. JAMA Internal Medicine. 2017;177(11):1586-1593. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC5710273/
  • Agarwal AK, et al. Effect of Gamification With and Without Financial Incentives to Increase Physical Activity Among Veterans Classified as Having Obesity or Overweight: A Randomized Clinical Trial. JAMA Network Open. 2021;4(7):e2116256. https://doi.org/10.1001/jamanetworkopen.2021.16256


この記事を書いた人:ミミVITA Board 開発者

健康管理アプリ「VITA Board」の開発者。記事の数字は論文・厚生労働省等の公開情報を確認してから書いています。誤りに気づいた方はお問い合わせから教えてください。 運営者情報

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