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ごはんを抜いたら、最初の1週間で体重が2kg落ちた。「やっぱり糖質制限が一番効く」と思って続けたものの、1か月を過ぎたあたりから減り方が止まり、外食のたびに罪悪感が増えていく。結局やめて、「自分には糖質制限すら続かなかった」と落ち込む。
この流れでいちばんもったいないのは、「糖質制限が一番効くのに、続けられなかった自分が悪い」と結論してしまうことだ。1年単位で比べた研究では、糖質を減らす食事と脂質を減らす食事の体重の差は、1kgもなかった。
この記事の内容
30秒で読める比較表#
| よくある思い込み | 一次情報で確かめると | 言える範囲 |
|---|---|---|
| ① 糖質制限のほうが痩せる | 609人を12か月追った試験で、糖質を減らす群は−6.0kg、脂質を減らす群は−5.3kg。差の0.7kgは統計的に確かめられる差ではなかった | 1年後の体重に、はっきりした差は出ていない |
| ② 最初に早く落ちるのは脂肪が減っているから | 48本の試験のまとめでは、6か月時点でも差は1kgに満たず、12か月時点ではほぼ同じになった | 6か月の小さな差も1年で消える。最初の数週間の差や、その中身が脂肪かどうかは、この記事の資料からは言えない |
| ③ 体質(遺伝子・インスリン)で向き不向きが分かる | 試験の主な目的の1つだったが、遺伝子の型でも、糖をとったあとのインスリンの出方でも、どちらの食事で減りやすいかは分からなかった | 少なくともこの2つの検査で選べるという根拠はない |
| ④ 糖質さえ減らせばカロリーは関係ない | カロリー制限の指示は出していないのに、どちらの群も1日500〜600kcalほど食べる量が減っていた(本人の申告) | どちらの方法でも、結果として食べる量が減っていた |
| ⑤ 糖質はできるだけ少ないほうがいい | 日本人の食事摂取基準(2025年版)の炭水化物の目標量は、エネルギーの50〜65%。試験の糖質を減らす群は12か月時点で30% | 脂質を減らす群(48%)も下限をわずかに下回るが、糖質を減らす群は大きく外れている |
① 糖質制限のほうが痩せる?#
いちばん大きな手がかりは、米スタンフォード大学のGardnerらが2018年に米国医師会の学術誌JAMAに発表したDIETFITS試験だ。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | 糖尿病のない18〜50歳、BMI 28〜40の米国の成人609人(12か月まで続けた人は481人、79%) |
| 分け方 | くじ引きで「健康的な脂質を減らす食事」と「健康的な糖質を減らす食事」に分けた |
| 最初の8週間 | 脂質または糖質を1日20gまで減らす |
| その後 | 1日の量を週ごとに5〜15gずつ増やしていき、「この先ずっと続けられる」と本人が思う一番少ない量で止める |
| 指導 | 栄養士などによる指導が1年で22回(最初の8週間は毎週、その後は2週ごと、3週ごと、月1回と間隔をあける) |
| 12か月の体重 | 脂質を減らす群 −5.3kg、糖質を減らす群 −6.0kg |
| 群の差 | 0.7kg(95%信頼区間 −0.2〜1.6kg)。統計的に確かめられる差ではない |
0.7kgの差は、信頼区間に差がゼロの点が入っている。言いかえると「糖質を減らすほうが少し多く減った」とも「差はない」とも区別できない幅だ。
もう1つ見ておきたいのが、個人の幅だ。論文には、どちらの群でも1年の体重変化が約40kgの幅に広がり、30kg近く減った人から10kgほど増えた人までいた、と書かれている。平均の0.7kgの差より、同じ食事を割り当てられた人どうしの差のほうが、ずっと大きい。
② 最初に早く落ちるのは脂肪が減っているから?#
「最初は糖質制限のほうが早い」という実感には、裏づけになる数字がある。カナダのJohnstonらが2014年にJAMAに発表した分析は、名前のついたダイエット法を比べた48本の試験(7,286人)をまとめている。
| 時点 | 糖質を減らす食事(何もしない場合と比べて) | 脂質を減らす食事(同) |
|---|---|---|
| 6か月 | 8.73kg多く減った | 7.99kg多く減った |
| 12か月 | 7.25kg多く減った | 7.27kg多く減った |
6か月では糖質を減らす食事がわずかに上回っているが、差は1kgに満たず、幅も大きく重なっている。12か月ではほとんど同じだ。著者らは、どの食事法でも体重は減り、食事法どうしの差は小さかったとまとめ、続けられる食事を勧めるやり方を支持する結果だと書いている。
この分析でいちばん早い時点は6か月で、冒頭の「最初の1週間で2kg」のような数週間の差を直接比べたデータはない。最初に落ちた分のうち、どれだけが脂肪でどれだけが水分などかも、今回の2つの論文からは読み取れない。
③ 体質で向き不向きが分かる?#
DIETFITSは、実はこの疑問を確かめるために組まれた試験でもある。参加者を分ける前に、次の2つを調べていた。
- 脂質や糖質の代謝に関わるとされる遺伝子の型
- 糖をとった30分後に、インスリンがどれくらい出るか
「遺伝子の型が合っている人は合う食事で減りやすい」「インスリンが出やすい人は糖質を減らすほうが減りやすい」という仮説だったが、結果はどちらも当てはまらなかった。論文の結論は、遺伝子の型もインスリンの出方も、どちらの食事で減るかには関係していなかった、というものだ。
調べたのは、この2つの検査だけだ。ほかの体質の指標まで否定されたわけではない。ただ、「遺伝子検査であなたに合うダイエットが分かる」という宣伝を見たら、少なくともこの試験では確かめられなかった、と思い出してほしい。
④ 糖質さえ減らせばカロリーは関係ない?#
DIETFITSでは、どちらの群にもカロリーを制限する指示は出していなかった。それでも、本人の申告で見ると、どちらの群も1日あたり500〜600kcalほど食べる量が減っていた。
糖質を減らした人も脂質を減らした人も、結果として食べる量が減っていた。食事の申告は実際より少なめになりやすいので、数字そのものは差し引いて読む必要がある。
もう1つ、両方の群に共通して出されていた指示がある。
- 野菜をできるだけ多く食べる
- 加えた砂糖、精製した小麦粉(白いパンなど)、トランス脂肪酸を減らす
- 加工の少ない食材を選び、できるだけ家で調理する
2つの群の名前に付いている「健康的な」は、この共通の指示のことだ。糖質を減らす群も、糖質さえ抜けば何を食べてもいいとは言われていなかった。
⑤ 糖質はできるだけ少ないほうがいい?#
DIETFITSの12か月時点の食事は、次のとおりだった(本人の申告)。
| 群 | 炭水化物 | 脂質 | たんぱく質 |
|---|---|---|---|
| 脂質を減らす群 | エネルギーの48%(1日約213g) | 29%(約57g) | 21% |
| 糖質を減らす群 | 30%(約132g) | 45%(約86g) | 23% |
最初の8週間は1日20gまで減らしていた糖質を減らす群も、1年後には平均で1日130g前後まで戻していた(本人の申告)。「ずっと続けられる量」を本人に選ばせると、そのあたりに落ち着いた、ということになる。
日本人の食事摂取基準(2025年版)では、18歳以上の炭水化物の目標量はエネルギーの50〜65%、脂質は20〜30%とされている。脂質を減らす群の炭水化物48%も下限をわずかに下回るが、糖質を減らす群(炭水化物30%・脂質45%)は、どちらの目標量からも大きく外れている。なお基準は、範囲はおおむねの値だと注記している。
血液の検査値も、群によって動き方が違った。いわゆる悪玉のLDLコレステロールは、糖質を減らす群でわずかに上がり(+3.6mg/dL)、脂質を減らす群でははっきりした変化がなかった。中性脂肪は両群で下がり、下がり方は糖質を減らす群のほうが大きかった(−28.2と−10.0mg/dL)。善玉のHDLコレステロールも糖質を減らす群のほうが上がった。どちらにも良い面とそうでない面があり、糖質は少なければ少ないほど良い、とは言えない。
この試験が言っていないこと#
| 限界 | 何が分からないか |
|---|---|
| 対象は米国の成人 | 教育を受けた年数が長く、健康的な食材を手に入れやすい人が多かったと著者自身が書いている。日本の食生活にそのまま当てはまるかは分からない |
| 手厚い指導つき | 1年で22回の指導があった。1人で本やSNSを見ながらやる場合と同じ結果になるとは限らない |
| 糖尿病の人は除外 | 糖尿病の治療としての食事の話ではない |
| 食事は本人の申告 | 食べた量や割合は、実際とずれている可能性がある |
今日からできる3つの行動#
- 選ぶ基準を「1年続けられそうなほう」に置く。 ごはんやパンを減らすのがつらい人は、揚げ物や脂の多い肉を減らすほうから始めてもいい。1年後の差は、研究の上では1kgもない。
- どちらを選んでも、試験の共通ルールを先に入れる。 野菜を1品足す、甘い飲み物を1本減らす、白いパンを1回だけ別のものに替える。DIETFITSでは、両群ともこの指示を受けていた。
- 極端に減らす必要はない。減らすなら、戻す量を先に決めておく。 試験の1日20gは、毎週の指導つきで最初の8週間だけ行われた条件で、その後は少しずつ戻していた。持病がある人、特に糖尿病の薬を使っている人は、低血糖などのおそれがあるので、糖質を大きく減らす前に必ず主治医に相談する。
アプリで続ける#
VITA Boardでは、食事を写真やメニュー検索、手入力で記録すると、カロリーとたんぱく質・脂質・炭水化物の量が残る。食事の画面で日付を切り替えて、日ごとの脂質と炭水化物の量を何日か振り返れば、行動1の「どちらを減らすほうが楽か」を決める材料になる(写真の記録でAIの解析が使えないときは、栄養は検索か手入力で残す)。1日記録を忘れても、連続記録が2日以上続いていて券が残っていれば、毎週配られる「おやすみ券」が自動で使われて連続記録は途切れない(券は最大2枚まで持てる)。→ VITA Boardを試す
記事同士の会話:以前の記事「カロリー計算は『意味がない』のか」では、糖質制限を続けている人の調査や、やめるときの体重の動きを紹介した。今回のDIETFITSが示したのは、1年続けたときの体重が、脂質を減らす食事とほとんど同じだったということで、続くかどうかの話とは別だ。最初に落ちる分の中身については、今回の2つの論文からは何も言えない。
誤解の墓場#
| 誤解 | 実際は |
|---|---|
| 糖質制限がいちばん痩せる | 609人を12か月追った試験で、糖質を減らす群と脂質を減らす群の差は0.7kg(統計的に確かめられる差ではない)。48本の試験のまとめでも、12か月時点で7.25kgと7.27kgとほぼ同じだった |
| 遺伝子やインスリンの検査で、自分に合う食事が分かる | DIETFITSでは、調べた遺伝子の型もインスリンの出方も、どちらの食事で減るかと関係していなかった |
この記事について#
- 更新日:2026年10月9日
- 本記事はAI(Claude)が一次情報を確認しながら執筆し、運営者が公開しています。
- 読んだ範囲:DIETFITS試験(Gardnerら、2018年)はPMCで公開されている論文本文で、方法・結果・限界を確認しました。Johnstonら(2014年)はJAMAの論文ページの要旨で数値を確認しました。日本人の食事摂取基準(2025年版)は、厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)の策定ポイント」(2025年2月)の表で、炭水化物・脂質の目標量を確認しました。
- 本記事は一般的な情報提供を目的としており、診断や治療の代わりにはなりません。糖尿病・腎臓病などの持病がある人、薬を飲んでいる人は、食事の内容を大きく変える前に主治医に相談してください。
- 記事末尾に自社アプリの紹介があります。第三者の広告・アフィリエイトは含みません。
出典・参考
- Gardner CD, Trepanowski JF, Del Gobbo LC, et al. Effect of Low-Fat vs Low-Carbohydrate Diet on 12-Month Weight Loss in Overweight Adults and the Association With Genotype Pattern or Insulin Secretion: The DIETFITS Randomized Clinical Trial. JAMA. 2018;319(7):667-679. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC5839290/
- Johnston BC, Kanters S, Bandayrel K, et al. Comparison of weight loss among named diet programs in overweight and obese adults: a meta-analysis. JAMA. 2014;312(9):923-933. https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/1900510
- 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)の策定ポイント」2025年2月 https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/001734207.pdf