特定技能の介護には上限が2つあります。国全体の受入れ見込数と、事業所ごとの人数枠です。2026-09-03時点で、国の枠は令和6年度からの5年間で13万5000人。事業所の枠は、その事業所の常勤介護職員の総数までです。日本人の常勤介護職員が10人なら、特定技能の外国人も10人まで。人数を決めているのは国ではなく自分の施設です。内定を出してから足りないと気づくのが一番痛いので、募集より先に数えます。
この記事の内容
- 上限は2階層ある。施設を縛るのは国の枠ではなく事業所の枠
- 事業所枠の数え方。分母に入る職員と入らない職員
- 事業所単位で数える。法人単位ではない
- 申請日だけでなく、雇用している間ずっと満たす
- 2026年に押さえておく制度の現在地4つ
- 1. 協議会への加入は受け入れ前に済ませる
- 2. 訪問系サービスは2025年4月から条件付きで従事できる
- 3. 介護に特定技能2号はない。5年の出口は介護福祉士
- 4. 育成就労への移行が2027年に控えている
- 受け入れまでの準備手順9ステップ
- 配属後につまずく5つ
- 1. 人員配置基準への算入を取り違える
- 2. 夜勤の入れ方
- 3. 届出の抜け
- 4. 支援の実施記録が空欄
- 5. 職員説明を省いて現場が荒れる
- 受け入れ前チェックリスト
- 職員説明にそのまま使える文例3本
- まとめ
- よくある質問
- 出典
上限は2階層ある。施設を縛るのは国の枠ではなく事業所の枠#
| 区分 | 上限の中身 | 施設への効き方 |
|---|---|---|
| 国の枠 | 令和6年度からの5年間で13万5000人 | 平時は効かない。上限に近づいた分野で新規受入れの停止措置が取られる仕組み |
| 事業所の枠 | 常勤の介護職員の総数まで | 毎回効く。採用できる人数はここで決まる |
国の枠は分野別運用方針で決まっています。介護は令和6年度からの5年間で13万5000人。前の5年間の6万人から倍以上に広がりました。ニュースで上限という言葉を見たときは、たいていこちらの数字です。ただ、この数字を見ても自分の施設の採用計画は立てられません。
結論。実務で効く上限は事業所の枠だけです。募集要項を書く前に、常勤介護職員の名簿を開いて人数を数えてください。
事業所枠の数え方。分母に入る職員と入らない職員#
| 職員の区分 | 枠の分母 |
|---|---|
| 日本人の常勤介護職員 | 入る |
| 永住者・定住者・日本人の配偶者等 | 入る |
| 在留資格の介護(介護福祉士) | 入る |
| EPA介護福祉士(資格取得後) | 入る |
| 特定技能1号の外国人 | 入らない |
| 技能実習生・EPA候補者 | 入らない |
| 非常勤・パートの介護職員 | 入らない |
| 看護職員・相談員・機能訓練指導員・事務 | 入らない |
ユニット型特養で考えます。常勤の介護職員18人、パート12人、看護職員4人、相談員2人。この施設が受け入れられる特定技能の上限は18人です。パートと看護職員は何人いても分母を増やしません。
注意。常勤換算数ではありません。介護の実務では15.6のような小数で数える場面が多いので混同しますが、ここで数えるのは常勤で介護に従事している職員の実人数です。
事業所単位で数える。法人単位ではない#
指定を受けた事業所ごとに数えます。同一法人でも、特養と併設の通所介護は別々です。特養で枠が余っていても、デイの常勤介護職員が3人ならデイは3人まで。逆に、デイに受け入れた人を特養の枠から差し引く必要もありません。
申請日だけでなく、雇用している間ずっと満たす#
在留資格の申請時点で満たせば終わり、ではありません。退職が続いて常勤介護職員が減れば超過の状態になります。私の施設では、常勤の介護職員数を毎月1日に数えて支援記録の表紙に書く運用にしました。数えるのに5分もかかりませんし、辞める人が出た月に気づけます。
2026年に押さえておく制度の現在地4つ#
1. 協議会への加入は受け入れ前に済ませる#
介護分野における特定技能協議会への加入が要件です。以前は受入れ後4か月以内でよかったのですが、現在は特定技能外国人を受け入れる前に加入していることが必要です。入会金や年会費はかかりません。ただし手続きに日数がかかるので、在留資格の申請と並行ではなく先に片づけます。
2. 訪問系サービスは2025年4月から条件付きで従事できる#
長く訪問介護等は対象外でしたが、2025年4月から一定の要件のもとで従事できるようになりました。要件は、一定期間の実務経験、訪問系サービスの業務内容やハラスメント対応を含む研修の受講、キャリアアップ計画の作成、当初の同行訪問などです。施設系より整える書類が多いので、訪問で使う予定なら準備期間を長めに見ます。運用の細部は都道府県・市町村に確認してください。
3. 介護に特定技能2号はない。5年の出口は介護福祉士#
特定技能1号の在留期間は通算5年が上限で、介護分野に2号はありません。5年を超えて働き続けるには、介護福祉士に合格して在留資格の介護に変更する道が本線です。つまり受け入れた日から、5年後の受験までの育成計画が要ります。人数だけ増やして育成を設計しないと、5年目に一斉に入れ替わる施設になります。
4. 育成就労への移行が2027年に控えている#
技能実習は育成就労へ移行する予定で、施行は2027年が見込まれています。技能実習で受け入れている施設は、移行後の要件と特定技能への接続を今の段階から確認しておくと安全です。
| 制度 | 在留期間の目安 | 訪問系 | 人数の上限 |
|---|---|---|---|
| 特定技能1号 | 通算5年 | 条件付きで可 | 常勤介護職員の総数まで |
| 技能実習 | 最長5年(育成就労へ移行予定) | 条件付きで可 | 常勤介護職員の総数まで |
| EPA | 候補者は原則4年 | 条件付きで可 | 受入れ調整機関の枠 |
| 在留資格の介護 | 更新の回数に上限なし | 可 | 人数の上限なし |
最後の行だけ上限なしです。介護福祉士を取れば人数の縛りから外れます。育成投資の行き先はここだと考えています。
受け入れまでの準備手順9ステップ#
着手から配属まで、順調でも4か月から6か月かかります。配属したい月から逆算します。
- 常勤介護職員の実人数を数え、受け入れ可能な上限を確定する。ここを飛ばさない
- 受け入れ人数と配属先(ユニット、フロア、シフト帯)を決める。誰が指導するかまで決める
- 就業規則と賃金表を確認し、同じ経験年数の日本人職員と同等以上の報酬になるか照合する
- 介護分野における特定技能協議会に加入する
- 支援を自社で行うか登録支援機関に委託するかを決める。委託なら複数社の見積もりを取り、支援の実施記録の様式まで見せてもらう
- 候補者を選ぶ。介護技能評価試験と介護日本語評価試験の合格、介護福祉士養成施設の修了、技能実習2号の良好な修了など、どのルートで要件を満たすのかを書面で確認する
- 1号特定技能外国人支援計画を作る。義務的支援10項目を実施できる体制を書面にする
- 在留資格認定証明書の交付申請、または在留資格変更許可申請を行う。審査に1か月から2か月を見込む
- 住居、生活オリエンテーション、銀行口座、携帯電話、通勤経路の確認を配属日前に終える
注意。手順3の同等報酬は審査で必ず見られます。日本人職員と比較できる賃金表の提示を求められるので、処遇改善加算の配分ルールとの整合も一緒に確認してください。加算の取り分の計算は、関連記事の 介護従事者処遇改善加算は職種別にいくら上がる?取り分の計算手順 で手順にしています。
配属後につまずく5つ#
1. 人員配置基準への算入を取り違える#
特定技能1号は就労開始時から人員配置基準に算入できます。技能実習やEPA候補者は取扱いが異なるため、複数の制度で受け入れている施設ほど混同します。同じ外国人職員でも在留資格ごとに扱いが違う、と覚えてください。
2. 夜勤の入れ方#
特定技能に、夜勤を禁じる法令上の制限はありません。ただし制限がないことと、いきなり1人夜勤に入れてよいことは別です。19時の申し送りで方言と略語が飛び交う中、初回の夜勤で急変対応まで求めるのは、日本人の新人にもやらせません。独り立ちの判定は在留資格ではなく到達度で決めます。判定表は関連記事の 介護の新人はいつ独り立ち?管理者が使う5段階の判定表と面談文例 をそのまま流用できます。
3. 届出の抜け#
受け入れ機関には定期届出と随時届出があります。定期届出は四半期ごと、随時届出は事由が生じてから14日以内です。退職、住居の変更、支援担当者の変更といった日常の出来事が届出の対象になります。担当者を決めて、シフト作成と同じカレンダーに載せてください。
4. 支援の実施記録が空欄#
登録支援機関に委託しても、受け入れ機関としての責任は消えません。相談対応の記録が半年で1行、という状態は確認の場で必ず指摘されます。書き方は下の対比を見てください。
8月 特に問題なし。相談なし。
8月12日14時、定期面談30分。夜勤明けに睡眠が取れていないとの相談あり。本人は近隣の騒音が原因と説明。9月1日までに管理会社へ連絡し、次回面談9月9日に結果を確認する。
5. 職員説明を省いて現場が荒れる#
一番多い失敗です。受け入れは決裁が下りた時点で職員に伝えます。伝える内容は、人数、配属先、指導担当、日本人職員の負担がどう変わるかの4つ。この4つを言わずに配属日を迎えると、指導担当だけが疲弊します。
受け入れ前チェックリスト#
チェックはこの端末に保存されます。印刷して現場に貼る場合はそのまま印刷してください。
職員説明にそのまま使える文例3本#
配属の1か月前、朝の申し送りの後に5分もらって話す想定で作ってあります。
- 来月から特定技能の在留資格で1名、2階フロアに配属します。受け入れの上限はこの事業所の常勤介護職員数までと決まっていて、今回は18人枠のうちの1人目です。人手を膨らませる受け入れではなく、来年度に出る欠員を前倒しで埋める採用です。
- 指導担当は◯◯さんにお願いします。担当1人に背負わせないため、日勤帯の記録確認は主任が同席します。負担が増えたと感じた時点で、我慢せずに私へ言ってください。手順を組み直します。
- 日本語で伝わらない場面は必ず出ます。そのときはゆっくり言い直すより、短く言い切って動作で示してください。伝わったかどうかの確認は、うなずきではなく本人に手順を言ってもらう形で取ります。
まとめ#
- 上限は2階層。国の枠は令和6年度からの5年間で13万5000人、事業所の枠は常勤介護職員の総数まで
- 実務で効くのは事業所の枠だけ。常勤の実人数で数え、常勤換算や法人合算で数えない
- パート・看護職員・相談員、そして特定技能や技能実習の外国人は分母に入らない
- 協議会への加入は受け入れ前。訪問系は2025年4月から条件付きで可能
- 介護に特定技能2号はない。5年の出口は介護福祉士と在留資格の介護
- 準備は4か月から6か月。配属日から逆算する
次の一歩は1つだけです。今日の勤務表を開いて、常勤の介護職員が何人いるか数えてください。その数字が、あなたの施設の受け入れ上限です。制度の細部は改正が続く分野なので、申請前に出入国在留管理庁と自治体の最新の案内で必ず確認してください。
よくある質問#
上限の人数は常勤換算で数えてよいですか。
常勤換算ではありません。常勤として介護に従事している職員の実人数で数えます。常勤換算15.6の事業所でも、常勤の介護職員が12人なら上限は12人です。
パート職員が多い事業所は不利になりますか。
受け入れ枠の上では不利になります。パートは何人いても分母に入りません。パート中心の事業所で人数を増やしたい場合は、常勤化を先に進めるか、事業所単位ごとに枠を確認する形になります。
受け入れた後に日本人職員が辞めて、上限を割ったらどうなりますか。
基準は雇用している間ずっと満たす必要があるため、超過の状態になります。すぐに解雇という話ではありませんが、採用計画の見直しと補充が必要です。個別の扱いは地方出入国在留管理局に確認してください。
訪問介護でも特定技能の職員を使えますか。
2025年4月から一定の要件のもとで従事できます。実務経験、所定の研修の受講、キャリアアップ計画の作成、当初の同行訪問などが条件です。施設系より準備が多いので早めに着手してください。
5年を超えて働いてもらうにはどうすればよいですか。
介護分野に特定技能2号はないため、介護福祉士に合格して在留資格の介護へ変更するのが本線です。実務経験3年と実務者研修が受験の要件になるので、入職1年目から研修の受講時期を組んでおきます。
登録支援機関への委託は必須ですか。
必須ではありません。支援体制の要件を自社で満たせるなら自社支援も可能です。ただし義務的支援10項目を継続して実施し記録に残す必要があるため、担当者を専任で置けるかで判断してください。
出典#
- 法務省・厚生労働省ほか 介護分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針(令和6年3月29日閣議決定)
- 出入国在留管理庁 特定技能運用要領、介護分野における特定技能の基準について(分野別運用要領)
- 厚生労働省 介護分野における特定技能外国人の受入れについて
- 厚生労働省 介護分野における特定技能協議会 加入手続きの案内
- 厚生労働省 外国人介護人材の訪問系サービス等への従事に関する要件(令和7年4月適用)
- 出入国在留管理庁 特定技能所属機関による届出(定期届出・随時届出)
- ※いずれも2026-09-03時点で公表されている資料に基づきます。制度改正が続く分野のため、申請前に最新の公表資料を確認してください。