結論から言います(本編約7,200字・単位数早見表とチェックリスト付き)
「看取り加算って、結局いくらもらえるんですか」。研修でも申し送りでも、いちばんよく聞かれるのはこの質問です。ですが、金額だけを覚えて終わると、この加算がいちばん伝えたいことを取りこぼします。
この記事を読むと、特養・特定施設・グループホームで単位数がどう違うか、加算をもらうために施設が満たすべき条件、そして「なぜ入所時の説明と同意がここまで重視されるのか」がわかります。
※この記事の「看取り介護加算」=回復の見込みがないと医師に診断された利用者に、施設が体制を整えて看取りケアを行った場合に算定できる介護報酬の加算のことです。
「結局いくらなんですか」に、先に数字で答えます
特別養護老人ホーム(特養)の看取り介護加算は、死亡日からの期間を4段階に分けて算定します。死亡日45日前から31日前までは72単位、30日前から4日前までは144単位、死亡日前々日・前日は680〜780単位、死亡日当日は1,280〜1,580単位です。
680〜780単位、1,280〜1,580単位と幅があるのは、加算ⅠとⅡで金額が変わるからです。まずは特養の単位数を一覧で見てください。
| 期間 | 看取り介護加算Ⅰ | 看取り介護加算Ⅱ |
|---|---|---|
| 死亡日45日前〜31日前 | 72単位/日 | 72単位/日 |
| 死亡日30日前〜4日前 | 144単位/日 | 144単位/日 |
| 死亡日前々日・前日 | 680単位/日 | 780単位/日 |
| 死亡日当日 | 1,280単位/日 | 1,580単位/日 |
なお、1単位あたりの金額は地域区分によって異なるため(概ね10〜11.4円程度)、実際の請求額は施設が所在する地域区分で確認する必要があります。
死亡日に近づくほど単位数が跳ね上がっていく設計そのものが、看取り期の後半ほど手厚い体制が必要になるという制度側の判断を表しています。では、加算ⅠとⅡを分けているのは何か。次で見ていきます。
念のため補足します。「死亡日45日前」といった区分は、あくまで介護報酬を計算するための請求上の期間であり、余命の見通しを示すものではありません。実際に何日前から手厚くなるかは、一人ひとりの状態次第です。
加算Ⅰと加算Ⅱ、金額の差を分けているのは「体制」です
要するにこう書いてあります。加算Ⅰは、常勤看護師1名以上の配置と24時間の連絡体制、看取りに関する指針の整備、入所時の説明と同意、職員研修の実施、個室・静養室の利用可能な体制が条件です。加算Ⅱはこれに加えて、配置医師と施設の間で病状の情報共有・連絡方法を取り決めていること、複数医師の配置または協力医療機関との連携によって24時間対応できる体制が確保されていることが上乗せされます。
複数名の配置医師を配置し、又は配置医師と協力医療機関の医師が連携することにより、施設の求めに応じて24時間対応できる体制を確保していること(算定要件の趣旨。出典は本文末)
だから現場ではこうなります。加算Ⅱが取れている施設は、「夜間に医師へすぐつながる」体制まで制度上裏付けられている、ということです。金額の差は、体制の厚みの差でもあります。
では、対象になる施設とならない施設はどこで分かれるのか。次で整理します。
加算がある施設とない施設、分かれ目はどこにあるか
看取り介護加算の対象は、特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設・地域密着型を含む)、特定施設入居者生活介護(地域密着型を含む)、認知症グループホーム(認知症対応型共同生活介護)です。グループホームには加算Ⅱの設定自体がありません。
一方、介護老人保健施設・介護医療院・介護療養型医療施設・短期入所療養介護では、看取り介護加算ではなく「ターミナルケア加算」という別制度が対応します。同じ「看取り」という言葉でも、制度上は名前も要件も違います。
なお2024年度の介護報酬改定では、短期入所生活介護や訪問入浴介護など従来は対象外だったサービスにも、看取り期の対応を評価する「看取り連携体制加算」が新設されました。看取りへの評価が、入所系の施設だけでなく在宅・通所寄りのサービスにも広がってきているのが、直近の制度の方向性です。
ここでよくある誤解を整理しておきます。
| よくある誤解 | 実際の制度 |
|---|---|
| 看取り加算は、看取りをした施設ならどこでももらえる | 対象は特養・特定施設・グループホームなど限られたサービス種別のみ。老健等は「ターミナルケア加算」という別制度 |
| 看取り加算=医療的な処置に対する評価 | 看取り介護加算は日常生活の介護に対する評価。点滴・経管栄養等の医療処置はターミナルケア加算の領域 |
| 一度看取りの説明をすれば、あとは金額の話だけ | 状態が変化するたびに話し合いを繰り返し、文書にまとめ続けることが要件そのもの |
対象施設の外側にいる人にはピンとこない制度に見えるかもしれません。ですが、この加算の本体は「金額」ではなく次の話にあります。
「金額の話」の奥にある、本当の要件
要するにこう書いてあります。この加算を取るために施設がしなければならないのは、看取りに関する指針を定めて入所時に説明し同意を得ること、医師・看護師・介護支援専門員など多職種で共同作成した計画を説明し同意を得ること、そして状況の変化に応じて話し合いを繰り返し、その都度文書にまとめることです。話し合いの参加者には生活相談員を明記することも要件に含まれます。
入所者に対し、医師、看護師、介護支援専門員その他の職種の者が共同して作成した介護に係る計画について、当該入所者又はその家族に対して説明し、同意を得ていること(算定要件の趣旨。出典は本文末)
だから現場ではこうなります。この加算は「お金をもらうための書類仕事」ではなく、説明と同意を、施設の仕組みとしてやり続けているかどうかを測る制度だということです。
では、この「同意」がなぜ現場で一番の不安になるのか。次は現場の実感から見ていきます。
現場の実感——「同意が間に合わない」という不安の正体
看取りの説明と同意の取得が、現場では「間に合わない」と感じられる瞬間があります。施設ケアマネとして、状態の急変後に慌てて家族への説明の場を設けたことが、正直あります。加算の要件を読み返すたびに思うのは、これは書類のための書類ではなく、「同意は一度で終わらせず、状態が変わるたびにやり直す」という前提そのものが、現場の「間に合わない」不安への処方箋になっているということです。
同意を一度きりの手続きにしないこと。これは加算の話であると同時に、ACP(人生会議)の考え方そのものでもあります。
看取り加算とACP(人生会議)は、同じ発想でできている
厚生労働省のガイドラインは、ACPを「一度決めて終わる書類」ではなく、「本人の意思が変わることを前提に繰り返す対話のプロセス」として位置づけています。看取り介護加算の要件にある「話し合いを繰り返し文書にまとめる」という部分は、このACPの考え方をそのまま制度に落とし込んだものと読めます。
つまり、加算の要件を先に理解しておくことは、ACPを施設の日常業務として回すための土台にもなります。
制度の理屈がわかったところで、実際に現場で何が変わるのか、場面で見ていきます。
加算がある施設で、現場は何が変わるか(場面で見る)
請求そのものは相談員や管理者の仕事です。ですが、要件の中身は現場の動き方に直結します。加算の有無にかかわらず、看取り期の現場では次のようなことが起きます。
個室・静養室の確保について。多床室を希望するご本人が看取り期に入っても、個室へ強制的に移す必要はなく、希望に応じて多床室のまま看取り介護を行うことも認められています。ただし、個室が「利用可能な体制」であることは常に確保しておく必要があります。
申し送り・記録について。話し合いのたびに文書化する要件があるため、看取り期の申し送りには「今日の話し合い内容」が増えます。夜勤明けの記録量が増えるのは、要件を守っている証拠でもあります。
生活相談員の同席について。話し合いの参加者に生活相談員を明記する要件があるため、家族説明の場に相談員が同席する体制が制度上求められています。相談員一人の判断で進める場面ではない、ということです。
制度上の要件がわかったら、次は自分の施設が今どうなっているかを確認するステップです。
確認ステップ——自分の施設は今どうなっているか
- 看取りに関する指針は文書化され、入所時に説明・同意を得ているか
- 話し合いの参加者に生活相談員が明記されているか
- 24時間の連絡体制(看護職員または医師)は、誰が今日の当番か分かる状態か
- 個室・静養室は、希望があれば使える体制になっているか
- 直近の看取り事例で、状態変化のたびに話し合いを記録し直しているか
チェックが埋まらなかった項目があれば、それは「加算が取れるか取れないか」ではなく、「同意のやり直しが仕組みになっているか」を見直すきっかけになります。
ケース別に見る算定の分かれ目(ある施設の話・特定不能に加工済み)
ある特養の話。加算Ⅰのみを算定している施設です。配置医師は1名で、夜間不在時は地域の当番医と連携する体制を取っています。加算Ⅱが求める「複数医師または協力医療機関との24時間連携」の要件までは満たしていないため、Ⅰの単位数にとどまっています。
ある特定施設の話。看護職員が夜勤・宿直で必ず配置されているため、加算Ⅱを算定しています。特定施設のⅡは特養のⅡより上乗せ額が大きく、夜間看護体制を維持するコストが、そのまま単位数の差として表れています。
あるグループホームの話。制度上グループホームには加算Ⅱの設定自体がないため、Ⅰの単位数が上限です。体制の厚みよりも、少人数ユニットでの個別対応の質で評価する設計になっています。
制度の理屈と現場の実態がつながったところで、最後によくある質問に答えます。
よくある質問(FAQ)
Q1. 看取り介護加算は、どの利用者に対して算定できますか。
A1. 医師が医学的知見に基づき回復の見込みがないと診断し、多職種で作成した介護に係る計画に本人・家族が同意した利用者が対象です。
Q2. 看取り介護加算と、ターミナルケア加算は同じものですか。
A2. 違います。看取り介護加算は特養・特定施設・グループホームなど介護保険サービスの日常生活ケアに対する評価です。点滴・経管栄養・人工呼吸器などの医療処置を中心とするターミナルケア加算(老健・介護医療院等が対象)とは別の制度です。
Q3. 単位数の「1単位」は何円ですか。
A3. 地域区分によって1単位あたりの単価が異なります(概ね10〜11.4円程度)。実際の請求額は、施設が所在する地域区分で確認する必要があります。
Q4. 加算ⅠとⅡ、どちらを算定するかは施設が選べるのですか。
A4. 選ぶというより、要件を満たしているかどうかで決まります。特にⅡは医師の複数配置や24時間対応体制など、体制面のハードルが上がります。
Q5. 家族が明細で「看取り加算」という項目を見たら、何を確認すればよいですか。
A5. 金額そのものより、「看取りに関する指針の説明を受けたか」「話し合いの記録が残っているか」を確認する材料として捉えると、施設側の体制を知る手がかりになります。
Q6. 看取り介護加算は、2026年時点でも同じ単位数ですか。
A6. 本記事の単位数は2021年度介護報酬改定以降の基準に基づく数値です。2024年度改定でも大枠は維持されていますが、介護報酬は原則3年ごとに見直されます(次回改定は2027年度が見込まれています)。最新の告示内容は、必ず厚生労働省の公表資料で確認してください。
Q7. DNAR(心肺蘇生を望まない意思表示)と、看取り介護加算は関係がありますか。
A7. 加算の算定要件そのものにDNARの取り決めはありません。DNARは医師と本人・家族の話し合いで決める別の取り決めであり、看取り介護加算は「看取り期の生活支援体制」を評価する制度です。定義や運用の詳細は、主治医・施設の看取り指針の範囲で確認するものとされています。
要点サマリー
- 看取り介護加算は特養・特定施設・グループホームなど対象サービスが限られる(老健等はターミナルケア加算という別制度)
- 特養の単位数は死亡日からの期間で4段階(72/144/680〜780/1,280〜1,580単位)
- 加算ⅠとⅡの差は、24時間の医師対応体制など「体制の厚み」の差
- 要件の本体は「入所時の説明と同意」「変化のたびの話し合いと文書化」——ACPと同じ発想でできている
- 金額を確認する前に、施設の看取り指針と同意プロセスが仕組みとして回っているかを確認する
もっと詳しく知りたい方へ
- 無料note『そもそも看取りとは』:看取りという言葉の基本を整理した基幹noteです。
- 無料note『看取りになったら何が起こるのか』:施設看取りの実際の流れを解説しています。
- 無料note『ACPとは何か』:加算の要件にも通じる「繰り返す対話」の考え方を整理しています。
出典(一次ソース・二次資料突合済み)
看取り介護加算の単位数・算定要件(特養/特定施設/グループホーム別、2021年度介護報酬改定以降の基準):けあタスケル「【2024年改定対応】看取り介護加算とは?」 https://caretasukeru.com/care-insurance-law/calculation-requirements/add-on-requirements/3328/ / ツクイスタッフ介護ペディア「【2025年度改定対応】看取り介護加算とは?」 https://corp.tsukui-staff.net/kenshu/pedia/caregiving-addition (両資料の単位数・要件を突合し一致を確認。原本は厚生労働省告示・介護報酬の算定構造による)
看取り連携体制加算(2024年度新設・短期入所生活介護/訪問入浴介護等):介護のコミミ「看取り連携体制加算とは?」 https://comimi.jp/archives/column/kasan121
ACP・厚労省ガイドラインの考え方:厚生労働省「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」 https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-10802000-Iseikyoku-Shidouka/0000197701.pdf
一次ソース(厚生労働省):「看取り介護加算」は介護報酬上の正式な加算名で、原典は厚生労働大臣が定める告示「指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準」別表・指定施設サービス等介護給付費単位数表です。改定の全体像は厚生労働省「令和6年度介護報酬改定について」、告示の改正内容は社会保障審議会介護給付費分科会(第239回)諮問書別紙「令和6年度介護報酬改定 介護報酬の見直し案」で公開されています。
2024年度新設の「看取り連携体制加算」について:上記の諮問書別紙により、訪問入浴介護における看取り連携体制加算は64単位(死亡日および死亡日以前30日以下について1回につき算定)として新設されたことを確認しています。
※本記事に掲載した特養・特定施設・グループホームの単位数は、上記の告示を解説した業界専門資料2件を突合して一致を確認した数値です。請求実務に用いる際は、必ず厚生労働省が公開する告示原文および各自治体の通知でご確認ください。介護報酬は原則3年ごとに改定されます(次回は2027年度が見込まれています)。