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▼結論から言います(本編約6,300字・チェックリスト付き)

看取りとは、回復の見込みが少なくなった方に対して、病気を治すための医療から、苦痛を和らげながらその人らしい最期を支えるケアへ目的を切り替え、最期の瞬間まで生活の支援を続けることです。「治療をやめて、何もしなくなること」ではありません。むしろ、食事・排泄・清潔・安楽な姿勢・口腔ケア・環境づくり・家族への支援など、介護の仕事そのものが、目的を変えて最期まで続きます。

この記事では、「看取り」という言葉の正確な意味、延命治療・緩和ケア・ACP(人生会議)との違い、看取りが始まるタイミング、家族と介護士がそれぞれ今日から確認できることを、公的統計と厚生労働省の資料に基づいて整理します。読み終えたとき、「看取りの方針で」と言われた場面で、何が起きていて、これから何を確認すればいいかが分かる状態をゴールにします。

▼看取りの基本——いつから始まり、何を目的にするケアか

看取りは、ある日突然「今日から看取りです」と切り替わるものではありません。一般的には、主治医が医学的な状態(回復の可能性、食事や意識の状態など)を踏まえて「回復を目指す治療から、苦痛の緩和を中心とするケアへ移る時期」と判断し、本人(意思表示が難しい場合は家族)に説明し、合意を得たうえで始まります。厚生労働省のガイドラインでも、本人の意思を軸に、家族と医療・ケアチームが話し合って決めるプロセスとして位置づけられています。

目的は大きく2つに整理できます。1つ目は、痛みや息苦しさ、不安などの苦痛をできる限り和らげること。2つ目は、その人がそれまで大切にしてきた生活の形(好きな時間の過ごし方、面会や会話、住み慣れた環境)を、できる範囲で最期まで支えることです。「治す」から「支える」へ目的が変わるのであって、ケアの手を止めるという意味ではありません。

▼混同されやすい4つの言葉を区別する

看取りの説明が伝わりにくい最大の理由は、似た言葉が整理されずに使われることです。ここで一度、4つの言葉を区別します。

第一に、看取り(看取りケア・看取り介護)です。回復が難しい状態になった方に、無理に生命を引き延ばす処置は行わず、苦痛や不快をできる限り和らげながら、最期までその人らしい生活を支えることを指します。

第二に、延命治療です。病気を治すことではなく、生命を維持することを主な目的とする医療行為で、人工呼吸器、心肺蘇生、人工的な水分・栄養補給などが例として挙げられます。「する・しない」に一律の正解はなく、本人の意思を軸に、家族と医療・ケアチームが繰り返し話し合って決めるものとされています。どの処置を選ぶか・選ばないかの判断は、必ず主治医の説明と本人・家族の意思に基づいて行われるものであり、この記事では選択肢の存在と考え方の枠組みまでを扱います。

第三に、緩和ケアです。痛みやつらさ(身体的なものだけでなく、気持ちの面や生活面のつらさも含む)を和らげるケアで、「終末期だけのもの」と誤解されがちですが、本来はもっと早い段階、たとえば診断直後から始まるケアの考え方です。

第四に、ACP(アドバンス・ケア・プランニング、愛称「人生会議」)です。もしものときにどのような医療・ケアを望むかを、本人が家族や医療・ケアチームと前もって、繰り返し話し合うプロセスを指します。1枚の書類を作って終わりではなく、本人の気持ちが変わるたびに話し合い直すことが前提とされています。

この4つを区別できると、「看取りの方針になった」と説明を受けた場面でも、「治療をやめること」ではなく「目的を切り替えて支え続けること」だと理解できます。

▼よくある誤解を解く——「何もしない」ではなく「仕事の中身が変わる」

「看取り」と聞くと、「もう何もしてもらえないのか」という不安につながりやすい言葉です。しかし実際に看取り期に入ると、観察の頻度はむしろ増えることが少なくありません。呼吸の様子、顔色、口の中の状態、体位による安楽さ、家族との時間の持ち方など、確認する項目は多岐にわたります。

一次情報として、私自身が施設ケアマネとして経験してきたことでもあります。ご家族に「これから看取りの方針で」とお伝えする場面で、「看取りというのは、これから何をしてもらえるのか、何をしてもらえなくなるのか」を、こちらが十分に言葉にできていないと感じた瞬間が何度もありました。制度上正しい説明はできていても、家族の不安に届く言葉になっていたかというと、そうではなかったと振り返ります。だからこそ、この記事のような「言葉の整理」が、家族にとっても介護・看護の現場にとっても必要だと考えています。

▼看取りが必要とされる場面は、これから確実に増えていく

看取りが「一部の施設だけの特別な話」ではなくなっている背景を、3つの公的統計で確認します(出典は本文末)。

1つ目。2024年に日本で亡くなった方は160万5,378人で過去最多でした。国の推計では死亡数は2040年頃まで増加を続け、ピーク時には年間約170万人に達する見込みです。

2つ目。亡くなる場所が病院から介護の現場へ移り続けています。病院で亡くなる方の割合は2000年の81.0%から2023年には65.7%へ下がり、老人ホーム等の施設で亡くなる方は2.4%から15.5%へ増加、自宅も13.9%から17.0%へ増えています。

3つ目。それにもかかわらず、ACP(人生会議)を「よく知っている」一般国民は5.9%にとどまり、「知らない」と答えた人が72.1%にのぼります。人生の最終段階について考えたことがある人自体は約6割いるのに、言葉と手段が届いていないのが現状です。

この3つを重ねると、看取りの件数は増え、場所は介護施設へ移り、それでも社会の理解はまだ追いついていない、という構図が見えてきます。だからこそ、家族にとっても介護・看護の現場にとっても、正確な言葉を持つことに価値があります。

▼確認ステップ——家族が今日からできること

看取りの方針を伝えられた家族が、まず確認しておきたいことを4つの手順に整理します。

第一に、施設または医療機関に「看取りに関する指針・説明資料」があるか確認することです。多くの施設には看取りケアについての説明文書が用意されています。

第二に、本人の意思がどこまで確認されているかを確認することです。本人が意思を伝えられる状態であれば、ACPとして、今後望むケアについて話し合う機会を持てないか相談してみてください。

第三に、延命治療に関する選択肢について、主治医から直接説明を受ける機会を作ることです。何を選ぶかの判断そのものは、施設ではなく主治医の説明と家族の話し合いに基づいて行われます。

第四に、面会や付き添いなど、最期の時間の過ごし方について、施設に希望を伝えることです。看取り期は、家族が一緒に過ごせる時間を大切にする施設が多く、要望は早めに伝えるほど調整しやすくなります。

▼確認ステップ——介護士・職員が今日からできること

現場の職員にとっても、看取りは「経験のある人だけが分かっていればいい」ものではありません。今日から確認できることを、経験年数別に整理します。

新人・若手の職員であれば、自施設の「看取り介護指針」がどこに保管されているかを確認してください。中身を読み込むのは後からでも構いません。「どこにあるかを知っている」だけで、看取り期の指示が出たときの動き方が変わります。

中堅の職員であれば、この記事で整理した4つの言葉(看取り・延命治療・緩和ケア・ACP)を、自分の言葉で3行にまとめてメモしてみてください。家族対応で言葉に詰まる場面の多くは、知識不足ではなく、知っている内容を自分の言葉に翻訳できていないことから起きます。

リーダー・主任クラスであれば、直近の看取りケースについて、「本人の希望を、いつ・誰が・どこまで確認できていたか」を1件だけ振り返ってみてください。責任を問うためではなく、次のケースで話し合いを始めるタイミングを早めるための材料にします。

▼ケース別に見る看取りの流れ(創作事例・特定不能に加工済み)

ケース1:ある特別養護老人ホームでの例です。80代の入居者の状態が徐々に低下し、主治医から「積極的な治療より、苦痛を和らげるケアを中心にしていく時期」と説明を受けました。家族は当初「何もしてもらえなくなるのか」と不安を口にしましたが、職員が4つの言葉の違いを説明し、今後の観察内容と面会の希望を確認したことで、家族は「治療をやめるのではなく、これからも支えてもらえる」と理解し、面会の頻度を増やして最期の時間を過ごすことができました。

ケース2:在宅での看取りを検討していたある家族の例です。訪問診療の医師とケアマネジャーが同席し、自宅で看取りを行う場合に想定される体制(訪問看護の頻度、急変時の連絡先、施設への一時的な入院の可能性など)を事前に確認したことで、家族は「何かあったときにどうすればいいか分からない」という最大の不安を減らすことができました。ACPの考え方に沿って、話し合いは一度で終わらせず、状態の変化に応じて複数回行われています。

いずれも「何もしない」のではなく、目的を切り替えたうえで、確認と対話を重ねていく過程であることが分かります。

▼よくある質問(FAQ)

Q1. 看取りはいつから始まりますか。

A. 主治医が医学的な状態を踏まえて判断し、本人・家族に説明したうえで合意を得てから始まります。特定の日数や症状だけで一律に決まるものではありません。

Q2. 看取りに入ると、医療的な処置は一切しなくなるのですか。

A. いいえ。治すことを目的とした積極的な治療は控える一方で、苦痛を和らげるための医療・ケアは続きます。何を行うか・行わないかは、主治医の説明と本人・家族の意思に基づいて個別に決まります。

Q3. 看取りの期間はどのくらい続きますか。

A. 個人差が大きく、数字で一律にお伝えできるものではありません。医療・ケアチームが状態の変化を見ながら継続的に判断していくため、経過については主治医からその都度説明を受けることが大切です。

Q4. 看取り介護加算とはどのような制度ですか。

A. 施設が看取り期の利用者に手厚い体制で対応した場合に評価される介護報酬上の加算の一つです。具体的な算定要件や単位数はサービスの種類や制度改定によって変わるため、最新の情報は施設の重要事項説明書や公式の告示で確認してください。

Q5. 死亡の確認は介護職員が行うのですか。

A. いいえ。死亡診断は医師のみが行うものであり、介護職員が死亡の判定を行うことはありません。状態の変化に気づいた場合は、速やかに看護師・医師へ報告する体制が前提です。

Q6. ACP(人生会議)と看取りはどう違いますか。

A. ACPは、もしものときにどのような医療・ケアを望むかを、本人が家族や医療・ケアチームと前もって繰り返し話し合っておくプロセスです。看取りは、その話し合いをふまえて実際にケアの目的を切り替える段階を指します。ACPは看取りが始まる前から続く準備、という関係になります。

Q7. 家族として、何を準備しておけばいいですか。

A. まずは施設や医療機関の看取りに関する説明資料を確認すること、そして本人の意思が確認できるうちに、今後望むケアについて話し合う機会を持つことです。話し合いは一度で終える必要はなく、気持ちの変化に合わせて何度でも見直せます。

▼要点サマリー

  • 看取りとは「何もしないこと」ではなく、治す医療からその人らしい最期を支えるケアへ目的を切り替えること
  • 延命治療・緩和ケア・ACPはそれぞれ意味が異なり、区別できると家族への説明も変わる
  • 死亡数は2024年に160万5,378人で過去最多、看取りの場は病院から介護施設へ移行が続いている
  • 一方でACPの認知は5.9%にとどまり、正確な言葉を持つこと自体に価値がある
  • 死亡診断は医師のみが行い、介護職員は行わない。気づいたら看護師・医師へ報告する

▼もっと詳しく知りたい方へ(内部リンク)

この記事の内容をさらに深めた基幹3部作を、無料noteで公開しています。『そもそも看取りとは』では言葉の整理をさらに詳しく、『看取りになったら何が起こるのか』では施設での実際の流れを、『ACPとは何か』では人生会議の始め方を、それぞれ扱っています。看取り期の観察力を鍛えたい方には、有料note『バイタル・急変予兆の観察と初動』もあわせてご覧いただくと、看取り以前の段階からの気づきの力が身につきます。看取り・ACPに関する記事は、このnoteアカウントで今後も継続して取り上げていく予定です。

▼出典(一次ソース)

  • 厚生労働省「令和6年(2024)人口動態統計(確定数)」(死亡数160万5,378人・過去最多)

https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/kakutei24/index.html

  • 厚生労働省・第8次医療計画等に関する検討会資料「2040年に向けた人口動態・医療需要等」(死亡数ピーク約170万人)

https://www.mhlw.go.jp/content/10802000/001090217.pdf

  • e-Stat 人口動態統計「5-5 死亡の場所別にみた年次別死亡数・百分率」(死亡場所の推移)

https://www.e-stat.go.jp/dbview?sid=0003411652

  • 厚生労働省「令和4年度 人生の最終段階における医療・ケアに関する意識調査 報告書」(ACP認知5.9%・知らない72.1%)

https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/saisyuiryo_a_r04.pdf

  • 厚生労働省「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」(平成30年3月改訂)

https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-10802000-Iseikyoku-Shidouka/0000197701.pdf

投稿者

smile.takumi.www@ezweb.ne.jp

現役の施設ケアマネ・相談員 "なんとなくのケア"をエビデンスで塗り替える これから日本は年間170万人を看取る時代へ。 【★看取り・ACP★】 すべてはココにつながります。 ①医療的知識の装備 ②AIで専門性拡張と余白づくり ③自立と自律のデザイン

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