この記事の内容
結論から: 減算の分かれ目は2つだけで、ひな形の全欄ではない#
結論。業務継続計画未策定減算の要件は2つです。①感染症と自然災害の業務継続計画(BCP)が策定されていること、②その計画に従って必要な措置が講じられていること。ひな形の空欄をすべて埋めたかどうかは、要件として書かれていません。
一方で、計画の周知・研修・訓練・定期的な見直しは、計画の策定と同時に義務づけられた運営基準上の宿題です。国のQ&Aでは、この4つの実施の有無は減算の算定要件ではないと整理されています。ただし運営基準の義務ではあるので、運営指導では別枠で確認されます。

| 項目 | 減算に直結 | 運営基準の義務 |
|---|---|---|
| 感染症と自然災害のBCPの策定 | する | する |
| 計画どおりの措置 | する | する |
| 職員への周知 | しない | する |
| 研修 | しない | する |
| 訓練 | しない | する |
| 定期的な見直し | しない | する |
この表の左右を混ぜると作業が終わりません。減算を止める最短ルートと、運営指導で説明できる状態は、別の工程として順に進めます。
2026年9月時点の減算: 率は3%と1%、対象はすべてのサービス#
業務継続計画未策定減算は2024年度(令和6年度)の介護報酬改定で新設されました。2026年9月27日時点では経過措置が終わり、すべてのサービスが対象です。
適用が始まった時期はサービスによって違います。施設・居住系と通所系などは2024年4月から、訪問系・福祉用具貸与・居宅介護支援は2025年4月からです。医療系サービスの一部は2024年6月からでした。
| 区分 | 減算率 | 減算の開始 |
|---|---|---|
| 施設・居住系 | 3% | 2024年4月 |
| 通所系など | 1% | 2024年4月 |
| 訪問系・居宅介護支援 | 1% | 2025年4月 |
減算率は施設・居住系サービスが所定単位数の3%、その他のサービスが1%です。対象は利用者全員で、要件を満たさない事実が生じた月の翌月から、その状況が解消された月まで続きます。事実が生じた日が月の初日なら、その月から減算されます。
注意。以前あった経過措置は2025年3月31日で終わりました。感染症の指針を整備し、非常災害に関する具体的計画を作っていれば減算しないという扱いは、もう使えません。1か月あたりの金額が小さく見えても、利用者全員×解消までの月数で積み上がります。
BCPの作り方7手順: ひな形はこの順番で埋める#
- サービス類型に合うひな形を1組だけ用意する。厚生労働省のページに感染症編と自然災害編、入所系・通所系・訪問系のひな形が置かれています。例示入りの版を選ぶと、空欄の意味が読み取れます。
- 表紙に「誰が決めるか」を書く。統括する責任者と、不在時に代わる人を2番目まで名前で書きます。役職名だけで止めると、夜間と休日に誰も決められません。
- 止めない業務を3つまで選ぶ。食事・排泄・与薬のように、半日止まると命に関わるものから選びます。全部を優先にすると、優先順位がないのと同じです。
- 参集基準を数字で決める。震度いくつで誰が出勤するか、公共交通が止まったら徒歩何分圏の職員から呼ぶか。自宅から事業所までの距離を基準にします。
- 連絡手段を2系統書く。電話がつながらない前提で、もう1つを決めます。連絡網には最終更新日を必ず入れます。
- 不足を日数で書く。飲料水・食料・簡易トイレ・電源が何日分あるか。保管場所と担当者も書きます。
- 研修と訓練の日付を年間計画に入れる。計画を作った日ではなく、次にやる日を先に決めます。記録の様式もこの段階で作ります。

手順2から4までで、計画は読んだ人が動ける文書になります。逆にここが空欄のままだと、他の欄がどれだけ埋まっていても現場では使えません。
ひな形の「どこまで」: 先に埋める4欄と、後回しでいい欄#
運営指導の実施通知は、厚生労働省の運営指導マニュアルでは原則として実施日のおおむね1か月前までに届くことになっています。1か月あっても、通常業務と並行しながら全欄を一度に埋めるのは現実的ではありません。だから順番を決めます。
先に埋める4欄#
- 責任者と代行順位(2番目まで)
- 優先して続ける業務(3つまで)
- 参集基準と連絡手段(2系統)
- 備蓄の日数と保管場所
この4つは、災害や感染症が起きた当日に判断が必要になる項目です。ひな形の中で、埋まっていないと計画が動かない中心部分だと考えてください。
後回しでいいが、空欄のままにはしない欄#
- 想定される被害の詳細(自治体のハザードマップからの転記で足ります)
- 他事業所との連携・応援協定(交渉中なら現状を書く)
- 復旧までの長期スケジュール
- 研修資料の中身
後回しの欄は、空欄ではなく今どうなっているかを1行書きます。「未定」「2027年3月までに協議」でも、空欄より意味があります。空欄は検討していないと読まれ、1行の現状報告は把握していると読まれます。

チェックはこの端末に保存されます。印刷して現場に貼る場合はそのまま印刷してください。
なぜこの順で書くのか: 書いた分だけ「やる義務」が増える#
減算の要件の2つ目は、計画に従い必要な措置が講じられていることです。つまり、計画に書いたことは実行を求められます。ここを踏まえずに立派な計画を作ると、あとで自分の首を絞めます。
BCPは分厚さではなく、夜勤者が1人で読んでも同じ行動が取れるかを基準にする、という考え方があります。分量を増やすより、実行できる粒度に落とす方が安全です。
災害発生時は、速やかに利用者の安全を確認し、関係機関と連携して適切に対応する。訓練は毎月実施する。
震度5強以上で、当直者が居室を101号室から順に確認する。30分以内に安否一覧へ記入し、責任者へ電話で報告する。訓練は年2回(6月・11月)実施する。
毎月の訓練と書けば、毎月やっていない事実が残ります。年2回と書いて年2回やる方が、運営指導では強いです。
記載の言い回しは、次の3本をそのまま差し替えて使えます。
- 統括責任者は施設長とする。不在時は第1順位を介護主任、第2順位を看護主任とし、到着までは当直者が判断する。
- 優先して継続する業務は、食事の提供・排泄介助・与薬の3つとする。入浴とレクリエーションは中止し、再開の判断は統括責任者が行う。
- 職員の連絡は電話と施設連絡アプリの2系統とする。連絡網は毎年4月に更新し、最終更新日を計画の末尾に記載する。
研修と訓練: 回数の目安と、記録に残す3行#
研修と訓練は減算の要件ではありませんが、運営基準上の義務です。回数の目安は、入所系の施設サービスが年2回以上、通所系や訪問系などの在宅サービスが年1回以上とされています。感染症と自然災害をそれぞれ1回ずつ行う形でも整理できます。
研修は座って学ぶもの、訓練は動いてみるものです。どちらかに偏らせず、分けて記録に残します。

記録は3行で足ります。日付・参加者・やったことがあれば、後から説明できます。
- 2026年6月12日 14:00〜14:40 災害BCP研修。参加11名(欠席3名は資料回覧とレポート提出)。内容は参集基準と安否確認手順の読み合わせ。
- 2026年11月20日 15:00〜15:50 災害BCP訓練。夜勤帯を想定し当直1名で居室確認を実施。安否一覧の記入に18分かかり、様式を1枚に減らす改善を決定。
- 2026年11月20日 訓練後の見直し。安否一覧の様式を第2版に改訂。計画本体の連絡網を更新し、最終更新日を記載。
訓練の記録に「うまくできた」とだけ書くのは、もったいないです。かかった時間や詰まった場所を1行入れると、それがそのまま次の見直しの根拠になります。
つまずきやすい5つの注意点#
注意。次の5つは、計画そのものは作ってあるのに指摘を受けやすい形です。
- 感染症編と自然災害編の片方しかない。減算の要件は両方です。1冊にまとめるのは問題ありませんが、両方の内容が必要です。
- ひな形の例示文が残っている。「○○を記載してください」という説明文がそのまま残った計画は、読み合わせをしていないと判断されます。
- 連絡網が古い。退職者の名前が残っているだけで、実効性を疑われます。最終更新日を計画の中に書きます。
- 計画が事務所のパソコンにしかない。停電で開けない場所に置いた計画は、当日には使えません。紙を1部、夜勤者が触れる場所に置きます。
- 研修や訓練をやったのに記録がない。実施した事実は、記録がなければ確認できません。
委員会や記録の残し方は、関連記事「身体拘束適正化委員会の頻度は3月1回|記録4項目と文例」「虐待防止委員会の議事録の書き方|必須7項目と記入例5本」でも整理しています。指針・委員会・研修・記録の4点セットで残す形は、どのテーマでも同じです。
様式の作り方や記録の言い回しは、noteで現場向けにまとめています。自分の事業所の様式に合わせて直して使ってください。
まとめ#
- 減算の要件は、感染症と自然災害のBCPがあることと、計画に従った措置が講じられていることの2つ
- 周知・研修・訓練・見直しは減算の要件ではないが、運営基準上の義務で運営指導では見られる
- 減算率は施設・居住系が3%、その他が1%。2026年9月時点ですべてのサービスが対象
- ひな形は全欄ではなく、責任者・優先業務・参集基準・備蓄の4欄から埋める
- 後回しの欄は空欄にせず、現状を1行書く
- 計画に書いたことは実行を求められる。盛らずに、できる粒度で書く
次の一歩は1つだけです。ひな形を開いて、責任者と代行順位2人の名前を書いてください。ここが埋まると、残りの欄は手が動きます。
よくある質問#
感染症と自然災害を1つの計画にまとめてもいいですか。
まとめて問題ありません。ただし両方の内容が必要です。参集基準や連絡網など共通する部分は1か所に書き、感染症特有の部分(ゾーニング、職員の就業制限など)と災害特有の部分(停電、断水、避難)は分けて書くと読みやすくなります。
ひな形の空欄が多いままでも減算されませんか。
減算の要件は、計画が策定されていることと、計画に従い必要な措置が講じられていることです。空欄の数そのものは要件として書かれていません。ただし責任者・優先業務・参集基準といった中心部分が空欄の計画は、計画として機能していないと見られる可能性があります。空欄は「未定」か「いつまでに決める」に置き換えてください。
研修や訓練を1回も実施していません。すぐ減算になりますか。
国のQ&Aでは、周知・研修・訓練・定期的な見直しの実施の有無は減算の算定要件ではないと整理されています。ただし運営基準上の義務ではあるため、運営指導では指摘の対象です。次の日付を決めて年間計画に入れるところから始めてください。
訓練は避難訓練と一緒にやってもいいですか。
非常災害対策の避難訓練とBCPの訓練は目的が違います。避難は逃げること、BCPの訓練は逃げたあとにどの業務をどう続けるかです。同じ日に続けて行うのは現実的ですが、記録は分けて残してください。
職員が5人の小規模事業所でも同じものが必要ですか。
求められる項目は同じですが、分量は規模に見合った形で構いません。人数が少ない事業所ほど、代行順位と近隣事業所への応援依頼の欄が重要になります。1人欠けたときの影響が大きいためです。
減算はいつまで続きますか。
要件を満たさない事実が生じた月の翌月から、その状況が解消された月までです。事実が生じた日が月の初日の場合は、その月から適用されます。対象は利用者全員です。細かい取り扱いは、保険者(市町村・都道府県)の集団指導資料で確認してください。
出典#
- 厚生労働省「介護施設・事業所における業務継続計画(BCP)作成支援に関する研修」(業務継続ガイドライン 感染症編・自然災害編、およびサービス類型別ひな形の掲載ページ)
- 厚生労働省「令和6年度介護報酬改定について」(業務継続計画未策定減算の算定要件および留意事項)
- 厚生労働省「令和6年度介護報酬改定に関するQ&A」(業務継続計画の周知・研修・訓練・定期的な見直しの実施の有無は減算の算定要件ではない旨)
- 厚生労働省老健局総務課介護保険指導室「介護保険施設等 運営指導マニュアル」(令和4年3月策定、令和6年7月改訂)
- 厚生労働省老健局「介護現場における感染対策の手引き 第3版」(令和5年9月)