本文へ移動

退院前カンファレンス 家族が聞くこと5分類|質問文例12本と準備手順

約11分で読めます2026-10-02 更新家族向け
この記事の要点

退院が決まると、病院から「退院前に関係者で集まって話しましょう」と声がかかります。親の退院を控えた家族がこの場で聞くことは、5つに絞れます。①家で続く薬と医療処置 ②できること・できないことの線 ③急変したときの連絡先 ④お金 ⑤退院後に相談する相手。この順で聞くのが正解です。カンファレンスは15〜30分で終わることもあると言われ、その場で思い出せた分しか聞けません。紙に書いて持っていってください。

この記事の内容

退院前カンファレンスで家族が聞くことは5分類|帰った翌日に困る順で聞く#

結論

結論。質問は思いついた順に出さず、家に帰った翌日から困る順に並べます。下の5分類を、上から順に聞いてください。

家族が聞くこと5分類の優先順位
聞く内容主な相手抜けると起きること
薬と処置病棟看護師・薬剤師帰宅当日の夜に手が止まる
できる線リハビリ職・看護師手すりもベッドも間に合わない
急変時医師・訪問看護夜中に救急車を呼ぶか迷う
お金医療相談室・ケアマネ退院後1か月で家計が崩れる
次の相談先ケアマネ・相談員誰にも聞けず家族が抱え込む
退院前カンファレンスで家族が聞くことは5分類|帰った翌日に困る順で聞く

この5つの中で、3番の急変時は聞き忘れやすいと言われます。病気の説明は病院が必ずしてくれますが、「夜中に熱が出たらどこへかけるか」は、家族が聞かないと説明が抜けることがあります。

退院前カンファレンスとは|誰が集まり、何を決める場なのか#

退院前カンファレンスは、退院後の生活を支える人たちが、退院前に、原則として一度、同じ部屋に集まる打ち合わせです。病室や面談室で行われ、短い時間で終わることがあります。

集まる顔ぶれはおおむね次のとおりです。

  • 病院側: 主治医、病棟看護師、退院調整の看護師や医療ソーシャルワーカー、リハビリ職、薬剤師、管理栄養士
  • 在宅側: かかりつけ医(訪問診療医)、訪問看護師、ケアマネジャー、福祉用具の担当者、訪問介護やデイサービスの職員
  • 本人と家族

流れは「報告→質問」の2部構成になることが多いです。前半で医師が治療の経過、看護師が病棟での様子と処置、リハビリ職が動作と介助方法を報告し、後半で家族と在宅側が質問します。つまり、家族の持ち時間は後半になることが多いです。

短い会で終わり、あとから「あれも聞けばよかった」と思う家族は少なくないと聞きます。報告を聞いているうちに時間が溶けます。だから紙が要ります。

当日の流れと家族の持ち時間

退院の相談は、家族が思うより早く始まっている#

病院側の仕組みを知っておくと、動く時期が変わります。診療報酬の入退院支援加算では、退院支援の体制を厚くしている病院は入院後3日以内、もう一段の区分では7日以内に「退院が難しくなりそうな患者」を選び出すこととされています(令和6年度診療報酬改定の基準による)。

つまり、入院して1週間のうちに、病院の中では退院の検討が始まっています。「まだ退院の話は早い」と家族が思っている間に、相談の窓はすでに開いています。入院中に医療相談室(地域連携室)へ自分から声をかけて構いません。

さらに、病院と在宅側が一緒に本人と家族へ説明・指導し、文書で情報提供した場合に算定できる報酬(退院時共同指導料)は、原則として入院中1回です(末期の悪性腫瘍など一定の疾病等では2回まで算定できます)。ケアマネジャー側にも、カンファレンスに出たかどうかで単位数が変わる退院・退所加算があります。この場が原則一度で、関係者が全員そろう理由はここにあります。

なぜ急変時とお金を先に聞くのか|順番を変えると家で詰む#

手順を並べるだけでは足りないので、理由を書きます。

病気の説明は、聞かなくても病院からされます。リハビリの状況も報告されます。一方で、急変時の判断とお金は、家族が聞かない限り「家庭の事情」として扱われ、説明から外れやすい領域です。しかもこの2つは、失敗したときの傷が深い。夜の判断を誤れば本人の体に跳ね返り、お金の見通しを誤れば介護そのものが続かなくなります。

もう一つ理由があります。急変時とお金の答えは、ほかの質問の答えを変えます。「夜間はまず訪問看護へ」と決まれば訪問看護の回数が必要になり、「窓口負担はここまで」と分かれば使うサービスの量が決まります。先に骨を決めてから、肉付けの質問をする。これが順番の理由です。

ビフォー

だいたい大丈夫そうですか。家でやっていけますかね。

アフター

平日の日中は家に誰もいません。朝8時に出て、帰るのは19時です。その11時間、父が一人になる前提で、何が足りないか教えてください。

同じ心配でも、下のほうが答えが返ってきます。「大丈夫ですか」は、相手が「大丈夫です」と答えて終われる質問です。条件を先に出すと、相手は条件に合う案を出すしかなくなります。

家族としての経験も一つだけ書きます。肺がんの義理の父について、義理の母は本人のしんどさを考えて一度は入院を決めていました。私が自宅でも介護できる見通しと介護保険の使い方を伝えたことで、最期まで自宅で過ごす選択に変わりました。知識の差ではなく、情報が届いたかどうかの差だったと思っています。 カンファレンスは、その情報が家族に届く場でもあります。この先の深い話は、noteや入口記事に置いています。

そのまま読める質問文例12本|印刷して持っていく#

場面ごとに1本ずつコピーして使ってください。全部聞く必要はありません。上の5分類から、自分の家に効くものを5〜6本だけ選びます。

そのまま読める質問文例12本|印刷して持っていく12本
  1. 退院後に続けるお薬は何種類で、1日何回ですか。飲み忘れたときはどうすればいいですか。
  2. 家で続ける処置はありますか。誰がやる想定でしょうか。退院までに私が練習させてもらえますか。
  3. トイレと入浴は、どこまで自分でできて、どこから手伝いが必要ですか。
  4. 夜間にトイレへ起きますか。1晩に何回くらいですか。
  5. 食事はどんな形ですか。むせることはありますか。水分にとろみは必要ですか。
  6. 熱が出た、食べない、転んだ。このときはまずどこへ連絡すればいいですか。夜間と休日も同じ番号ですか。
  7. どんな状態になったら、また入院を考えたほうがいいですか。目安を教えてください。
  8. 次の受診はいつ、どの科ですか。通院は誰が連れて行く想定ですか。
  9. 退院時の窓口の支払いは、だいたいいくらになりそうですか。限度額の手続きは済んでいますか。
  10. 介護保険の申請は出ていますか。結果が出るまでに使えるサービスはありますか。
  11. 家のどこに手すりが必要か、見てもらえますか。ベッドは退院日に間に合いますか。
  12. 父は病棟で、家でどう過ごしたいと話していましたか。聞いていたことがあれば教えてください。

12本目を入れているのには理由があります。家族の前では遠慮して言わないことを、本人は夜勤帯の看護師や入浴を手伝った職員に話していることがあります。病棟のスタッフは、家族が知らない本人の言葉を持っています。

退院前カンファレンスの準備7手順|1週間前から当日まで#

  1. 1週間前: 病院の医療相談室(地域連携室)に電話し、カンファレンスの予定と日時を確認する。まだ決まっていなければ「参加したい」と伝える
  2. 1週間前: 介護保険の申請状況を確認する。未申請なら市区町村の窓口か病院の相談室で申請の相談をする(結果は原則30日以内)
  3. 5日前: 家の写真を5枚撮る。玄関、廊下、トイレ、浴室、寝る部屋。段差と通路の幅が写るように撮る
  4. 3日前: 家族の都合を1枚に書く。誰が何曜日の何時なら家にいられるか。できないことを正直に書く
  5. 2日前: 本人に「家でどう過ごしたいか」を聞く。無理に決めさせず、出てきた言葉をそのまま書き留める
  6. 前日: 質問を5〜6本に絞って紙に書く。優先順位の高いものを上に並べる
  7. 当日: メモ係を決める。質問する人と書く人を分けると取りこぼしが減る。終わる前に「次は誰に連絡すればいいか」を必ず確認する
1週間前から当日までの準備の時間割

当日の持ち物と事前整理は、この8項目で足ります。

退院前カンファレンスの準備7手順|1週間前から当日まで0 / 8

チェックはこの端末に保存されます。印刷して現場に貼る場合はそのまま印刷してください。

職員向け|家族が黙る3場面と、職員が先に言うべきこと#

ここは職員とケアマネジャー向けです。家族が質問しないのは、納得したからではありません。たいてい次の3つです。

  1. 専門用語が分からないが、聞き返すと話を止めてしまうと思っている
  2. 「家で見られますか」に「無理です」と答えたら、見捨てられると思っている
  3. 質問が思いつかない。何を知らないのかが分からない

だから職員が先に言葉にします。

ビフォー

ご自宅で看られますか。ご家族で話し合っておいてください。

アフター

無理なところを先に教えてください。できない部分に人とサービスを入れるのが私たちの仕事です。今日すべて決めなくて大丈夫です。

「できない」と言える場にすることが、カンファレンスの実務だと考えています。家族が全部を抱えた在宅介護は、長続きしにくいと言われます。

職員側で押さえるのは4点です。①薬と処置を家で誰がやるかを名前で確定する ②夜間休日の連絡先を紙で渡す ③次の受診日と移動手段を決める ④退院日にベッドや手すりが届く段取りを確認する。この4つが埋まっていれば、帰宅初日は回ります。

退院後1か月で効いてくるお金と手続きの早見表#

令和6年度改定後の制度に基づく説明です。自己負担の割合(1〜3割)や所得で金額は変わるため、必ず市区町村の介護保険担当窓口と病院の医療相談室で確認してください。

制度上限・期限窓口
要介護認定申請から原則30日以内市区町村の介護保険窓口
住宅改修20万円が限度(原則1回)ケアマネ経由で市区町村
用具の購入同一年度で10万円までケアマネ経由で市区町村
医療費の窓口限度額まで(事前の同意が必要)加入する健康保険
退院後1か月で効いてくるお金と手続きの早見表

住宅改修の20万円は、手すりの取り付けや段差の解消など決められた工事に使え、そのうち1〜3割が自己負担です。原則は1人1回ですが、要介護度が3段階上がった場合や引っ越した場合は、改めて使えます。入浴や排泄に使う特定福祉用具の購入費は、4月1日から翌年3月31日までの1年度あたり10万円までです。ベッドや車いすは購入ではなくレンタル(福祉用具貸与)が基本で、こちらは毎月の利用料になります。

医療費は、マイナ保険証でオンライン資格確認を受け、限度額情報の提供に同意すれば、窓口の支払いが最初から高額療養費の自己負担限度額までになります。事前の認定証の申請は原則不要ですが、オンライン資格確認を導入していない医療機関などでは、従来どおり申請が必要です。

退院後のお金と手続きの上限早見

退院日に合わせて、手すり・歩行器・ベッドを一式そろえる必要が出ることもあります。介護保険で借りられるもの、買うもの、自費で買ったほうが早いものは分かれます。買い物の前にケアマネジャーへ「これは保険で借りられますか」と聞くと、費用が変わることがあります。

つまずきやすい注意点4つ#

ここは間違えやすい

注意。入院中は、介護保険の訪問介護やデイサービスなどの在宅サービスは原則として使えません。利用が始まるのは退院後です。「退院日に何が届き、誰が来るか」をカンファレンスで決めておかないと、帰宅初日が丸ごと空きます。取り扱いが自治体で異なる部分もあるので、日取りはケアマネジャーに確認してください。

残りの3つです。

  1. 退院日が前倒しになることがある。病院の都合で数日早まる連絡が入ることもある。ベッドの搬入や初回訪問は「前倒しの可能性あり」で押さえる
  2. 「できます」は病院の環境での話。手すり付きの病院のトイレで自立していても、家の狭い廊下や段差では別です。家の写真を見せて判断してもらう
  3. 延命や余命の判断をこの場で決めようとしない。治療方針や医療的な判断は主治医・かかりつけ医に確認し、家族で話す時間は別にとる

本人の希望を聞く場面では、「どこで、どう過ごしたいか」までで止めて構いません。何を望むかは、暮らしながら変わります。

関連記事として、入院や介護が始まるとお金の出し入れで止まる場面が増えます。「親の口座凍結を防ぐ|認知症になる前にやること7手順と費用比較」も合わせて読んでおくと、退院後の手続きが軽くなります。

よくある質問#

退院前カンファレンスには必ず呼ばれますか。

全員に開かれるわけではありません。医療処置が続く場合や、在宅の支援を組む必要がある場合に設定されることが多いです。希望するなら、病院の医療相談室(地域連携室)に「開いてもらえますか」と相談してください。

仕事で平日に行けません。

まず日程の相談をしてください。それでも難しい場合は、質問を書いた紙を事前に渡し、結果を電話で説明してもらう形が現実的です。ケアマネジャーに代理で質問してもらうこともできます。

介護保険の申請は退院してからでいいですか。

退院後に申請すると、結果が出るまでの期間がそのまま空きます。申請から結果まで原則30日以内なので、入院中に申請し、必要なら暫定のケアプランでサービスを先に始める形が一般的です。入院中の認定調査ができるかは、病院とケアマネジャーに確認してください。

ケアマネジャーがまだ決まっていません。

病院の医療相談室か、地域包括支援センターに相談すると候補を紹介してもらえます。カンファレンスまでに決まっていれば、その場で退院後の予定まで組めます。

本人の前で介護の限界を言いにくいです。

カンファレンスの前に、職員だけと話す時間を取ってもらって構いません。「本人がいない場で先に伝えたいことがある」と相談室に伝えてください。

家に帰るか施設にするか、この場で決めないといけませんか。

その場で結論を出す必要はありません。「まず家で2週間やってみて、無理なら相談する」という決め方も普通にあります。

まとめ#

  • 聞くことは5分類。薬と処置、できる・できない、急変時の連絡先、お金、次の相談相手。この順で聞く
  • カンファレンスは短い時間で終わることがあり、家族の持ち時間は後半だけのことが多いと言われます。質問は5〜6本に絞って紙で持っていく
  • 「大丈夫ですか」ではなく、家族の条件(何時から何時まで誰もいないか)を先に出すと答えが返ってくる
  • 介護保険の申請は入院中に。結果は原則30日以内。住宅改修は20万円、特定福祉用具の購入は年度10万円まで
  • 医療的な判断は主治医・かかりつけ医に。この場で決めるのは暮らしの段取り

次の一歩は1本の電話です。病院の医療相談室に「退院前カンファレンスの予定を教えてください。参加したいです」と伝えてください。それだけで、家族が受け取る情報の量が変わります。

出典#

出典・参考


この記事を書いた人:ミミ介護支援専門員(ケアマネジャー)

介護施設で生活相談員・ケアマネジャーとして勤務。現場の職員研修と介護現場でのAI活用の推進に携わっています。記事の数字・制度は一次資料の原文を開いて確認してから書いています。誤りに気づいた方はお問い合わせから教えてください。 運営者情報

この記事の「型」を、現場でそのまま使う。

noteでは、記事で扱ったテーマの文例・チェックリスト・早見表を、印刷して申し送りや研修に使える形で配布しています。看取り・ACPの入門記事は無料です。

noteを見る