健康診断を受けた日の前6か月間の平均で夜勤が月4回以上ある介護士は、自分で受けた健康診断の結果を職場に出すことができます。労働安全衛生法の第66条の2に、そう書いてあります。そして、その結果に異常の所見があれば、会社は医師の意見を聴き、必要なら「深夜業の回数の減少」などの措置をとらなければなりません(同法第66条の5)。
夜勤がつらいとき、選択肢は「我慢する」か「辞める」の2つしかないように見えます。でも、その間にいくつか、法律と健康保険に用意された段があります。
夜勤明け、帰りの車の中で理由もなく涙が出る。家に着いても眠れなくて、気づけばまた夕方。次の夜勤の前の日から、胃が重い。よくある場面を組み合わせた例ですが、覚えのある人は少なくないと思います。
この記事では、辞める前に確かめられる制度を、使う順に5つ並べます。私は介護医療院でケアマネと相談員をしています。医師でも社労士でもないので、体の不調の診断や、あなたの職場でどれが使えるかの判断はしません。条文と厚生労働省の資料を2026年10月16日に開いて、書いてあることを確かめた範囲で書きます。
この記事の内容

使う順に並べると、5つ#
先に全体を1つの表にします。上から順に、軽いものから重いものへ並べました。
| 順番 | 使うもの | 誰が対象か | 費用 | 根拠 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 職場への相談 | 全員 | なし | (制度ではなく最初の一歩) |
| 2 | 総合労働相談コーナー | 全員(匿名でも可) | 無料 | 厚生労働省の案内 |
| 3 | 自発的健康診断の結果を出す | 受けた日の前6か月の平均で夜勤が月4回以上の人 | 受診の費用は自分 | 労働安全衛生法66条の2、同規則50条の2 |
| 4 | 休んで傷病手当金を受ける | 勤め先の健康保険の被保険者 | なし | 健康保険法99条 |
| 5 | 働き方を選び直す | 全員 | 場合による | (制度ではなく選択) |
3の「受診の費用は自分」は、自分で受ける健康診断だからです。会社が費用を持つかどうかは、職場の決まりによります。
1と5は制度ではありません。それでも表に入れたのは、2〜4を使う前と後に、必ずこの2つの判断が来るからです。
1. 職場に相談する。言い方は3行でいい#
一番早く、一番軽いのは、職場の上司や主任に伝えることです。夜勤の回数、組む相手、仮眠の時間。シフトの中で変えられることは、職場の中でしか変えられません。
言いにくいのは、たぶん「甘えていると思われそう」だからだと思います。なので、事実、困りごと、希望の順に3行で言う型にしました。
最近、夜勤明けに眠れない日が週に2回くらいあります
次の夜勤までに体が戻らず、日中もぼんやりしています
来月の夜勤を1回減らせないか、相談させてください
3行目は、あえて「相談させてください」で止めています。決めるのは職場で、あなたは材料を渡す側、という置き方です。職場の人数によっては、すぐに変わらないこともあります。それでも、言ったという事実は残ります。
相談したことは、日付と相手と言ったことを、スマホのメモに1行残しておくと、あとで2の窓口に行くときに話が早くなります。
2. 職場で進まなければ、総合労働相談コーナーへ#
職場で話が進まない。そもそも上司に言いにくい。そのときの外の窓口が、厚生労働省の総合労働相談コーナーです。
厚生労働省の案内に書かれていることを並べます。
- 各都道府県の労働局と、全国の労働基準監督署の中などに378か所ある
- いじめ・嫌がらせ・パワハラを含む、あらゆる分野の労働問題が対象
- 専門の相談員が、面談か電話で対応する
- 予約は要らない。利用は無料
- 土日・祝日・年末年始は閉まっている
- 法律に違反している疑いがある場合は、労働基準監督署などに取り次ぐ
厚生労働省のハラスメントのページには「匿名でも大丈夫」とも書かれています。いきなり会社を訴える場所、ではありません。「これって相談していいことですか」から聞ける場所です。
所在地と電話番号は、都道府県ごとに厚生労働省のページに載っています(この記事では番号を書き写しません。古くなるのを避けるためです)。
3. 夜勤が月4回以上なら、自分で受けた健康診断を出せる#
ここが、この記事でいちばん知られていないと思う段です。
労働安全衛生規則の第50条の2は、自発的健康診断の要件をこう決めています。常時使用されていて、健康診断を受けた日の前の6か月間を平均して、1か月に4回以上深夜業(午後10時から午前5時の業務)に就いたこと。毎月4回以上の夜勤が半年続いている人なら、この線を越えています。
当てはまる人は、自分で受けた健康診断の結果を証明する書面を、会社に出すことができます(法第66条の2)。期限があります。受けた日から3か月を過ぎると、出せません(規則第50条の3)。
出したあとの流れも、条文に書かれています。
- 結果に異常の所見があると診断された場合、会社は、その人の健康を保つために必要な措置について、医師の意見を聴かなければならない(法第66条の4)
- 会社は医師の意見を踏まえ、必要があると認めるときは、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少などの措置をとらなければならない(法第66条の5)
つまり、「夜勤がつらい」を、健康診断の結果と医師の意見という形で職場に出せる道があるということです。条件は2つ重なっています。異常の所見があること。医師の意見を踏まえて、会社が必要と認めること。出せば必ず夜勤が減る、という仕組みではありません。
もう1つ。夜勤がある人には、そもそも会社が6か月以内ごとに1回、定期の健康診断をする決まりがあります(規則第45条。深夜業を含む業務に常時就いている人が対象)。年1回しか受けていない気がする人は、職場に確かめてみてください。
国の法律に、介護士の夜勤明けの不調を受け止める段が、ちゃんと条文として置いてある。調べていて、少しほっとしたところです。

4. 休むしかないときは、傷病手当金がある#
眠れない、涙が止まらない、体が動かない。それが続くなら、まず医療機関を受診してください。そのうえで医師から働けないと言われたとき、休んでいる間の暮らしを支えるのが、健康保険の傷病手当金です。
健康保険法第99条に書かれていることは、次のとおりです。
- 勤め先の健康保険の被保険者(任意継続の被保険者は除く)が、療養のために働けないときに出る
- 働けなくなった日から数えて3日を過ぎた日から。つまり4日目から
- 1日あたりの額は、直近の継続した12か月の標準報酬月額の平均の30分の1の、3分の2
- 同じ病気やけがについて、支給が始まった日から通算して1年6か月まで
給料が出ている間は、支給されません。ただし、出ている給料が傷病手当金の額より少ないときは、その差額が出ます(同法第108条)。
ここで書いたのは、健康保険法の条文の範囲です。国民健康保険に入っている人や、家族の扶養に入っている人は、この記事の話がそのまま当てはまりません。加入先に確かめてください。手続きの書類や、医師の証明の書き方は、勤め先の健康保険(協会けんぽや健康保険組合)の案内が基準になります。
5. それでも合わなければ、働き方を選び直していい#
1〜4を使っても体が戻らない。夜勤そのものが、自分の体に合わない。そこまで来たら、夜勤のない働き方を選ぶのも、ちゃんとした選択の1つです。
介護の仕事には、日勤だけの職場や、夜勤のないサービスもあります。同じ法人の中で配置を変えてもらえないかを先に聞くのも1つの手です。どれが合うかは、地域と職場と、あなたの暮らしによって違うので、この記事では勧めません。
ただ、順番だけは1つ提案させてください。辞めるかどうかを決めるのは、2〜4のどれかを一度確かめてからでも遅くないと私は思います。辞めたあとでは使えない段もあるからです。たとえば3の健康診断の結果を職場に出す段は、職場にいる間の話です。
自分の夜勤の回数を、今日確かめる#
1つだけ持ち帰るなら、これです。
健康診断を受ける予定の日の前6か月分のシフト表を出して、夜勤の回数を数えてみてください。その6か月の平均が月4回以上なら、3の自発的健康診断の段が使えます。数えるだけなら、明けの日の5分で終わります。
よくある質問#
自分の体調が悪いことを理由に、夜勤を外してもらえる法律はありますか。
「深夜業の制限」という制度はありますが、これは要介護状態の家族を介護するための請求です(育児・介護休業法)。自分の体調だけを理由に使う制度ではありません。自分の体調の場合は、この記事の3(自発的健康診断)が条文に置かれた道で、医師の意見を踏まえて会社が深夜業の回数を減らすなどの措置をとる仕組みです。
自発的健康診断は、どこで受ければいいですか。
条文が決めているのは、自分で受けた医師による健康診断の結果を出せる、ということです。どの医療機関で受けるか、費用を誰が持つかは、この記事で読んだ条文には書かれていません。職場の衛生の担当者に聞いてみてください。
傷病手当金は、うつで休んでも出ますか。
条文の言葉は「療養のため労務に服することができないとき」で、病名で分けていません。出るかどうかは、医師の証明や加入している健康保険の審査によります。この記事で「必ず出る」とは言えません。
総合労働相談コーナーに相談したら、会社に知られますか。
総合労働相談コーナーの案内には「プライバシーの保護に配慮」した相談対応とあり、厚生労働省のハラスメントのページには「匿名でも大丈夫」と書かれています。名前を出すかどうかは、自分で選べます。ただし、法律に違反している疑いがある場合は、相談の内容が労働基準監督署などに取り次がれることがあると、同じ案内に書かれています。
この記事の情報は、2026年10月16日時点のものです。法律や案内は改正されることがあります。
次に読む#
夜勤がつらいのは自分だけかな、と思ったときに。全国の介護で働く2万675人の調査で、人員配置や休憩室にマイナスがついている話を、noteで並べています。
他の介護士さんって、どんな感じ? 全国2万675人の答えを並べました【みんなの声 第1回】(無料)https://note.com/logical_kaigo/n/n9efbd6772f66
出典#
- 労働安全衛生法 第66条の2、第66条の4、第66条の5(e-Gov法令検索。2026年10月16日閲覧) https://laws.e-gov.go.jp/law/347AC0000000057
- 労働安全衛生規則 第13条、第45条、第50条の2、第50条の3(e-Gov法令検索。2026年10月16日閲覧) https://laws.e-gov.go.jp/law/347M50002000032
- 健康保険法 第99条、第108条(e-Gov法令検索。2026年10月16日閲覧) https://laws.e-gov.go.jp/law/211AC0000000070
- 厚生労働省「総合労働相談コーナーのご案内」(2026年10月16日閲覧) https://www.mhlw.go.jp/general/seido/chihou/kaiketu/soudan.html
- 厚生労働省「職場におけるハラスメントの防止のために」(総合労働相談コーナーの案内。2026年10月16日閲覧) https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/seisaku06/index.html
- 厚生労働省 介護休業制度特設サイト「深夜業の制限」(2026年10月16日閲覧) https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/ryouritsu/kaigo/midnightwork/