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「運動中だけ聴ける物語」でジム通いは何割増えたか。楽しみと面倒をセットにする方法を、3つの実験の数字で5ステップに分ける

約9分で読めます 更新継続心理
この記事の要点

VITA Boardは筆者が運営するアプリです。

「運動したほうがいい」は分かっている。分かっているのに、夜になるとソファで動画を見ている。続かない人の多くは、知識が足りないわけでも、意志が弱いわけでもない。やるべきことの見返りが何か月も先にあって、楽しいことの見返りが今すぐ手に入る。その差に負けているだけだ。

行動経済学には、この差を逆手に取るやり方がある。楽しみを、面倒なことをしている間だけに閉じ込める。英語では temptation bundling(誘惑の抱き合わせ)と呼ばれる。米国の研究者が、実際にジムで試している。

この記事では、その実験の数字を先に見てから、自分の生活で組むための5つの手順に分ける。数字が小さくなった場面も、そのまま書く。

この記事の内容

まず数字:3つの実験で分かったこと#

研究対象と規模比べたもの結果
Milkmanら(2014年)米国の大学の学生・教職員226人①続きが気になる小説の朗読(オーディオブック)入りのiPodを、ジムでしか受け取れないようにした群②「ジムだけで聴くように」と勧めただけの群③同じ額の書店ギフトカードをもらった群はじめのうち、①は③より51%多く、②は29%多くジムに通った。ただし②と③の差は、統計的には偶然と区別できる差とは言えなかった。効果は時間とともに薄れ、特に感謝祭の休暇のあとで落ちた
Kirgiosら(2020年)米国のフィットネスジム会員6,792人、4週間のプログラム同じプログラムの中で、オーディオブックを渡して組み合わせ方も教えた群/渡しただけの群/オーディオブックだけ渡さなかった群教えた群は、渡さなかった群より週に1回以上ジムに行く確率が10〜14%高く、4週間のプログラムのあと最長17週まで差が見られた。渡しただけの群も、プログラム中は週の通う回数が17.6%多かった
Milkmanら(2021年)フィットネスジム会員61,293人、54通りの4週間プログラム30人の研究者が考えた方法を、同じ条件で比較参加ポイントだけの群と比べて、53の方法のうち45%で週の通う回数が9〜27%増えた。1位は休んだあとに戻ってきたらもらえる小さなご褒美。プログラム終了後も効果が測れたのは8%だけ
まず数字:3つの実験で分かったこと

3つ目の大規模比較での順位は、「オーディオブックを渡しただけ」が4位、「オーディオブックを渡して組み合わせ方も説明」が9位だった。2020年の研究でも、組み合わせ方を教えた上乗せの効果は控えめだったと書かれている。つまり、楽しみを手元に用意すること自体にかなりの部分の効果があり、「やり方の説明」を足した分はそれほど大きくなかった。

この記事の手順は、この点と、多くの方法がプログラム終了後に効果が見えなくなった点を踏まえて組んである。

ステップ1:続けたい「面倒なこと」を1つだけ、時間と場所つきで決める#

最初の実験で対象にしたのは「ジムで運動すること」1つだけだった。複数の目標を一度に結びつけたわけではない。

自分の場合も、まず1つに絞る。そのとき、行動を「場所」で切れる形にしておくと、次の手順が組みやすい。

ぼんやりした目標場所で切れる形
運動する夕食後に近所を20分歩く
筋トレする寝る前にリビングのマットの上でスクワット
自炊を増やす週末の作り置きの間、台所に立っている時間
食事を記録する夕食後に皿を下げたあと、テーブルで1分
ステップ1:続けたい「面倒なこと」を1つだけ、時間と場所つきで決める

「歩いている間」「マットの上にいる間」のように、始まりと終わりがはっきりしていることがポイントになる。楽しみを閉じ込める箱の、壁にあたるからだ。

ステップ2:楽しみは「続きが気になるもの」を選ぶ#

最初の実験で使われたのは、『ハンガー・ゲーム』『ダ・ヴィンチ・コード』のような、先が気になって止めにくい小説の朗読だった。論文の題名にも、ハンガー・ゲームを「人質に取る」という言葉が入っている。

上の順位を見るかぎり、この手順がいちばん効いている可能性がある。楽しみが手元にあるだけで、通う回数が増えた群があったからだ。

選ぶ基準は、次の2つを満たすかどうかだ。

  • 続きが気になって、毎回また手を伸ばしたくなる(1回で満足して終わるものは向かない)
  • 面倒なことをしながら楽しめる(歩きながら字幕付きの映画は無理がある)
向いている例理由
連続ものの小説の朗読、ラジオドラマ1話ごとに続きが気になる
毎週更新される好きなポッドキャスト新しい回が出るたびに楽しみが補充される
「この作業中だけ」と決めたお気に入りのプレイリスト歩く・料理するのと両立する
ステップ2:楽しみは「続きが気になるもの」を選ぶ

ここは自分の好みしか正解を知らない。迷ったら「最近、夜更かしの原因になったもの」を思い出すと見つかりやすい。

ステップ3:楽しみに「鍵」をかける#

2014年の実験では、オーディオブックの入ったiPodをジムに預けて、ジムでしか聴けなくした群が51%増。同じオーディオブックを渡して「ジムだけで聴いてね」と勧めただけの群は29%増だった。

ただ、この2つの数字の差をそのまま「鍵をかけた効果」と読むのは言い過ぎになる。勧めただけの群は、ギフトカードの群との差が統計的に確かめられなかった(論文の回帰分析で週0.14回の差、p>0.10)。ジムでしか聴けない群とギフトカードの群の差は週0.31回で、こちらは統計的に意味のある差だった(p=0.026)。1群75人前後の小さな実験で、鍵をかけた群と勧めた群を直接比べた検定も見当たらない。言えるのは、自分との約束だけより、手が届かない仕組みのほうが強く出る傾向が見えた、というところまでだ。

それでも、自分を信用しすぎない形にしておくのは損にならない。家でできる鍵のかけ方は、たとえば次のようなものがある(ここは筆者の工夫例で、研究で比べたものではない)。

  • 朗読アプリのイヤホンを、運動用の靴と同じ袋に入れておく。袋を開けたら歩きに出る
  • 楽しみ専用のプレイリストを作り、ふだんの再生画面からは外しておく
  • 家族に「歩きに行くまで続きは聴かない」と宣言して、ずるをしたら言ってもらう

「今夜だけは家で聴いてもいいか」と思った時点で、鍵はもう外れかけている。そう思わずに済む形を、最初に用意しておく。

ステップ4:薄れる時期を先に知っておく#

最初の実験で、効果は時間とともに薄れ、特に感謝祭の休暇のあとで大きく落ちた。休みで生活のリズムが崩れると、仕組みごと止まりやすい。

6,792人の再検証では、差は10〜14%で、最初の51%よりずっと小さかった。著者たちは、その理由を比べた相手の違いで説明している。2014年の比較相手はギフトカードをもらった群だったが、2020年の実験では、比べた両方の群がオーディオブックを受け取っていた。楽しみそのものの効果が両方に入っているので、差が小さく出たという説明だ。

自分の生活に置きかえると、薄れやすいのはこんなときだ。

  • 連休、帰省、出張
  • 楽しみにしていた物語を聴き終えたとき
  • 季節が変わって、歩く時間帯が暗く寒くなったとき

2つ目は見落としやすい。1冊聴き終えた翌日に、次の楽しみが用意されていないと、箱が空のまま残る。聴き終わる少し前に、次の作品を決めておく。

ステップ5:休んだあとの「戻り方」を先に決める#

6万人規模の比較で1位だった方法は、楽しみの組み合わせではなかった。ジムを休んだあと、戻ってきたら小さなご褒美がもらえる仕組みだった。

1位の方法の中身数字
戻ったときの上乗せのご褒美125ポイント(約0.09ドル)。ほんのわずかな額
参加ポイントだけの群との差週あたりの通う回数が0.40回多い(27%増)
計画づくり・リマインド・通うたびのポイント(どの方法にも共通の土台)だけの群との差週0.27回多い(16%増)。これが「戻ったときの上乗せ」で増えた分
ステップ5:休んだあとの「戻り方」を先に決める

論文の著者たち自身が、上位に選ばれた方法の効果は高めに出ている可能性が高いと書いている。それでも、約0.09ドルの上乗せで共通の土台より16%多く通ったという結果は小さくない。休んだこと自体を責めるより、戻ってきたことに何かを返すほうが、行動は戻りやすい。

楽しみの組み合わせにこれを足すなら、「休んだ翌日に歩きに出たら、その日だけは2話続けて聴いていい」のように、戻った日だけの上乗せを決めておく。最初から決めておけば、休んだ日の夜に「もういいや」と全部やめる流れを止めやすい。

記事同士の会話:以前の記事「『1回サボったら終わり』という思考が挫折を招く仕組み」では、1回の失敗で全部を投げ出してしまう考え方を扱った。今回の1位の方法は、その考え方に対する仕組み側の答えの1つとして読める。

今日からできる3つの行動#

  1. ステップ1の表を見て、続けたいことを1つだけ「場所つき」で書く。 「夕食後に近所を20分歩く」のように、始まりと終わりが分かる形にする。
  2. 続きが気になる楽しみを1つ選び、今夜その行動の中でだけ再生する。 鍵のかけ方(イヤホンを運動用の袋に入れる、など)も1つ決める。
  3. 「休んだ翌日に戻ったら、何を上乗せするか」を1行メモしておく。 休んだ日に考えると甘くなるので、休む前の今日決める。

アプリで続ける#

VITA Boardには、1位の方法のような「戻ったらご褒美」の仕組みそのものはない。近い考え方のものとして、2日以上あいてからアプリを開くと「おかえりなさい」の画面が出る。休んだことを責める表示はなく、「水を1杯だけ記録する」「体重を記録する」「あとで」のボタンから、軽いものを選んで再開できる(通知から開いたときは、この画面は出ない)。また、連続記録が2日以上続いていれば、記録のない日に「おやすみ券」が自動で使われて連続記録は途切れない。券は週に1枚もらえて、最大2枚まで持てる。上の行動3で決めた「戻った日の上乗せ」と合わせて使える。→ VITA Boardを試す

誤解の墓場#

誤解実際は
楽しみとセットにすれば、ずっと続く最初の実験では効果は時間とともに薄れ、休暇のあとに大きく落ちた。6万人規模の比較では、プログラム終了後も効果が測れた方法は8%だけだった
組み合わせ方を知ることが一番効く6万人規模の比較では、オーディオブックを渡しただけ(4位)のほうが、組み合わせ方の説明つき(9位)より上だった。2020年の研究でも、説明を足した上乗せの効果は控えめだった。楽しみを実際に用意することのほうが効いている可能性がある
誤解の墓場

この記事について#

  • 更新日:2026年10月8日
  • 本記事はAI(Claude)が一次情報を確認しながら執筆し、運営者が公開しています。
  • 読んだ範囲:Milkmanら(2014年)は、PubMed Centralの本文で人数(3群で226人、各75・75・76人)、回帰分析の差(週0.31回・p=0.026、週0.14回・p>0.10)を確認しました。Kirgiosら(2020年)とMilkmanら(2021年)は論文本文で、人数・期間・比較の相手・効果の数値・順位を確認しました。Kirgiosら(2020年)の「渡さなかった群」との比較は、6万人規模の研究の参加者を比較相手に使ったもので、事前に登録された分析ではないと論文に書かれています。ステップ3の家での鍵のかけ方と、ステップ5の「2話続けて聴く」上乗せは筆者の工夫例で、研究で確かめたものではありません。
  • どの研究も米国のジム通いを対象にしたもので、体重の変化は測っていません。この記事は、運動や食事による体重への効果を示すものではありません。持病があって運動を制限されている人は、主治医の指示を優先してください。
  • 記事末尾に自社アプリの紹介があります。第三者の広告・アフィリエイトは含みません。

出典・参考


この記事を書いた人:ミミVITA Board 開発者

健康管理アプリ「VITA Board」の開発者。記事の数字は論文・厚生労働省等の公開情報を確認してから書いています。誤りに気づいた方はお問い合わせから教えてください。 運営者情報

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