ケアマネを辞めたいと思ったとき、最初にやることは求人検索ではない。辞めたい理由が「この事業所」「ケアマネという職種」「介護業界そのもの」のどれにあるかを切り分ける作業だ。ここを飛ばすと、同じ不満の職場に移り直すだけになる。この記事では切り分けの手順、資格が生きる転職先9つの比較表、条件を見る5基準、そのまま使える文例4本をまとめた。制度の記述は2026-09-20時点のものとする。
この記事の内容
「辞めたい」を3層に切り分ける。求人を見るのはその後#
結論。辞めたい理由が第1層なら転職先はケアマネのままでよく、第2層なら職種を変える必要があり、第3層なら介護業界の外まで視野に入る。探す範囲そのものが変わるので、切り分けが先になる。
| 層 | 原因の場所 | よくある訴え | 打ち手 |
|---|---|---|---|
| 第1層 | 事業所 | 件数の偏り、持ち帰り、併設サービスへの誘導、管理者との関係 | 同じ職種で事業所を変える |
| 第2層 | 職種 | 書類量、責任の重さ、家族対応、時間外の連絡 | 相談員やサ責など職種を変える |
| 第3層 | 業界 | 報酬水準、人員不足、改定の頻度 | 福祉用具や制度側、異業種も見る |
19時に事業所へ戻り、そこから記録を開く。翌日の担当者会議の資料は白紙のまま。こういう日が月の半分を超えるなら、それは気合の問題ではなく、件数と人員配分の問題だ。原因の置き場所を間違えると、次の職場でも同じ夜が来る。
なぜこの順で見るのか#
面接で退職理由を聞かれたとき、答えの説得力がこの切り分けで決まるからだ。第1層の不満を抱えたまま第3層の言葉(業界に未来がない)で語ると、採用側には「どこへ行っても続かない人」に見える。逆に第2層の理由を「人間関係」に丸めると、職種を変えれば解決する話が職場ガチャの話に化ける。私は施設のケアマネとして働いているが、辞めたい理由の分類は自分の弱さの棚卸しではなく、次の職場の条件表を作る作業だと考えている。
切り分けチェックリスト#
チェックはこの端末に保存されます。印刷して現場に貼る場合はそのまま印刷してください。
資格が生きる転職先9つの比較#
介護支援専門員の資格と実務経験は、居宅のプラン作成だけに使うものではない。制度を読み、他職種と調整し、家族に説明する力は、次の9か所で値段がつく。
| 転職先 | 仕事の中心 | 向く人 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 別の居宅 | プラン作成と給付管理 | 第1層が理由の人 | 件数と逓減制の運用は事業所差が大きい |
| 施設ケアマネ | 施設サービス計画、入退所調整 | 単独訪問と通院同行を減らしたい人 | 介護業務や相談員との兼務が前提の求人が多い |
| 地域包括 | 総合相談、権利擁護、予防支援 | 個別支援より地域づくりに関心がある人 | 虐待対応など重い相談が回ってくる |
| 小多機・看多機 | 通い泊まり訪問の計画作成 | 生活全体を一つの事業所で見たい人 | 現場のシフトに入る前提の募集が多い |
| 生活相談員 | 入退所、家族対応、稼働率管理 | 対外折衝と調整が得意な人 | 稼働率の数字が評価に直結する |
| サ責 | 訪問計画、ヘルパー調整 | 在宅の生活支援に戻りたい人 | 人員が欠けた日は自分が訪問に入る |
| 病院の連携室 | 退院支援、制度案内 | 医療との橋渡しをしたい人 | 社会福祉士を要件にする求人が多い |
| 福祉用具・住改 | 選定、提案、モニタリング | 物と環境で解決するのが好きな人 | 売上目標が設定される場合がある |
| 保険者・企業 | 点検事務、研修、導入支援 | 制度やシステムの側に回りたい人 | 募集が少なく、任期付きのこともある |
9つのうち、いまの職場からいちばん遠い1つを必ず候補に残してほしい。近い順に3つだけ見ると、第2層・第3層の理由が隠れたまま同じ職種に戻ることになる。求人の実数と条件を並べて比べたい段階なら、介護職向けの転職支援サービスに担当件数と時間外の実態まで聞いてもらうのが早い。
転職先の選び方5基準と確認の進め方#
求人票に書かれない項目ほど、辞めたい気持ちの原因に直結する。次の5つを、応募前か面接で必ず数字で聞く。
- 担当件数の実数と逓減制の運用を聞く。募集要項の「35件程度」ではなく、いま在籍している常勤1人あたりの実数を聞く。数字を出せない事業所は、管理していないということだ。
- 記録と給付管理のICT環境を確認する。ケアプランデータ連携システムを使っているか、訪問先からスマホやタブレットで記録できるか。この2つが持ち帰りの量を決める。
- 更新研修と主任研修の扱いを確認する。受講料は自費か事業所負担か、研修日は勤務扱いか有給消化か。数年先に管理者になれるかどうかもここで決まる。
- 給与の出どころを確認する。基本給、資格手当、処遇改善の配分、賞与の算定根拠を分けて聞く。総支給だけ比べると入職後に崩れる。
- 時間外の連絡体制を確認する。24時間の携帯当番が輪番か個人持ちか、手当がつくか。第1層の不満はここに集中していることが多い。
注意。求人票の「残業ほぼなし」は、持ち帰りの作業と時間外の電話が数に入っていないことがある。残業時間ではなく「先月、20時以降に電話が鳴った回数」を聞くほうが実態に近い。
5基準を自分で全部確認するのが難しければ、条件の聞き取りを代行してもらう方法もある。在職中で見学の時間が取れない人ほど、面接前に件数と時間外の実態を出してもらう価値が大きい。
年収と続けやすさを決める3つの制度#
処遇改善加算が居宅のケアマネに届きにくい理由#
2024年度(令和6年度)の介護報酬改定で、介護職員の処遇改善に関する加算は介護職員等処遇改善加算に一本化された。この加算の対象は介護サービスの事業所で、居宅介護支援は対象サービスに含まれていない。施設や事業所に勤めるケアマネは、事業所に入った加算を配分される余地があるが、居宅介護支援事業所のケアマネには構造上そのお金が入らない。基本給が同じ求人でも手取りが変わるのは、ここが理由になっていることが多い。
逓減制と担当件数の見直し#
同じ2024年度改定で、居宅介護支援費の逓減制が適用される件数の基準が見直され、ケアプランデータ連携システムの利用と事務職員の配置を行う事業所ではさらに緩和される扱いになった。人員基準上の担当件数の考え方も併せて見直されている。1人が持てる件数の上限は上がっている。だからこそ、面接で聞くべきは「基準上は何件まで」ではなく「実際に何件持っているか」になる。
更新研修と主任介護支援専門員#
介護支援専門員証の有効期間は5年で、更新には更新研修の修了が必要になる。費用と日程の扱いは事業所ごとに違い、自費かつ公休で受ける職場もある。また、居宅介護支援事業所の管理者を主任介護支援専門員とする要件には経過措置が置かれ、2027年3月末までとされている。主任研修に送り出す方針があるかどうかは、5年後の自分の選択肢の数に直結する。
注意。健康面の不調が続いていて辞めたい場合は、転職先選びより先に受診を優先してほしい。眠れない状態が2週間以上続いているなら、主治医やかかりつけ医に相談する。
辞める前にやる7手順#
- 退職希望日を決め、そこから逆算表を作る。法律上は申し入れから2週間で雇用契約を終了できるとされるが、就業規則で1か月前から2か月前の申し出を求める事業所が多い。まず就業規則を確認する。
- 担当利用者の引き継ぎ表を作る。氏名、認定の有効期間、直近のモニタリング日、次の更新申請の時期、キーパーソン、揉めている論点の5項目でよい。
- 保険者や関係事業所への連絡時期を管理者と決める。担当変更の届出と、利用者への説明の順番を先に決めておく。
- 介護支援専門員証の満了日と、次の更新研修の募集時期を確認する。無職の期間に更新時期が重なると、受講の手続きが煩雑になる。
- 有給の残日数、離職票の発行時期、雇用保険の見込みを確認する。
- 求人を前章の5基準で比較する。3社以上並べないと相場が分からない。
- 面接で話す退職理由を1分の長さに整える。事実、困った点、次に求める条件の順で組み立てる。
そのまま使える文例4本#
- 管理者へ切り出すときお時間よろしいでしょうか。年度末での退職を考えています。担当の引き継ぎに時間がかかると思うので、先にお伝えしておきます。
- 利用者と家族へ担当変更を伝えるとき◯月から担当が△△に代わります。これまでの経過とご意向は、そのまま引き継ぎます。次回の訪問は△△と一緒にうかがいます。
- 面接で退職理由を聞かれたとき担当件数が増えた時期が続き、モニタリングの間隔を守る調整が難しい状況でした。件数の目安と記録の仕組みを確認したうえで、長く続けられる場所を探しています。
- 面接でこちらから件数を確認するとき常勤のケアマネおひとりあたりの担当件数は、現在何件くらいでしょうか。逓減制の適用状況と、事務職員の配置についても教えていただけますか。
面接での伝え方はここで差がつく#
人間関係が合わず、上司のやり方にもついていけませんでした。
担当件数が増えた時期が続き、モニタリングの間隔を守る調整に限界がありました。件数の上限と記録の仕組みが決まっている事業所で働きたいと考えています。
同じ出来事でも、前者は人の問題、後者は運用の問題として伝わる。採用側が知りたいのは、うちで同じことが起きるかどうかだけだ。
まとめ#
- 辞めたい理由を事業所・職種・業界の3層に切り分ける。探す範囲がこれで決まる
- ケアマネ資格が生きる転職先は9つある。いちばん遠い1つを候補に残す
- 条件は担当件数の実数、ICT環境、研修の扱い、給与の出どころ、時間外の連絡体制の5つで比べる
- 居宅介護支援は処遇改善加算の対象サービスに含まれない。手取りの差はここから生まれることが多い
- 面接では、人の問題ではなく運用の問題として退職理由を話す
次の一歩は、チェックリストの6項目を今日のうちに紙に書き出すこと。書き出した内容が第1層に偏るなら、転職先は同じ職種で足りる。第2層と第3層に散るなら、比較表の9つを上から順に当ててほしい。
よくある質問#
ケアマネを辞めたら、資格は返さないといけませんか。
返す必要はありません。介護支援専門員証は有効期間が5年で、期間内であれば実務を離れていても資格そのものは残ります。ただし更新には更新研修の修了が必要になるため、満了日と研修の募集時期は在職中に確認しておくと手続きが楽になります。
在職中は転職活動の時間が取れません。
見学と面接を同じ日にまとめるか、5基準の聞き取りを転職支援サービスに先に済ませてもらう方法があります。退職してから探すと、更新研修や社会保険の切り替えが重なって判断が雑になりがちです。
施設ケアマネに移れば書類は減りますか。
単独訪問と通院同行、給付管理の負担は減る傾向があります。一方で、施設サービス計画に加えて相談員業務や介護シフトとの兼務を求められる求人が多く、総量が減るとは限りません。兼務の有無を必ず求人票と面接の両方で確認してください。
一度、現場の介護職に戻るのはキャリアダウンですか。
評価の分かれるところですが、実務経験として無駄にはなりません。介護支援専門員の資格は保持したまま現場に戻り、体調と生活を立て直してから計画作成の職に戻る人もいます。戻る前提なら、資格証の有効期間だけは管理しておいてください。
引き継ぎ先のケアマネがいないので辞められません。
引き継ぎ先の確保は事業所の責任で、退職の可否を左右するものではありません。できることは、引き継ぎ表を整えて誰が来ても再現できる状態にしておくことです。担当変更の届出と利用者への説明の順番は、管理者と日付を決めて文書で残します。
転職すれば年収は上がりますか。
上がる保証はありません。居宅から施設や他サービスへ移ると処遇改善加算の配分対象になる可能性はありますが、配分方法は事業所ごとに異なります。基本給、資格手当、加算の配分、賞与の算定根拠を分けて確認してください。
出典#
- 厚生労働省「令和6年度介護報酬改定の概要」(令和6年)
- 厚生労働省「介護職員等処遇改善加算等に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について」(令和6年)
- 厚生労働省「指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準」(令和6年改正時点)
- 厚生労働省「介護支援専門員資質向上事業の実施について」(更新研修・主任介護支援専門員研修の実施要綱)
- 公益財団法人介護労働安定センター「令和5年度 介護労働実態調査」
- 厚生労働省「令和5年度 介護従事者処遇状況等調査結果」