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親の介護でお金がない時どうする?費用を下げる制度7つと申請順

約11分で読めます2026-09-12 更新制度お金
この記事の要点

親の介護でお金が足りないと感じた時、最初に手を付けるのは子どもの貯金ではありません。順番は決まっています。1つ目に親の収入と資産を1枚に書き出す。2つ目に自己負担の上限を下げる制度を申請する。3つ目に、それでも残った不足額だけを家族で分担する。特に高額介護サービス費と負担限度額認定の2つは、申請しなければ1円も戻りません。この記事では2026年9月12日時点の制度で、使える制度7つと申請の順番、窓口、必要書類までを具体的に書きます。

この記事の内容

「お金がない」は3つの型に分かれる。最初に切り分ける#

結論

結論。同じ「お金がない」でも、打つ手はまったく違います。ここを切り分けずに役所へ行くと、窓口をたらい回しにされて半日が消えます。

見分け方最初にやること
資産不足年金と貯金で月額を払えない負担軽減の制度を全部申請
口座凍結貯金はあるが本人が出せない口座の動かし方を確保
把握不足通帳や証券の在りかが不明資産の一覧化から着手
「お金がない」は3つの型に分かれる。最初に切り分ける

私は施設の相談員として入所前の費用相談を受ける側にいますが、相談の入口でいちばん多いのは3つ目の把握不足です。年金額も預貯金も分からないまま「うちは無理だと思う」と話が始まります。この状態では制度の判定ができません。介護保険の負担割合も、施設の食費の段階も、本人の所得と預貯金で決まるからです。

資産の一覧化は通帳・保険証券・年金振込通知書の3点でいい#

完璧な財産目録は不要です。必要なのは、年金の額(年金振込通知書)、預貯金の残高(通帳またはネット照会)、生命保険の有無(保険証券)の3点です。この3点があれば、後に出てくる制度の判定はほぼ通ります。

費用を下げる制度は7つ。順番は上限→食費→軽減→税→貸付#

以下の7つが本体です。窓口が分かれているので、動く順番を決めてから出かけてください。

制度効く場面窓口
高額介護サービス費在宅・施設どちらも市区町村の介護保険担当
負担限度額認定特養や老健の入所、ショートステイ市区町村の介護保険担当
高額医療合算介護サービス費入院と介護が重なった年加入する医療保険と介護保険担当
社会福祉法人の負担軽減非課税かつ預貯金が少ない市区町村と利用中の事業所
障害者控除対象者認定要介護認定を受けている市区町村の高齢福祉担当
医療費控除施設費用やおむつ代税務署(確定申告)
生活福祉資金貸付一時的な立て替えが必要社会福祉協議会
費用を下げる制度は7つ。順番は上限→食費→軽減→税→貸付
  1. 高額介護サービス費の区分を確認する(申請書が市区町村から届いている場合が多い)
  2. 施設入所やショートステイを使うなら負担限度額認定を申請する
  3. 非課税で預貯金が少なければ、社会福祉法人の負担軽減を事業所に確認する
  4. 年明けに障害者控除対象者認定書を取り、医療費控除と合わせて確定申告する
  5. それでも足りない月がある場合だけ、社会福祉協議会で貸付を相談する
ここは間違えやすい

注意。この順番には理由があります。上から順に「申請だけで下がる」ものから並べてあります。税の還付は翌年、貸付は返済が発生するため、先に手を付ける価値が低い。順番を逆にすると、借りなくてよい借金をすることになります。

高額介護サービス費の上限額早見表(2026-09-12時点)#

1か月の自己負担が上限を超えた分は、申請により払い戻されます。上限は所得区分で決まります。

区分上限額(月額)
課税所得690万円以上140,100円(世帯)
課税所得380万円以上690万円未満93,000円(世帯)
市町村民税課税から課税所得380万円未満44,400円(世帯)
市町村民税非課税世帯24,600円(世帯)
非課税かつ年金収入等が80万円以下24,600円(世帯)、15,000円(個人)
生活保護受給者など15,000円(個人)
高額介護サービス費の上限額早見表(2026-09-12時点)
ここは間違えやすい

注意。この制度が戻すのは介護サービスの1割から3割負担の部分だけです。食費、居住費(部屋代)、日用品費、福祉用具の購入費、住宅改修費は対象外です。施設に入ると請求額の半分近くが食費と部屋代になるため、施設の場合の本命は次に出てくる負担限度額認定になります。

在宅の場合は、そもそも保険が使える上限(区分支給限度基準額)があります。これを超えた分は全額自己負担です。

要介護度限度額(単位/月)1割の目安
要支援15,032約5,000円
要支援210,531約10,500円
要介護116,765約16,800円
要介護219,705約19,700円
要介護327,048約27,000円
要介護430,938約30,900円
要介護536,217約36,200円
高額介護サービス費の上限額早見表(2026-09-12時点)

1単位10円で換算した概算です。実際は地域区分とサービス種別で単価が変わるため、正確な額はケアマネジャーの作る利用票で確認してください。

関連記事: 高額介護サービス費はいくら戻る?計算式と上限額早見表2026

施設の食費と部屋代は預貯金で段階が決まる#

特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護医療院、ショートステイを使う場合、市町村民税非課税世帯であれば食費と居住費に上限(負担限度額)が設定されます。ここで見られるのは所得だけでなく預貯金です。

段階対象預貯金の上限(単身)
第1段階生活保護受給者、老齢福祉年金受給者で非課税世帯1,000万円
第2段階非課税世帯、年金収入等80万円以下650万円
第3段階1非課税世帯、80万円超120万円以下550万円
第3段階2非課税世帯、120万円超500万円
施設の食費と部屋代は預貯金で段階が決まる

夫婦の場合はそれぞれ1,000万円を加算した額が上限です。ここでつまずく人が多いのが世帯の数え方で、別世帯に分けていても配偶者が課税されていれば対象外になります。世帯分離だけでは通りません。

ここは間違えやすい

注意。負担限度額認定証は毎年8月1日で切り替わります。7月中に更新申請を出さないと、8月分の食費と部屋代が軽減前の額で請求されます。更新の案内は6月から7月に届くので、郵便物を止めずに確認してください。

実際の日額は年度改定で動きます。金額の確定値は申請時に交付される認定証と、施設から渡される重要事項説明書の料金表で照合してください。

関連記事: 世帯分離で介護費用は下がる?効く人の3条件とデメリット5つ

親の口座が動かせない時に取る順番#

貯金はあるのに引き出せない。これが2つ目の型です。原則は単純で、親の介護費用は親のお金で払います。子どもの家計から立て替え続けると、あとで相続時に精算できず、きょうだい間の争いになります。

  1. 本人の判断能力があるうちに、代理人カードや代理人指名手続きを銀行で行う
  2. 引き出した額と使途をノートかアプリで記録し、きょうだいと共有する
  3. 判断能力が落ち始めたら、社会福祉協議会の日常生活自立支援事業を相談する
  4. あらかじめ備えるなら任意後見契約を公証役場で結ぶ
  5. すでに契約も管理も難しい場合に、家庭裁判所へ成年後見の申し立てを行う

全国銀行協会は2021年2月、本人の医療費や介護費など本人の利益が明らかな支払いについては、親族からの払い出し依頼に応じうるという考え方を示しています。窓口で断られた時は、この考え方に沿って支店で相談したいと伝えてください。伝え方で結果が変わります。

親の口座が動かせない時に取る順番3本
  1. 母の介護施設の利用料の支払いです。請求書と、母の要介護認定の通知書を持参しました。本人名義の支払い先へ直接振り込む形でお願いできますか。
  2. 本人が来店できない状態です。医療費と介護費に限った払い出しについて、御行の取り扱いを教えてください。支店で判断いただけるか確認したいです。
  3. 今後のために代理人カードの手続きをしたいです。本人が来店できる日に合わせて、必要書類を先に教えてください。

ケアマネジャーへの相談も、言い方で出てくる情報が変わります。

ビフォー

お金がないので、なるべく安くしてください。

アフター

母の年金は月11万円で、預貯金は200万円です。毎月の自己負担を3万円以内に収めたいのですが、使える軽減制度と、その範囲で組めるプランを教えてください。

金額を先に出すほうが、ケアマネジャーは制度を当てられます。予算を伏せたまま安くしてほしいと言うと、単純に回数を削る調整になり、結果として在宅生活が続かなくなります。

介護離職はいちばん高い買い物になる#

費用の相談で最後まで残るのが、仕事をどうするかです。介護のために離職すると、給与だけでなく将来の年金原資まで減ります。先に使うべき制度が3つあります。

  • 介護休業: 対象家族1人につき通算93日まで、3回まで分割取得が可能
  • 介護休業給付金: 一定の要件を満たすと休業前賃金の67%が支給される
  • 介護休暇: 年5日(対象家族2人以上は10日)、時間単位でも取得できる

2025年4月からは、介護に直面した旨を申し出た労働者に対して、勤務先が制度を個別に周知し意向を確認することが義務化されました。人事に相談すること自体が制度上の入口になっています。まず93日をどう使うかを決め、その間に在宅サービスの体制を組むのが現実的な順序です。

介護のために働き方そのものを変える判断になった場合は、収入を落とさずに続けられる職場かどうかを先に確認してください。辞めてから探すと、選択肢が極端に狭くなります。

1か月で申請を終わらせる実行手順7#

  1. 年金振込通知書、通帳、保険証券の3点を集める(所要30分)
  2. 市区町村の介護保険担当に電話し、高額介護サービス費の該当有無と申請書の要否を確認する
  3. 施設利用またはショートステイの予定があれば、同じ窓口で負担限度額認定を申請する(本人と配偶者の通帳の写しが必要)
  4. 非課税世帯なら、利用中の事業所に社会福祉法人の負担軽減の取り扱いがあるか聞く
  5. 高齢福祉担当で障害者控除対象者認定書を申請する(要介護認定があれば対象になる場合がある)
  6. 医療費の領収書とおむつ使用証明書をまとめ、翌年の確定申告に備えて袋にまとめる
  7. それでも不足が続くなら、社会福祉協議会で生活福祉資金の相談予約を取る

窓口に行く前のチェックリストです。持ち物が1つ欠けると再訪問になります。

1か月で申請を終わらせる実行手順70 / 7

チェックはこの端末に保存されます。印刷して現場に貼る場合はそのまま印刷してください。

なぜこの順番で見るのか#

制度を金額の大きい順に並べたくなりますが、正しい並べ方は「確実性の高い順」です。理由は3つあります。

1つ目は、判定に他人の裁量が入らないものから片づけるためです。高額介護サービス費と負担限度額認定は、所得と預貯金の数字で機械的に決まります。窓口の説明のうまい下手や、相談員の力量に左右されません。

2つ目は、下限が先に決まらないと次の判断ができないからです。毎月の自己負担がいくらまで下がるのかが確定して初めて、在宅を続けるのか施設を探すのかを比較できます。順番を逆にして施設見学から始めると、払える額が分からないまま契約の話が進みます。

3つ目は、お金の出所を親に固定するためです。子どもが立て替え始めると、家計の余力がある人が黙って負担し続ける形になり、後で誰も精算できません。制度を先に通してから不足額を見れば、分担の話が金額の話になります。感情の話にならずに済みます。

まとめ#

  • 「お金がない」は資産不足、口座凍結、把握不足の3つの型に分かれる。切り分けてから動く
  • 使える制度は7つ。上限を下げる制度、食費を下げる制度、税、貸付の順に手を付ける
  • 高額介護サービス費は自己負担分だけが対象。施設の食費と部屋代は負担限度額認定で下げる
  • 負担限度額認定は預貯金も見られる。更新は毎年7月中に出す
  • 親の費用は親のお金で払う。口座が動かない時は代理人手続きから成年後見までの順で検討する
  • 介護離職は最後の手段。介護休業93日と給付金を先に使う

次の一歩は1本の電話です。市区町村の介護保険担当に「高額介護サービス費の対象か確認したい」と伝えるところから始めてください。ここが全部の入口になります。

よくある質問#

高額介護サービス費は申請しないと戻りませんか。

初回は申請が必要です。多くの市区町村では該当した月に申請書が郵送され、一度申請すれば以後は同じ口座へ自動で振り込まれます。申請できる期間には時効(2年)があるため、心当たりがあれば過去分も窓口で確認してください。

親に貯金が1,000万円あります。制度は何も使えませんか。

高額介護サービス費は預貯金を見ないので、所得区分に応じた上限は適用されます。使えないのは負担限度額認定と社会福祉法人の負担軽減です。預貯金が要件を下回った時点で申請できるので、資産が減った段階で再度確認してください。

世帯分離すれば費用は下がりますか。

下がる人と下がらない人がいます。高額介護サービス費は世帯の課税状況で判定するため効く場合がありますが、負担限度額認定では別世帯の配偶者の課税状況も見られます。国民健康保険料が上がって差し引きで損になる例もあるため、分離前に市区町村で試算してもらってください。

施設の費用が払えなくなったら退所になりますか。

滞納が続けば契約解除の対象になりますが、その前に相談する先があります。施設の相談員、担当ケアマネジャー、市区町村の高齢福祉担当の3つです。軽減制度の未申請や、区分変更で費用が変わる余地が残っていることが少なくありません。黙って滞納するのが最も選択肢を狭めます。

認知症の症状や服薬について、費用を下げるために減らしてもいいですか。

医療の内容に関わる判断は費用から決めないでください。薬の量や中止は主治医、かかりつけ医に相談してください。費用の相談は介護保険の担当窓口とケアマネジャー、医療の判断は医師と、窓口を分けるのが安全です。

子どもに扶養義務があるので、子どもが払うのが当然ではないですか。

民法上の扶養義務は、自分の生活を犠牲にしない範囲(生活扶助義務)と解されています。子どもの生活が立ち行かなくなるまで負担する義務ではありません。まず本人の資産と制度で組み立て、不足分を家族で協議する順序が実務的です。

出典#

出典・参考
  • 厚生労働省「介護保険の解説 サービスにかかる利用料」(高額介護サービス費、区分支給限度基準額)
  • 厚生労働省「令和3年8月利用分からの高額介護サービス費および特定入所者介護サービス費(補足給付)の見直しについて」
  • 厚生労働省「介護保険最新情報」(負担限度額認定の預貯金等要件および更新の取扱い)
  • 一般社団法人全国銀行協会「金融取引の代理等に関する考え方および銀行と地方公共団体・社会福祉関係機関等との連携強化に関する考え方について」2021年2月
  • 厚生労働省「育児・介護休業法の改正について」(2025年4月1日施行分、介護離職防止のための個別周知・意向確認の義務化)
  • 国税庁「医療費控除の対象となる介護保険制度下のサービスの対価」タックスアンサー
  • 厚生労働省「社会福祉法人等による利用者負担軽減制度事業」
  • 全国社会福祉協議会「生活福祉資金貸付制度のご案内」


この記事を書いた人:ミミ介護支援専門員(ケアマネジャー)

介護施設で生活相談員・ケアマネジャーとして勤務。現場の職員研修と介護現場でのAI活用の推進に携わっています。記事の数字・制度は一次資料の原文を開いて確認してから書いています。誤りに気づいた方はお問い合わせから教えてください。 運営者情報

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