2026年9月5日時点で、育成就労制度はまだ始まっていない。根拠となる改正法は2024年6月に成立・公布済みだが、施行日は公布から3年以内に政令で定める日で、法律上の期限は2027年6月20日である。だから2026年度に介護事業所がやるのは制度対応ではなく、転籍される側にならない準備だ。この記事では、技能実習から変わる7点のうち介護に効く3点に絞り、今年度中に踏む7手順と、監理団体への確認文例まで書く。
この記事の内容
2026年に育成就労は始まらない。今年度に固まるのは介護分野のルール#
育成就労 2026 で検索すると、2026年から制度が切り替わるかのような書き方の記事が出てくる。まず事実関係を整理する。
- 2024年6月14日 改正法が成立 (令和6年法律第60号)。6月21日に公布
- 施行日は公布から3年以内の政令で定める日。法律上の期限は2027年6月20日
- 施行前に、政府が基本方針を、分野ごとに分野別運用方針を定める
結論。2026年度は制度が変わる年ではなく、介護分野の数字が固まる年だ。事業所が構えるべきは施行日そのものではない。分野別運用方針で決まる3つの数字 (転籍できるまでの期間、受入れ人数枠、日本語の要件) のほうが、来年度以降のシフト表に直接効く。
施行日は政令で決まるため、この記事の公開後に日付が公表される可能性がある。最終確認は必ず出入国在留管理庁の育成就労制度のページで行ってほしい。
いま在籍している技能実習生はどうなるか#
改正法には経過措置が置かれている。施行日に技能実習の在留資格が一斉に消えるわけではない。ただし経過措置の細部は施行までの省令や告示で定まる。だから今やれるのは、在籍者の在留期限と、次の在留資格 (特定技能1号など) への移行時期を一覧にしておくことだけだ。これを手順1に置いた。
技能実習から変わる7点|早見表#
| 項目 | 技能実習 | 育成就労 |
|---|---|---|
| 目的 | 国際貢献 | 人材確保と人材育成 |
| 期間 | 最長5年 (1〜3号) | 原則3年 |
| 到達目標 | 職種ごとの技能 | 特定技能1号の水準 |
| 本人の転籍 | 原則不可 | 要件を満たせば可 |
| 監理する側 | 監理団体 | 監理支援機関 (許可制) |
| 公的機関 | 技能実習機構 | 外国人育成就労機構 |
| 分野 | 職種・作業で指定 | 特定技能の分野と原則一致 |
本人の意向による転籍が認められる条件は、大きく3つに整理されている。
- 同一の受入れ機関での就労が1年を超えていること (当分の間、分野ごとに1年を超え2年以下の期間を設定できる)
- 技能検定基礎級等と、日本語能力A1相当以上 (日本語能力試験N5等) に合格していること
- 転籍先の受入れ機関が、適正な受入れの基準を満たしていること
介護分野が1年に置くのか2年に置くのかは、分野別運用方針で決まる。ここが2026年度の最大の注目点になる。
介護で効くのは3点だけ。なぜ転籍から先に見るのか#
7点すべてに同じ力で対応する必要はない。私は施設のケアマネ・相談員として、介護事業所が見る順番は次の3つだと考えている。理由は単純で、この3つだけが配置と採用の計算に直接入るからだ。
- 転籍 — 人が減るかどうかの話。配置基準と夜勤体制に直結する
- 監理支援機関 — 契約先の選び直しの話。年度内に動かないと間に合わない
- 日本語と試験 — 育成計画と勤務時間の話。学習時間を勤務に入れるかどうか
なぜ転籍を最初に見るのか。残り2つは事業所側の努力で整えられるが、転籍だけは本人の意思で起きるからだ。しかも介護は都市部と地方で賃金差が出やすく、夜勤回数も送迎の有無も事業所ごとに違う。地方の施設が3年育てて、要件を満たした時点で都市部へ移られる形が、構造上ありうる。制度の是非の話ではなく算数の話としてそうなる。順番を間違えて監理団体対応から入ると、契約書は整ったのに人だけいなくなる。
転籍は防ぐものではなく、選ばれ続けるもの#
転籍の制限を強める方向で準備しても、事業所にできることはほとんどない。要件は国が決めるからだ。動かせるのは、要件を満たした本人が残る理由のほうになる。賃金だけで都市部と勝負するのは無理なので、勝負する場所を変える。
- 日本語と試験の学習時間を、勤務時間の中に置く (自習を家に丸投げしない)
- 介護福祉士の受験までの道筋を、年次入りの紙で渡す
- 住居・光熱費・帰国旅費の条件を書面にして、口頭合意を残さない
朝9時前の申し送りで来月の夜勤を組むとき、3年後にこの人が在籍している前提で組めるか。その問いに書面で答えられる事業所が、結果として選ばれる。付け加えると、外国人職員が定着する事業所は日本人職員の定着率も高い傾向がある。教育の順序と説明の丁寧さという、同じ要因で動くからだ。逆に言えば、いま日本人職員が続かない職場に外国人職員だけ定着させる方法はない。
2026年度にやる7手順#
- 在籍者の在留期限を一覧にする。氏名・在留資格・期限・技能検定と日本語の取得状況を1枚にまとめる。表計算1枚でよい。ここが無いまま制度の話をしても、自分の事業所の話にならない
- 特定技能1号への移行スケジュールを引く。介護技能評価試験と介護日本語評価試験の受験日から逆算し、申請の準備期間を2〜3か月見込む
- 監理団体に4点を確認する (下の文例1)。監理支援機関の許可を取る意思があるか、外部監査人を誰にするか、手数料がどう変わるか、送出機関との取決めをどうするか
- 日本語学習を勤務時間に組み込む。週1回30分でもよいので、シフト表の中に枠として書く。書かない限り実施されない
- 受入れにかかった費用の内訳を、監理団体から書面で出させる。転籍時の費用分担の議論に必要になる
- 雇用条件書と就業規則を点検する。本人が理解できる言語での併記、住居費・食費の控除額の明示、時間外の扱いを確認する
- 分野別運用方針の公表を追う担当を1人決める。月1回、出入国在留管理庁と厚生労働省のページを見る。これを決めないと誰も見ない
ポイント。7手順のうち1・2・4は施行日と関係なく今すぐ効く。制度が固まるのを待つ理由がある手順は、3と5だけだ。
監理団体への確認文例と、職員への説明文#
- いつもお世話になっております。育成就労制度への移行にあたり、4点を書面でご教示ください。(1)監理支援機関の許可申請を行うご予定と時期、(2)外部監査人の選任予定、(3)現行の監理費から変更が見込まれる項目、(4)送出機関との取決めの見直し状況。当法人の受入れ計画の前提として整理したく、9月末までにご回答をお願いいたします。
- 当法人で受け入れている技能実習生◯名について、入国前後にかかった費用の内訳を書面でご提供ください。渡航費・講習費・監理費・住居初期費用の別が分かる形を希望します。育成就労制度で転籍時の費用分担が制度化された場合に備え、実績値を保管しておく趣旨です。
- (法人内の稟議・報告用) 育成就労制度は令和6年法律第60号として公布済みだが、施行日は公布から3年以内の政令で定める日であり、2026年9月時点で本格施行には至っていない。当施設の対応は、施行日待ちではなく、在留期限の把握・特定技能1号への移行支援・日本語学習時間の勤務内確保の3点を先行させる方針とする。
本人への説明は、制度の正確さより先に、本人の生活がどうなるかを先に言う。順番を逆にすると伝わらない。
育成就労制度という新しい制度ができました。技能実習制度は廃止されます。詳細は今後決まります。
あなたの在留期限は2027年3月です。それまでは今の仕事のままで、変わりません。次の試験は12月です。勉強の時間は、毎週水曜の15時から30分、仕事の時間の中でとります。合格したら、そのあとも同じ施設で働けます。
制度名を説明する場面と、本人の予定を伝える場面は分ける。混ぜると、本人には「何かよく分からないが自分の立場が変わるらしい」としか残らない。
在留期限の一覧や監理支援機関の比較シートをゼロから作るのが重い場合は、当サイトのnoteで配布している様式をそのまま使ってほしい。書式より、埋まっていることのほうが大事だ。
準備チェックリストとつまずきやすい3点#
チェックはこの端末に保存されます。印刷して現場に貼る場合はそのまま印刷してください。
注意。つまずきやすいのは次の3点。第一に、施行日が決まっていないことを理由に何もしない状態が一番損をする。手順1・2・4は制度と無関係に効く。第二に、転籍対策として在留カードや通帳を預かる、違約金を定めるといった対応は、現行制度でも認められておらず、育成就労でも同じだ。第三に、支援の内容を口頭で約束しないこと。担当者が代わると消える。
受入れ人数枠と訪問系サービスの扱い#
介護分野は、技能実習と特定技能のどちらも、事業所単位で日本人等の常勤介護職員の総数を超えて受け入れられない仕組みになっている。育成就労での扱いは分野別運用方針で定まるが、現行の考え方を前提に計画を立てるのが実務上は無難だ。人数枠の数え方は関連記事の「特定技能 介護の受け入れ上限2026|事業所枠の数え方と準備9手順」に整理している。
訪問系サービスについては、2025年4月から、一定の要件のもとでEPA介護福祉士候補者・技能実習生・特定技能外国人も従事できる取扱いになった。要件は事業者側 (キャリアアップ計画、ハラスメント対策、研修や同行訪問の実施など) と本人側 (一定の実務経験など) の両方にかかる。自事業所が要件を満たすかは、厚生労働省の通知と指定権者である自治体への確認が必要になる。
よくある質問#
2026年から技能実習は使えなくなりますか。
なりません。2026年9月5日時点で施行日は政令で定められる予定であり、法律上の期限は2027年6月20日です。施行後も経過措置が置かれるため、在籍中の技能実習生がその日に在留資格を失うことはありません。細部は施行までの省令・告示で定まります。
転籍されたら、入国前にかけた費用は戻りますか。
改正法では、本人の意向による転籍の際に、前の受入れ機関が負担した初期費用の一部を転籍先が分担する仕組みを設けることとされています。ただし対象となる費用の範囲と算定方法は今後の政省令で定まります。だから今やることは、実際にかかった費用の内訳を書面で保管しておくことです。
受入れ人数枠は変わりますか。
介護分野の受入れ人数枠は分野別運用方針で定められます。現行では事業所単位で日本人等の常勤介護職員の総数が上限です。育成就労での具体的な枠は2026年9月時点で確定していないため、現行の考え方を前提に計画し、公表後に見直すのが実務的です。
日本語能力試験や技能の試験に落ちたら、すぐ帰国ですか。
育成就労では、育成期間の終了時に試験に合格できなかった場合でも、再受験のために一定期間 (最長1年) の在留継続を認める仕組みが設けられることとされています。本人が引き続き就労を希望し、要件を満たす場合が前提です。個別の在留の可否は、地方出入国在留管理局への確認が必要です。
監理団体との契約はそのままでよいですか。
そのままにはできません。監理団体は監理支援機関として新たに許可を受ける必要があり、外部監査人の設置や、受入れ機関と密接な関係を持つ役職員が監理に関与できないことなどの要件が加わります。申請の意思と時期を、書面で早めに確認してください (文例1)。
家族が施設に入っています。職員が外国人に代わっていくのは不安です。
育成就労は、3年で特定技能1号の水準まで育てることを目的にした制度で、日本語と技能の到達要件が技能実習より明確になります。不安があるときは、施設に対して受入れ人数、日本語の到達目標、指導体制の3点を聞いてみてください。この3点を答えられる施設は、教育の体制がある施設です。
まとめ#
- 育成就労制度は2026年中には始まらない。施行は2027年6月20日までの政令で定める日
- 2026年度に固まるのは介護分野の数字 (転籍までの期間、人数枠、日本語要件)
- 介護事業所が見るのは転籍・監理支援機関・日本語の3点だけでよい
- 見る順番は転籍が先。本人の意思で起きるのは転籍だけだから
- 施行日と関係なく今日から効くのは、在留期限の一覧化・移行スケジュール・学習時間の勤務内確保
次の一歩は1つだけでよい。在籍している外国人職員の在留期限を、今日中に1枚の表にすること。制度の議論はその表を見ながらでないと、自分の事業所の話にならない。
出典#
- 出入国在留管理庁「出入国管理及び難民認定法及び外国人の技能実習の適正化及び外国人技能実習生の保護に関する法律の一部を改正する法律」(令和6年法律第60号、令和6年6月21日公布)
- 出入国在留管理庁「育成就労制度及び特定技能制度の適正化・機能強化について」(令和6年)
- 出入国在留管理庁・厚生労働省「技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議 最終報告書」(令和5年11月30日)
- 法務省・厚生労働省ほか「特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針 (介護分野)」(令和6年3月29日閣議決定)
- 厚生労働省「外国人介護人材の受入れについて」(社会・援護局)
- 厚生労働省「外国人介護人材による訪問系サービス等への従事に係る取扱いについて」(令和7年4月適用)