育成就労制度は、2027年(令和9年)4月1日に始まる (一部の規定を除く)。施行日は政令で正式に決まっている。介護分野の運用方針も2026年(令和8年)1月23日に閣議決定されていて、本人の意向による転籍は「2年」たつまでできないと定められた。つまり2026年度は、ルールを待つ年ではなく、決まったルールに合わせて事業所の中を整える年だ。この記事では、技能実習から変わる点のうち介護に効く3点に絞り、2026年度中に踏む7手順と、監理団体への確認文例まで書く。(2026年9月28日に、施行日と介護分野の運用方針の確定を反映して書き直した)
この記事の内容
施行は2027年4月1日。介護分野のルールはもう決まっている#
育成就労 2026 で検索すると、2026年から制度が切り替わるかのような書き方や、「施行日も運用方針も未定」という古い書き方の記事が混ざって出てくる。まず事実関係を整理する。
- 2024年6月14日 改正法が成立 (令和6年法律第60号)。6月21日に公布
- 施行期日を定める政令により、施行日は2027年(令和9年)4月1日 (一部の規定を除く)
- 2026年(令和8年)1月23日 介護分野を含む分野別運用方針を閣議決定
結論。2026年度は制度が変わる年ではなく、決まった数字に事業所を合わせる年だ。介護分野で決まった数字のうち、来年度以降のシフト表に直接効くのは3つ (転籍できるまでの期間=2年、受入れ人数の上限、日本語と技能の要件) である。
細かい運用は、施行までに出る省令・告示や運用要領で詰められていく。最終確認は必ず出入国在留管理庁の育成就労制度のページで行ってほしい。
いま在籍している技能実習生はどうなるか#
改正法には経過措置が置かれている。施行日に技能実習の在留資格が一斉に消えるわけではない。ただし経過措置の細部は、施行までの省令・告示や運用要領で示されていく。だから今やれるのは、在籍者の在留期限と、次の在留資格 (特定技能1号など) への移行時期を一覧にしておくことだ。これを手順1に置いた。
技能実習から変わる7点|早見表#
| 項目 | 技能実習 | 育成就労 |
|---|---|---|
| 目的 | 国際貢献 | 人材確保と人材育成 |
| 期間 | 最長5年 (1〜3号) | 原則3年 |
| 到達目標 | 職種ごとの技能 | 特定技能1号の水準 |
| 本人の転籍 | 原則不可 | 要件を満たせば可 (介護は2年たってから) |
| 監理する側 | 監理団体 | 監理支援機関 (許可制) |
| 公的機関 | 技能実習機構 | 外国人育成就労機構 |
| 分野 | 職種・作業で指定 | 特定技能の分野と原則一致 |
介護分野の運用方針では、本人の意向による転籍について次のように定められた。
- 同じ受入れ先で2年を超えて働いていること (介護分野の転籍制限期間は2年)
- 介護育成就労評価試験 (初級) と、日本語能力「日本語教育の参照枠」のA2.2相当以上に合格していること
- 転籍先の受入れ機関が、適正な受入れの基準を満たしていること
2年とされた理由として、方針は次の点を挙げている。介護は継続して利用者と向き合う対人支援で、信頼関係を築きながら専門職として育つのに時間がかかること。認知症の方をはじめ利用者にとって顔なじみの職員が続けてケアすることが大切で、家族の安心にもつながること。そして転籍を制限しなければ、地方で働き始めた人が賃金の高い都市部へ過度に流れるおそれがあること。
ただし、2年の制限を使う事業所には条件がある。介護職員等処遇改善加算の取得などの要件を満たし、そのうえで育成就労外国人1人ごとに「育成就労キャリア支援プラン」を作ることが求められる。
介護で効くのは3点だけ。なぜ転籍から先に見るのか#
7点すべてに同じ力で対応する必要はない。私は施設のケアマネ・相談員として、介護事業所が見る順番は次の3つだと考えている。理由は単純で、この3つだけが配置と採用の計算に直接入るからだ。
- 転籍:人が減るかどうかの話。配置基準と夜勤体制に直結する
- 監理支援機関:契約先の選び直しの話。施行までに動かないと間に合わない
- 日本語と試験:育成計画と勤務時間の話。学習時間を勤務に入れるかどうか
なぜ転籍を最初に見るのか。残り2つは事業所側の努力で整えられるが、転籍だけは本人の意思で起きるからだ。2年の制限は「2年は必ず残る」という意味ではなく、「2年たって要件を満たせば移れる」という意味でもある。介護は都市部と地方で賃金差が出やすく、夜勤回数も送迎の有無も事業所ごとに違う。方針自体が都市部への流出を理由に挙げているとおり、地方の施設が2年育てて、要件を満たした時点で都市部へ移られる形は、構造上ありうる。制度の是非の話ではなく算数の話としてそうなる。順番を間違えて監理団体対応から入ると、契約書は整ったのに人だけいなくなる。
転籍は防ぐものではなく、選ばれ続けるもの#
転籍の要件は国が決めるので、事業所が強めることはできない。動かせるのは、要件を満たした本人が残る理由のほうになる。賃金だけで都市部と勝負するのは無理なので、勝負する場所を変える。
- 日本語と試験の学習時間を、勤務時間の中に置く (自習を家に丸投げしない)
- 介護福祉士の受験までの道筋を、年次入りの紙で渡す (キャリア支援プランを形だけにしない)
- 住居・光熱費・帰国旅費の条件を書面にして、口頭合意を残さない
朝9時前の申し送りで来月の夜勤を組むとき、3年後にこの人が在籍している前提で組めるか。その問いに書面で答えられる事業所が、結果として選ばれる。付け加えると、外国人職員が定着する事業所は日本人職員の定着率も高い傾向がある。教育の順序と説明の丁寧さという、同じ要因で動くからだ。逆に言えば、いま日本人職員が続かない職場に外国人職員だけ定着させる方法はない。
2026年度にやる7手順#
- 在籍者の在留期限を一覧にする。氏名・在留資格・期限・技能検定と日本語の取得状況を1枚にまとめる。表計算1枚でよい。ここが無いまま制度の話をしても、自分の事業所の話にならない
- 特定技能1号への移行スケジュールを引く。介護技能評価試験と介護日本語評価試験の受験日から逆算し、申請の準備期間を2〜3か月見込む
- 監理団体に4点を確認する (下の文例1)。監理支援機関の許可を取る意思があるか、外部監査人を誰にするか、手数料がどう変わるか、送出機関との取決めをどうするか
- 日本語学習を勤務時間に組み込む。週1回30分でもよいので、シフト表の中に枠として書く。書かない限り実施されない
- 受入れにかかった費用の内訳を、監理団体から書面で出させる。転籍時の費用分担の議論に必要になる
- 雇用条件書と就業規則を点検する。本人が理解できる言語での併記、住居費・食費の控除額の明示、時間外の扱いを確認する。育成就労は直接雇用に限られる
- 受入れ条件を自事業所に当てはめる担当を1人決める。見るのは3点。処遇改善加算を取得しているか (2年の転籍制限を使う条件)、育成就労外国人5人につき1人以上の指導員を置き、うち1人以上が介護福祉士などか、夜勤など少人数の業務で利用者の安全を確保する措置を書面にしているか
ポイント。施行日も介護分野の方針も決まったので、待つ理由のある手順はもう無い。7つとも2026年度中に始められる。
監理団体への確認文例と、職員への説明文#
- いつもお世話になっております。育成就労制度への移行 (2027年4月1日施行) にあたり、4点を書面でご教示ください。(1)監理支援機関の許可申請を行うご予定と時期、(2)外部監査人の選任予定、(3)現行の監理費から変更が見込まれる項目、(4)送出機関との取決めの見直し状況。当法人の受入れ計画の前提として整理したく、◯月末までにご回答をお願いいたします。
- 当法人で受け入れている技能実習生◯名について、入国前後にかかった費用の内訳を書面でご提供ください。渡航費・講習費・監理費・住居初期費用の別が分かる形を希望します。育成就労制度で転籍時の費用分担が制度化されることに備え、実績値を保管しておく趣旨です。
- (法人内の稟議・報告用) 育成就労制度は令和6年法律第60号として公布され、令和9年4月1日に施行される。介護分野の運用方針は令和8年1月23日に閣議決定され、本人の意向による転籍の制限期間は2年、転籍には介護育成就労評価試験 (初級) と日本語A2.2相当以上の合格が必要とされた。当施設は、在留期限の把握・特定技能1号への移行支援・日本語学習時間の勤務内確保に加え、2年の転籍制限を適用するための処遇改善加算の取得状況と育成就労キャリア支援プランの作成体制を確認する方針とする。
本人への説明は、制度の正確さより先に、本人の生活がどうなるかを先に言う。順番を逆にすると伝わらない。
育成就労制度という新しい制度ができました。技能実習制度は廃止されます。詳細は今後決まります。
あなたの在留期限は2027年3月です。それまでは今の仕事のままで、変わりません。次の試験は12月です。勉強の時間は、毎週水曜の15時から30分、仕事の時間の中でとります。合格したら、そのあとも同じ施設で働けます。
制度名を説明する場面と、本人の予定を伝える場面は分ける。混ぜると、本人には「何かよく分からないが自分の立場が変わるらしい」としか残らない。
在留期限の一覧や監理支援機関の比較は、専用の様式が無くても表計算1枚で足りる。書式より、埋まっていることのほうが大事だ。
準備チェックリストとつまずきやすい3点#
チェックはこの端末に保存されます。印刷して現場に貼る場合はそのまま印刷してください。
注意。つまずきやすいのは次の3点。第一に、施行が2027年4月と先に見えることを理由に何もしない状態が一番損をする。ルールはもう決まっている。第二に、転籍対策として在留カードや通帳を預かる、違約金を定めるといった対応は、現行制度でも認められておらず、育成就労でも同じだ。第三に、支援の内容を口頭で約束しないこと。担当者が代わると消える。
受入れ人数枠と訪問系サービスの扱い#
介護分野の運用方針では、育成就労外国人も、事業所単位で日本人等の常勤介護職員の総数が上限とされた。そのうえで「ケアの質の担保や適切な指導体制を確保できる人数にすること」とされている。上限いっぱいまで受け入れてよいという意味ではない。人数枠の数え方は関連記事の「特定技能 介護の受け入れ上限2026|事業所枠の数え方と準備9手順」に整理している。
訪問系サービスについても、運用方針に扱いが書かれている。介護職員初任者研修課程などを修了し、実務経験などがある育成就労外国人に限って従事させることができ、その場合は事業者側に、研修の実施、一定期間の同行などによる訓練、キャリアアップ計画の作成、ハラスメント防止の相談窓口、不測の事態に対応できる環境整備が求められる。自事業所が要件を満たすかは、厚生労働省の通知と、指定権者である自治体への確認が必要になる。
よくある質問#
2026年から技能実習は使えなくなりますか。
なりません。育成就労制度の施行は2027年(令和9年)4月1日です (一部の規定を除く)。施行後も経過措置が置かれるため、在籍中の技能実習生がその日に在留資格を失うことはありません。細部は施行までの省令・告示や運用要領で示されます。
介護の転籍は何年たったらできますか。
介護分野の運用方針で、本人の意向による転籍の制限期間は2年と定められました。2年を超えて同じ受入れ先で働き、介護育成就労評価試験 (初級) と日本語A2.2相当以上に合格していることなどが条件です。2年の制限を適用する事業所は、処遇改善加算の取得などの要件を満たし、1人ごとに育成就労キャリア支援プランを作る必要があります。
転籍されたら、入国前にかけた費用は戻りますか。
改正法では、本人の意向による転籍の際に、前の受入れ機関が負担した初期費用の一部を転籍先が分担する仕組みを設けることとされています。対象となる費用の範囲と算定方法は、省令・告示や運用要領で示されます。だから今やることは、実際にかかった費用の内訳を書面で保管しておくことです。
受入れ人数枠は変わりますか。
介護分野の運用方針で、育成就労外国人も事業所単位で日本人等の常勤介護職員の総数が上限とされ、ケアの質の担保や適切な指導体制を確保できる人数にすることとされました。
日本語能力試験や技能の試験に落ちたら、すぐ帰国ですか。
育成就労では、育成期間の終了時に試験に合格できなかった場合でも、再受験のために一定期間 (最長1年) の在留継続を認める仕組みが設けられることとされています。本人が引き続き就労を希望し、要件を満たす場合が前提です。個別の在留の可否は、地方出入国在留管理局への確認が必要です。
監理団体との契約はそのままでよいですか。
そのままにはできません。監理団体は監理支援機関として新たに許可を受ける必要があり、外部監査人の設置や、受入れ機関と密接な関係を持つ役職員が監理に関与できないことなどの要件が加わります。申請の意思と時期を、書面で早めに確認してください (文例1)。
家族が施設に入っています。職員が外国人に代わっていくのは不安です。
育成就労は、3年で特定技能1号の水準まで育てることを目的にした制度です。介護分野では、受け入れる前の時点で日本語A2.2相当以上が求められ、指導員は5人につき1人以上、うち1人以上は介護福祉士などとされています。不安があるときは、施設に対して受入れ人数、日本語の到達目標、指導体制の3点を聞いてみてください。この3点を答えられる施設は、教育の体制がある施設です。
まとめ#
- 育成就労制度の施行は2027年(令和9年)4月1日。施行日は政令で決まっている
- 介護分野の運用方針は2026年(令和8年)1月23日に閣議決定済み。本人の意向による転籍は2年たつまでできない
- 2年の制限を使う事業所は、処遇改善加算の取得などと、1人ごとのキャリア支援プランが必要
- 介護事業所が見るのは転籍・監理支援機関・日本語の3点。見る順番は転籍が先
- 施行を待つ理由のある手順はもう無い。在留期限の一覧化・移行スケジュール・学習時間の勤務内確保から始める
次の一歩は1つだけでよい。在籍している外国人職員の在留期限を、今日中に1枚の表にすること。制度の議論はその表を見ながらでないと、自分の事業所の話にならない。
出典#
- 出入国在留管理庁「育成就労制度の制度概要・関係法令」(施行日 令和9年4月1日 (一部の規定を除く) の記載) https://www.moj.go.jp/isa/03_00163.html
- 出入国在留管理庁「育成就労制度Q&A」(令和8年1月23日閣議決定の分野別運用方針の記載) https://www.moj.go.jp/isa/applications/faq/ikusei_qa_00002.html
- 法務大臣・厚生労働大臣「介護分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針及び育成就労に係る制度の運用に関する方針」(令和8年1月23日閣議決定) https://www.moj.go.jp/isa/content/001454688.pdf
- 「出入国管理及び難民認定法及び外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律の一部を改正する法律」(令和6年法律第60号、令和6年6月21日公布)
- 厚生労働省「外国人介護人材の受入れについて」(社会・援護局)