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介護記録の書き方【新人向け】「事実→対応→結果」テンプレと場面別例文25

介護記録の前で手が止まるのは、日本語が苦手だからではありません。何を書けばよいか決まっていないまま書き始めているからです。

書く順番を固定してしまえば、記録は「作文」から「穴埋め」に変わります。この記事では、新人がその日から使える「事実→対応→結果」テンプレと、場面別の例文25本を全文掲載します。カッコの中を差し替えるだけで、そのまま記録に書けます。

なぜ記録に時間がかかるのか

新人が記録で残業する原因は、ほぼこの3つに集約されます。

原因何が起きているか対処
① 言い回しを探している「うまい表現」を考えて画面を見つめる型を固定して探すのをやめる
② 何を書くか決まっていない12時間分の出来事から選べない書く対象を先に絞る基準を持つ
③ 主観と事実が混ざる書いたあと不安になり書き直す事実だけを書くルールにする

記録に文章力はいりません。 必要なのは、決まった順番に情報を並べる作業です。

大原則:「事実→対応→結果」の3ステップ

すべての記録は、この順番で書きます。

ステップ書く内容具体例
① 事実見たこと・聞いたこと・測った数字「10:20 居室にて床に座り込んでいるところを発見」
② 対応自分が何をしたか「バイタル測定、看護師◯◯へ報告」
③ 結果どうなったか・次にどうするか「外傷なし。本日夕方まで15分ごとに訪室」

この3つが揃っていない記録は、あとから読んだ人が使えません。逆に言えば、3つ揃っていれば、文章がぎこちなくても記録としては合格です。

なぜこの順番なのか

介護記録は、日記ではなく業務の証拠です。事故やクレームが起きたとき、あなたを守るのは「その時点で何を観察し、何をしたか」の記述だけです。

「転倒されて心配だった」は感情であり、証拠になりません。「10:20発見、10:22バイタル測定、10:25看護師報告」は証拠になります。

事実と主観の見分け方

新人が最も迷うのがここです。判定は単純で、「他の職員が同じ場面を見て、同じように書けるか」で分けられます。

主観(書かない)事実(書く)
元気がなかった発語なし。呼名に開眼あるが返答なし
つらそうだった眉間にしわを寄せ、右膝を手で押さえる動作あり
食欲がない主食3割、副菜2割摂取。「いらない」と発語あり
よく眠れていた巡視時(0時、2時、4時)いずれも閉眼、呼吸規則的
不穏だった21時から30分間、廊下を往復。「家に帰る」と繰り返す発語あり
認知症が進行した昨日まで自室に戻れていたが、本日3回、他室に入室

右列は誰が書いても同じになります。左列は書き手によって変わります。変わるものは書かない、と覚えてください。

場面別の記録例文25本

カッコ内を差し替えて、そのまま使えます。時刻は必ず入れてください。

食事(例文1〜4)

1. 12:00 昼食。主食10割、副菜8割摂取。むせ込みなし。自力摂取。

2. 12:05 昼食。主食3割で「もういらない」と発語あり。声かけにて追加5割摂取。
   水分200mL摂取。食思低下の理由を確認したが返答なし。看護師◯◯へ報告。

3. 18:10 夕食中、汁物で2回むせ込みあり。スプーンを小さいものに変更し、
   一口量を減らして介助。以降むせ込みなし。次回よりとろみ剤の要否を看護師へ相談。

4. 08:00 朝食。義歯装着を拒否され、未装着のまま刻み食を提供。
   摂取量は主食8割。装着拒否は本日2回目。歯科受診の要否を相談員へ報告。

排泄(例文5〜8)

5. 09:30 トイレ誘導。自立にて排尿あり。移乗時ふらつきなし。

6. 14:00 パッド交換。尿量中等量。皮膚の発赤なし。臀部に乾燥あり、保湿剤塗布。

7. 22:15 「トイレに行きたい」とコール。誘導するも排尿なし。
   本日20時以降、同様の訴え3回目。看護師◯◯へ報告、明日尿検査の予定。

8. 06:00 便失禁あり。全身清拭と更衣を実施。前回排便は3日前の記録あり。
   下剤の要否について看護師◯◯へ報告済み。

転倒・ヒヤリハット(例文9〜12)

事故に直結する場面です。発見時刻・体位・外傷の有無・報告先・その後の観察の5点を必ず入れます。

9. 10:20 居室にて、ベッド脇の床に座り込んでいるところを発見。
   本人「立とうとしたら座り込んだ」と発語あり。頭部打撲の訴えなし。
   10:22 バイタル測定(BP 128/72、P 76、KT 36.4)。四肢の外傷、腫脹なし。
   10:25 看護師◯◯へ報告。本日18時まで1時間ごとに訪室し、状態観察を継続。

10. 15:40 車椅子からベッドへの移乗介助中、足がフットレストに引っかかり
   バランスを崩す。職員が支え、転倒には至らず。外傷なし。
   移乗前のフットレスト確認を、次回より声出し確認とする旨、フロアへ周知。

11. 03:10 コール音で訪室。床に側臥位で臥床しているところを発見。
   ベッド柵は下がった状態。「トイレに行こうとした」と発語あり。
   右肘に3cm程度の擦過傷あり。03:13 オンコール看護師◯◯へ電話報告。
   指示により患部を洗浄、保護。朝まで30分ごとに訪室。

12. 19:05 廊下で他利用者と接触しそうになる場面あり。双方に接触なし。
   夕食後の時間帯に廊下の通行が集中しているため、
   食堂からの誘導順を分ける案を、翌日のミーティングで提案予定。

入浴・清潔(例文13〜16)

13. 10:30 一般浴。自立にて洗身、洗髪。浴槽出入りは見守り。ふらつきなし。
   入浴後バイタル異常なし。水分150mL摂取。

14. 14:00 入浴を「今日はやめておく」と拒否。理由を確認したところ
   「寒いから」と発語あり。脱衣室を暖めて再度声かけし、15分後に入浴。

15. 11:00 機械浴。背部に5cm大の発赤を確認。押しても白くならない。
   看護師◯◯へ報告し、患部の写真記録を実施。体位変換の間隔を2時間へ変更。

16. 16:00 清拭にて対応。左足首に浮腫あり(左右差:左が指1本分太い)。
   看護師◯◯へ報告済み。明日の朝も同部位を確認する。

服薬(例文17〜19)

17. 08:30 朝食後薬、看護師立ち会いのもと内服確認。飲み残しなし。

18. 12:40 昼食後薬をお渡しするが、口腔内に残薬を確認。
   水分を追加し嚥下を確認。看護師◯◯へ報告。

19. 18:35 夕食後薬の袋が居室のごみ箱内から見つかる(未開封)。
   本人に確認するも「飲んだ」と発語あり。看護師◯◯へ報告。
   翌日より内服後の口腔内確認を実施する。

認知症の周辺症状(例文20〜22)

行動を書き、人格を評価しないのが鉄則です。

20. 21:00より約30分間、廊下を往復される。「家に帰る」と繰り返し発語あり。
   出身地の話題で会話したところ、21:35に自室へ戻り臥床。
   夕食後から入眠前の時間帯に同様の行動が今週3回目。

21. 14:20 他利用者の居室に入室。声かけにて自室へ誘導。
   本人の居室ドアに、本人が育てていた花の写真を掲示することを家族へ相談予定。

22. 10:00 レクリエーション中に「財布がない」と訴えあり。
   職員と一緒に居室を確認し、引き出しの中から発見。本人の表情が和らぐ。
   紛失の訴えは今週2回目。いずれも居室内で発見。

家族対応(例文23〜25)

「言った・言わない」を防ぐため、誰に・何を伝え・相手が何と答えたかを書きます。

23. 15:00 長女様面会。ここ1週間の食事摂取量が7割前後で推移していることを伝達。
   長女様より「好物の煮物なら食べるかもしれない」との情報あり。
   厨房へ共有し、次回の献立で対応を検討する旨をお伝えした。

24. 11:20 長男様より電話。入院費用の見込みについて質問あり。
   金額は相談員から回答する旨をお伝えし、相談員◯◯へ取り次いだ。
   折り返しの時間は本日16時までと長男様へお伝え済み。

25. 16:30 次女様来訪。居室の私物が減っているとのご指摘あり。
   一緒に居室内を確認し、洗濯中の衣類2点であることを説明。ご納得いただいた。
   洗濯中の衣類が分かるよう、居室に一覧を掲示する旨をお伝えした。

書いてはいけないNG表現と書き換え表

新人の記録で指摘されやすい表現を、そのまま書き換えられる形にまとめました。

NG表現なぜダメか書き換え例
様子観察何を、いつまで、どうなったら報告するかが不明「本日18時まで1時間ごとに訪室し、頭痛の訴えの有無を確認」
特変なし何を確認して「変わりない」のか不明「バイタル異常なし。食事摂取量、排泄回数とも前日と同等」
傾聴した何を話され、どう対応したか残らない「『息子が来ない』との訴えを約10分間傾聴。面会予定を一緒に確認」
拒否あり何をどう拒否したか不明「入浴の声かけに『寒いから今日はやめる』と発語あり」
不穏評価語。人格の評価に読める「廊下を30分間往復。『家に帰る』と繰り返す発語あり」
危険な状態医学的判断。介護職の記録に書けない「呼吸数8回/分。無呼吸を確認、約10秒後に再開。看護師へ報告」
認知症のため〜原因の断定は医師の領域事実のみ記載し、原因の推定は書かない
汚い・臭い尊厳を損なう表現「衣類に便汚染あり。全身清拭と更衣を実施」
徘徊目的のない歩行という決めつけ「廊下を往復される」「他室へ入室される」
暴力的評価語。行動を書く「介助中に職員の腕を払う動作あり」

「様子観察」と「特変なし」の2つを消すだけで、記録の質は目に見えて変わります。

記録時間を半分にする3つの手順

手順1:メモは「時刻+単語」だけにする

その場で文章を作ろうとしないでください。ポケットのメモには、こう書きます。

10:20 床 座り込み / 外傷無 / Ns報告
12:00 昼 主10 副8 むせ無
14:00 パッド 尿中 発赤無 保湿

記録の時間に、このメモを3ステップの型に流し込むだけにします。現場で文章を作る時間をゼロにするのが目的です。

手順2:書く対象を先に絞る

12時間分すべてを書こうとすると終わりません。書くのは次の3つだけです。

1. 変化があったこと(前日と違うこと)

2. 報告したこと(看護師・家族・上司に伝えたこと)

3. ケアプランに関係すること(目標に対する状況)

これ以外は、施設のルールで必須とされていない限り書きません。「全部書く」をやめた時点で、記録時間は目に見えて減ります。

手順3:語尾を3種類に固定する

言い回しを探す時間をなくすため、語尾を決め打ちにします。

  • 観察したこと → 「〜あり」「〜なし」
  • 自分がしたこと → 「〜実施」「〜介助」「〜報告」
  • 次にすること → 「〜を継続」「〜を確認する」

この3つで、介護記録のほぼ全文が書けます。

個人情報とAIの使い分け

記録の下書きにAIを使う職員が増えていますが、利用者の氏名・居室番号・生年月日・病名を入力してはいけません。多くの施設で情報管理規程に触れます。

使うなら、この形にしてください。

以下のメモを、介護記録の文体に整えてください。
条件:
・「事実 → 対応 → 結果」の順に並べる
・主観・評価語を使わず、観察した事実のみ書く
・語尾は「あり/なし/実施/報告/継続」に統一する
・120字以内

メモ: 10:20 床 座り込み / 外傷無 / バイタル正常 / Ns報告 / 1時間ごと訪室

固有名詞をすべて外し、記号とメモだけを渡します。出てきた文章に、あとから施設のシステム上で氏名や居室番号を入れる流れなら、情報を外に出さずに済みます。

AIを使う前に、必ず所属施設の情報管理規程と上長の許可を確認してください。

まとめ:今日の勤務から変える3つ

1. すべての記録を「事実→対応→結果」の順に書く

2. 「様子観察」「特変なし」を書かない。何を、いつまで、どうなったら報告するかまで書く

3. 現場では時刻+単語のメモだけ取り、文章は記録の時間にまとめて作る

記録は、あなたの仕事を証明する唯一の資料です。うまい文章を書く必要はありません。あとから読んだ人が同じ場面を再現できるか、それだけを基準にしてください。

なお、記載すべき項目や保存年限は施設種別や自治体の指導によって異なります。実際の運用は、所属施設の記録要領と上長の指示に必ず従ってください。

この記事を書いた人:ミミ介護支援専門員(ケアマネジャー)

介護施設で生活相談員・ケアマネジャーとして勤務。現場の職員研修と介護現場でのAI活用の推進に携わっています。記事の数字・制度は一次資料の原文を開いて確認してから書いています。誤りに気づいた方はお問い合わせから教えてください。 運営者情報

この記事の「型」を、現場でそのまま使う。

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