「この人、私のことだけ嫌いなのかな」って思った日の帰り道、長いよね。こーぎーも、しっぽを振ったのに素通りされた日は、耳がぺたんとなるよ。今回は飼い主が、その「嫌われた気がする」を少しほどく話を書くね。
「利用者や家族から感謝される」。今の仕事や職場にあてはまるものとして、介護の仕事をする人の60.7%がこれを選んでいます。介護労働安定センターの令和7年度「介護労働実態調査」の数字です。
それなのに、たった一人の利用者さんに顔をそむけられただけで、自分の仕事がまるごとダメだったような気持ちになる。そんな日、ありませんか?
数字と考え方の型は、2026年11月1日に開いた公的な資料4つから、原文を写した範囲だけを使っています。資料の名前は最後の出典にまとめました。
この記事の内容
「嫌われた」は、頭の中で一瞬で出来上がる#
厚生労働省が公開している、認知行動療法の患者さん向けの資料があります。そこに「認知のかたより」という言葉が出てきます。物の見方がかたよる、考え方のくせのことです。
厚生労働省の資料によれば、このくせは多くの人が共通して持っているものです。うつ状態のときには、特に目立つことが多い、とも書かれています。
くせの1つめは「感情的きめつけ」。証拠もないのに、悪い結論を引き出してしまうこと。資料に載っている例が、そのまま今回の話です。取引先から一日連絡がないだけで「嫌われた」と思いこむ。
2つめは「過度の一般化」。わずかな出来事から、広い範囲の結論を出してしまうことです。資料の例は、1つうまくいかないだけで、自分は仕事が何もできないと考えてしまう、というものです。
一人の利用者さんの反応から「私は介護に向いていない」まで行ってしまう。あの流れには、名前がついていたわけです。ここ、知っているだけで少し楽になります。
もう1つ、「選択的注目」というくせも載っています。良いこともたくさん起きているのに、ささいな悪いことに目が向く。朝から10人に「ありがとう」と言われても、帰り道に思い出すのは、そむけられた1回のほうです。
落ち込むのは、気持ちが弱いからじゃない#
同じ調査で、仕事の悩みに「精神的にきつい」を選んだ人は19.6%でした。答えた20,675人のうちの割合です。
ただ、「利用者さんに嫌われていると感じる人」の割合は、調べた資料には載っていませんでした。ここは調べきれなかったので、数字は書きません。
それでも、この種の落ち込みには理由があると私は考えています。介護の仕事は、相手の表情を読むことそのものが仕事だからです。顔色の小さな変化に気づく力は、そのまま「嫌われたかも」に気づきすぎる力にもなります。
だから、気にしてしまう自分を責めるより、気づいた中身を仕分けるほうに力を使いたい。私はそう考えています。
先に見るのは「いつ」「どの場面で」「自分にだけか」#
利用者さんの「この職員さんは嫌」という反応の相談を受ける側なら、気持ちを聞く前に、まず反応の出方を聞く、という順番が考えられます。
理由は単純で、出方によって次の一手がまるで変わるからです。午後だけなのか。入浴のときだけなのか。自分にだけなのか。ここが分かると、「嫌われた」が「この場面が合っていない」に変わることがあります。
下の表は、資料に載っている分類ではありません。相談を受ける側の目線で作った、順番の一案です。実際に拒否されている場面もあります。ここは決めつけを疑う話ではなく、仕分けの話です。
| 反応の出方 | 考えてみること | 次の一手 |
|---|---|---|
| 時間帯で違う | 疲れや眠気の出る時間かも | 申し送りで、時間帯ごとの様子を並べる |
| 介助の場面だけ | 介助そのものが嫌、恥ずかしい | 声かけの順番や、手を出す前の説明を変えてみる |
| 自分にだけ | 声の大きさ、最初の印象、相性 | 担当や順番を一時的に替えてもらう相談 |
| 誰にでも同じ | その人の今の状態 | 一人で抱えず、チームの話にする |
つらく感じやすいのは、3行目の「自分にだけ」かもしれません。でも、私はこれを失敗だとは思っていません。人と人なので、相性はあります。相性が合わないのは、ケアの腕の話とは別の話です。
体のつらさや病気が関わっていそうなときは、看護師や主治医につなぐ話になります。そこを介護職が一人で見極める必要はありません。
頭の中の「嫌われてる」を、紙の上で3行に分ける#
厚生労働省の資料には、気持ちが動いたときの考えを書き出す表があります。「自動思考記録表」といって、状況・気分・浮かんだ考え・根拠・反証などを7つの欄に分けて書くものです。
これは治療に使う表なので、そのまま全部やる必要はありません。私が借りたいのは、根拠と反証の2つの欄の考え方です。
資料は、根拠の欄には客観的な事実だけを書く、としています。「きっと〜だろう」は想像にすぎない、とも。記入用の表には、相手の心を読むような勝手な思い込みは避ける、という注意書きまであります。
休憩室で、メモ帳の端に3行だけ書いてみてください。
- あったこと: 10時の入浴の声かけで、首を横に振られた。2回目も同じ。
- 反対の事実: 昼ごはんの配膳のときは「ありがとう」と言われた。昨日の散歩は一緒に行けた。
- 友だちがこれを書いてきたら: 「入浴が嫌だっただけかもよ。あなたが嫌いとは書いてないよ」と返す。
3行目は、資料にある「家族や友人が同じような考えをしていたら、どのようにアドバイスするだろう?」という問いを使っています。自分のことになると厳しいのに、友だちには優しくできる。不思議ですよね。
書いても気分が晴れない日もあります。資料はそれでいい、としています。気分は良くならなくても、これからの対応や行動の案を思いつければ成功だ、と。
書いたあとに見ておくこと#
チェックはこの端末に保存されます。印刷して現場に貼る場合はそのまま印刷してください。
リストの4つめも、資料にある問いからそのまま借りています。
「嫌われています」より「場面」で相談すると、話が通る#
相性の話を職場でするのは、勇気がいりますよね。「わがままだと思われそう」と飲みこんでしまう人もいるはずです。
ここで効くのが、さっきの仕分けです。気持ちで伝えると、聞いた側も励ますくらいしかできません。場面と回数で伝えると、相手は段取りの話として受け取れます。
◯◯さん、私のこと嫌いみたいで。どうしたらいいですか。
◯◯さん、入浴の声かけで、私だと首を横に振られるのが3回続いています。一度、別の人の声かけで試してもらえますか。様子を比べたいです。
アフターには「嫌い」という言葉が1回も出てきません。それでも、言いたいことは全部入っています。
そのまま使える言い方を、場面別にもう2本置いておきます。
- 午後になると、◯◯さんの手を払う動きが増えている気がします。午前と午後で、他の人のときも同じか教えてもらえますか。
- 私が担当の日は、◯◯さんの食事の進みがゆっくりな気がします。しばらく順番を入れ替えて、様子を見てもいいですか。
担当を替えてもらうのは、逃げることとは違います。利用者さんにとって楽な形を、チームで探すための材料集めです。
小さな「通じた」を、1つだけ持って帰る#
私は、利用者さんと冗談を交えて話せる日常に、ホッとします。
嫌われた気がする日ほど、「通じた」場面は記憶から抜け落ちます。選択的注目のくせが働くからです。
だから、帰る前に1つだけ拾っておく。笑ってくれた、名前を呼ばれた、うなずいてくれた。小さくていいです。誰に見せるものでもありません。
拾い集めてみると、気づくかもしれません。嫌われたと感じていた自分にも、ちゃんと笑ってくれる利用者さんが何人もいる、ということに。
気持ちが沈んだまま戻らないときは#
ここまでの話は、落ち込みを少しほどくための考え方の整理です。治療ではありません。
眠れない、食べられない、仕事に行くのがつらい日が続く。そうなっているなら、考え方の工夫で乗り切ろうとせず、誰かに話してください。
厚生労働省の「こころの耳」には、働く人のための相談窓口があります。電話・SNS・メールの3つで、匿名・無料で相談できます。精神科や心療内科を探せる「全国医療機関検索」もあります。電話番号や受付時間は変わることがあるので、こころの耳のページで確かめてから使ってください。
もう1つの境目も書いておきます。「嫌われた気がする」と、はっきりした暴言が続くことは、別の話です。同じ調査では、利用者やその家族から受けたハラスメント等として「暴言」を選んだ人が22.6%いました。暴言が続くなら、それは気持ちの整理で片づける話から外れます。職場で対応してもらう話です。関連記事「利用者や家族からのカスハラ、2026年10月から職場に対策の義務。介護士が自分の職場で確かめる3つと相談先」に、職場への伝え方と相談先を書きました。
よくある質問#
利用者さんに嫌われているのは、私の介護が下手だからですか?
一人の反応だけでは、そこまでは分かりません。厚生労働省の資料は、わずかな出来事から広い結論を出してしまうことを「過度の一般化」と呼んでいます。まず、いつ・どの場面で・自分にだけか、を分けてみてください。
担当を替えてほしいと言うのは、わがままでしょうか?
私は、わがままではないと考えています。相性は人と人の間にあるもので、替えてみることで利用者さんが楽になる場合もあるからです。場面と回数で相談すると、話が通りやすくなります。
書き出してみても、気持ちが晴れません。
晴れなくても大丈夫です。厚生労働省の資料も、気分が良くならなくても、これからの対応や行動の案を思いつければ成功だ、としています。3行のうち、反対の事実が1つ書ければ十分です。
同僚には笑顔なのに、私にだけ冷たいのがつらいです。
つらいですよね。表の「自分にだけ」にあたるので、相性や最初の印象が関わっているかもしれません。一人で答えを出さず、場面と回数をメモして、リーダーに順番の入れ替えを相談してみてください。
暴言を言われても、気にしすぎなのでしょうか?
はっきりした暴言が続くなら、気の持ちようの話ではありません。職場で対応してもらう話です。相談先は関連記事のカスハラの記事にまとめています。
出典#
- 公益財団法人介護労働安定センター 令和7年度「介護労働実態調査」労働者調査「介護労働者の就業実態と就業意識調査 結果報告書」(調査期間 令和7年10月1日〜10月31日。問22 働く上での悩みや問題、問28 今の仕事や職場の評価。2026年11月1日閲覧) https://www.kaigo-center.or.jp/content/files/report/R7_jittai_chousa_roudousya.pdf
- 厚生労働省「うつ病の認知療法・認知行動療法(患者さんのための資料)」(厚生労働科学研究費補助金こころの健康科学研究事業「精神療法の実施方法と有効性に関する研究」。2026年11月1日閲覧) https://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/kokoro/dl/04.pdf
- 厚生労働省「自動思考記録表(コラム表)記入用」(2026年11月1日閲覧) https://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/kokoro/dl/03.pdf
- 厚生労働省 働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト「こころの耳」相談窓口案内 (2026年11月1日閲覧) https://kokoro.mhlw.go.jp/agency/
- 次に「嫌われたかも」と思ったら、その場で「何時の、どの場面か」だけメモしておいてください。
- こーぎーにも、なでるのが上手じゃない人はいるよ。でもその人、おやつを出すのはいちばん早いんだ。みんな、得意なところがちがうだけだよ。
- この記事のメモと相談の言い方は、説明のために作った例で、実在の人や職場の話ではありません。